紹介患者さんの治療。
主訴は、
前歯(#8,9)の歯茎が腫れて痛い… 某専門?歯科医院に根管治療に81回も通院したのに…
である。
81回!
なぜそんなに治療回数が必要なのだろうか?
私は聞いたこともない。
が、最近私のセミナーでも受講者の先生から同じような話を聞いた。
(そのケースもそれくらいかそれ以上だった記憶がある)
この傾向は全国的?なのだろうか?
しかし…哀れだ。
本当のことを知らないというのはここまで歯科医療の結果に決定的な差を生むのだろうか?と言わずにはいられない。
しかもこの方は、かなり遠方から来られている患者さんである。
つまり…
治療は1回で終了する必要がある。
それが
“米国”歯内療法専門医の仕事
である。
私は、
USCでそう習った。
そこに言い訳などはいらないのだ。
プロ=専門家
ならきちんと結果を出せよ!
という話である。
さて…
どういう治療になるだろうか?
歯内療法学的検査(2023.8.25)
#5 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#6 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#7 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#6も7も打診痛がある。
PA, CBCTを撮影した。
PA(2023.8.25)
#6も#7も前医は戦意喪失していたのだろう。
そして高価なクラウン(PFM)が装着されている。
日本の歯科医療の闇がここでも見られた。
CTは以下になる。
CBCT(2023.8.25)
#6
頬側面から見えると歯根に並行なポストコアである。
これは除去しにくい可能性が考えられる。
が、実際にしないとわからない。
#7
#6には根尖病変はないが、#7には根尖病変が見える。
が、メタルポストコアの存在は将来のVRFへの布石だ。
このままでは歯牙がいずれなくなってしまう。
それでもよければこのままでもいいだろうが、それでもいいです、という患者さんを私は知らない。
が、#6に比べてテーパーがつきまくっているので容易に除去できるだろう。
診断は以下になる。
歯内療法学的診断(2023.8.25)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT
ということで、同日に治療へ移行した。
☆この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#6,7 Re-RCT(2023.8.25)
術前の予測通り、#6は除去がしにくかった。
上記動画のように粘ってトライしていくしかない。
それに対して#7は…
実に容易な除去であった。
長さをそれぞれ測定し、作業は以下になった。
#6は#60.02まで拡大形成している。
C-solutionを使用すると根管が汚れる…という人がいる。
この動画で私は汚染されたまま根充しているだろうか?
どう処置をしているだろうか?
その答え?が下の動画にある。
次が#7だ。
まずGutta Perchaを除去したが、ここは#6に比べると呆れるほど容易だ。
その後、作業長を測定し#60.02のHyFlex EDMを挿入するが、動画のように形成ができなかった。
ということで、ここは洗浄のみでコントロールすることになる。
それで問題が治癒するか?はわからない。
ということでこの根管はSelaer根充という名のMTA根充になる。
築造して、術後にPAを撮影した。
問題はないと思われる。
さて。
81回もかかる理由があるのか?といえば、ない。
もし問題があれば、Apicoectomyするだけなのである。
Apicoectomyができないからそれを避けようとする。
しかし、それを避けていけば、歯内療法とは呼べない。
私がなぜ、
根管治療専門室
ではなく、
歯内療法専門室
という名前をうちにクリニックに冠しているのか?わかっていただけただろうか?
ということで、次回は、本丸の#8,9の治療である。
また続きは次回。