紹介患者さんの治療。
主訴は、
根管治療をして被せる治療をした右下の奥歯が噛むと痛い…
である。
治療歴は以下である。
元々、#32の抜歯で某・病院歯科に行った。
その際に、#31も再根管治療をした方がいいと言われたので再根管治療になった。
が、
ラバーダムは使用していない。
その後、最終補綴を装着した。
(10万程度かかった)
紹介元からは、根尖部に病変があると指摘された。
ここには、元々は根尖病変はなかったのだが…
さて。
ここから何が言えるだろうか?
といえば、もうお分かりですね?
保険診療で歯の治療をするとマズイことになります。
この方の歯がどういう状況か?は検査しないとわからないが、芳しくはないだろう。
保険の根管治療の上にセラミッククラウン…
まさに
鬼畜の所業
だろう。
初診時歯内療法学的検査(2023.3.30)
#30 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴は再現てきている。
あとはどういう治療になるか?、だ。
PA, CBCTを撮影した。
初診時PA(2023.3.30)
やはり…鬼畜の仕業であった。
また、#31は樋状根のような歯だ。
詳細はCBCTでわかる。
また、再根管治療は…
ほとんどなされていない。
頭が痛いのはその前は問題がなかったと言う点だ。
治療を受けてこの状態になっているのであれば…
再根管形成にはほぼ意味がないと言うことがわかる。
しかし…
これが
某病院歯科の歯内療法科の治療であるという話を聞いて、私は改めて、この国の歯内療法の現状が惨憺たるものであるという現実を思い知った。そしてそれがいい方向へ舵を傾けることは一生ないだろう。
このことからも…
保険診療で歯内療法をすると、間違いなく歯は悪い方向に行く
ことをまだ見ぬ患者さんは、肝に銘じておくべきだろう。
挙句この担当歯科医師は、
治療した方がいいと誘い、
ラバーダムせずに再根管治療をして、
根尖病変を作ってしまっている。
かつて私自身が、某大学病院歯科でラバーダムなしの#30の根管治療を受けた後に、放射線の登院実習時でCTの検体に代表でなった際に、破折しているファイルが右下臼歯部の下顎骨に存在する!(涙)ことが発見された際に、そのことを根管治療を行った、担当歯科医師に正すと、
大丈夫、死なないから!
と言われたことを思い出してしまった。
治療した方と、治療を受けた方での捉え方がまるっきり違うのも歯科治療の特徴だ。
初診時 CBCT(2023.3.30)
O
やはり…
C-shaped root canalだ。
3根管をそれぞれ見てみよう。
M
根尖部大きな病変がある。
これが下歯槽神経と交通している。
まもなく…
マヒしたような感じがする
という主訴が出てくるだろう。
それは避けなければならない。
根管形成も不備が多い。
Previously treatedだが、事実上は、Previously initiated therapyだ。
これでは病気は治らない、どころか大きくなるだろう。
また、
再根管治療をしているという患者さんの記憶が確かなのであれば、すでに根尖部は大きく拡大されていることになる
であれば…
再根管治療はあまり効果がないだろう。
しかしそれは…
実際に治療をしないとわからない。
D
Dの根尖部にも大きな病変がある。
そしてここも根管治療を全くしていない。
これでは…
何の意味もない。
根管治療は体のいい手遊びだったのだろうか?
もしくは、ここも再根管治療後でこの状態なのであれば…
再根管形成に意味はほぼない
という話になる。
が、何度も言うが、
それは実際に治療しないとわからない。
B
頬側根管は根管形成をすること自体を放棄したようだ。
これが保険歯科診療の実際だ。
しかし、これでは…
歯内療法とは呼べない。
患者さんがかわいそうである。
この根管も、
再根管治療後でこの状態なのであれば…再根管形成に意味はない
という話になる。
が、実際に形成しないとわからない。
歯内療法学的診断(2023.3.30)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT
ということで、推奨される治療は再根管治療である。
再・根管形成に意味があるのか?検証してみた。
それが意味があるのかないのか?どうやって判断すべきか?を今日も説明しよう。
ということで、同日、再根管治療へ移行した。
☆この後、臨床画像が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#31 Re-RCT(2023.3.30)
健全歯質があまりなく、矯正用のバンドで隔壁を作ると言う難しい治療になってしまった。
また、作業内容は以下になった。
根充後にPAを撮影した。
一言で言って…
不本意だ。
矯正用バンドの存在が、正しい作業長を提示しなかったのだろうか?
それとも、以前のBlogで指摘したような状況だったのだろうか?
いずれにしてもこれをやり直すことはない。
そして、
治療したものの、歯牙もあまりなく、もしIntentional Replantationになったら…歯牙の脱臼も難しそうである、と言う事実だけが残ってしまった…
願わくば…
Intentional Replantationにならないことを祈る
のだが…
実はこの後、やはりIntentional Replantationになる。
この続きはまた来週にお送りしよう。