紹介患者さんの治療。

主訴は、

左下の歯茎が腫れて痛い…

である。

歯内療法学的検査(2024.1.9)

#18 Cold+2/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#19 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(++), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

Sinus tract部位を押さえると強い痛みがあった。

ここが主訴である。

以下が検査動画だ。


☆この後、検査動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


PA, CBCTを撮影した。

PA(2024.1.9)

CTも撮影した。

CBCT(2024.1.9)

MB

ML

MLの咬合面から虫歯を追いかけて?歯髄壊死している。

何度も言うが、

追いかけずにそのまま残して充填すればいいのに、といつも思う。

その心は?

それは、

Basic Course 

でお待ちしています。

D

Dにも若干根尖病変がある。

この歯にはRadixもあった。

Radix

Radixには根尖病変はなさそうだ。

ほっと胸を撫で下ろした瞬間だ。

ここに病変があると難易度がグッと上がる。

歯内療法学的診断(2024.1.9)

Pulp Dx: Pulp Necrosis

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: RCT

ということで、治療は根管治療である。

成功率は90%と極めて高い。

が、90%というのは全員がうまく行くわけではない。

なぜなら,

Sinus tractがあるからだ。


☆この後、臨床画像・動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


Sinus tractにGutta Percha Pointを入れると近心根に向かってGutta Percha Pointは入っていった。

ここが原因だろう。

このできものは、根尖孔外細菌感染の可能性を示唆する。

うまく行かないかもしれない。

その時は、Apicoectomyするだけだが、それは難しいだろうか?

といえば、頬側に皮質骨はない。

と言うことはアクセスがしやすい。

外科治療は困難性がないと思われる。

もちろん治癒が進んでこの歯を再度CT撮影すれば今とは違うが…

しかしそこまで難易度はないだろう。

ということで、推奨される治療は根管治療一択である。

同日、治療へ移行した。


☆この後、臨床動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#19 RCT(2024.1.9)

ブラケットがある歯をラバーダムしている。

これは…

防湿が非常に難しい。

こういう場合は、

Cavit: Dycal=4:1で混ぜて防湿するようにUSC時代、Dr. Munceに教わった。

Dr. Munceは、USCのエンドの非常勤講師で年に数回教えに来ていた。

非常にユニークな治療をしている先生で、

毎回、レジデントにMunce Burを配って行ったのを思い出す。

そうこのMunceとは、

Munce bur

のMunceだ。

私はそれからこのバーを多用している。

某海外器具輸入サイトでは、怪しい名前で販売されているが、Dr.Munceは知っているのだろうか?

今年、LAの学会でMunceに会ったらチクっとくかw

というのは冗談として、Munce burは非常に使いやすいバーである。

しかし…

この日、うちの歯科医院にDycalがないというアクシデントが。。。

痛い。。。

早速、楽天で購入した。

もはやDycalは楽天で購入できる材料だ。

さておき、代わりにFit sealを置いたが、これは除去する際に問題を引き起こすだろう。

それはのちに紹介しよう。

こうなる、という悲劇を。


さておき、根管治療へ移行した。

術前のCTからは、MBがストレートでMLが湾曲を呈しているような絵であったため、この治療時はメイン根管をMBにし、MLは合流部分までという前提で形成している。

が、MLがMBの本当に合流しているか?は実際にCheckしないとわからない。

ここが、

CBCTと実際の臨床の差

であると言える。

話を戻そう。

合流を再現するには、

①MBの長さを測定し、

②MBの根管形成を当該サイズまで行い、

③MBに当該サイズのGutta Percha Pointを挿入し、

④それがReference Pointまでしっくりくるか?確認し、

しっくりきていれば、

⑤MLにファイルを入れてグリグリやり傷をつけ、

⑥Gutta Perchaを取り出し、傷の位置を確認し、合流している位置と根管形成の長さを決定する

という作戦である。

それを実行してみた。

まずSXでMBのコロナルフレア形成をして上記の作業を行った。


①MBの長さの測定

MBの長さを測定すると、C+8で穿通し、その際の長さが21.0mmであった。

作業長は-0.5mm引いて、20.5mmとした。

また、Reference PointはMであった。

②MBの根管形成

根管形成を#40.04まで行っている。

③MBに当該サイズのGutta Percha Pointを挿入

MAFが#40.04のため、使用するGutta Perchaは#35.04を選択した。

④Reference Pointまでしっくりくるか?確認

これは画像を見ていただきたい。

私は問題ないと判断した。

⑤MLにファイルを入れてグリグリやり傷をつける

⑥Gutta Perchaを取り出し、傷の位置を確認し、合流している位置と根管形成の長さを決定

MB=20.5mmに対して、

ML=19.5mmであるということがわかる。

ということで、MLも#25.V→#40.04まで形成した。

この際、使用したいFileが作業長までいっていない。

そういう時にはどうすればいいのか?が以下の動画に示されている。

このように

使用したいFileが作業長まで行かない時は無理に突っ込むのではなく、洗浄を繰り返しながら作業長まで到達するようにじっくりと攻めなければならない

のである。

言い換えれば、

Ni-Ti Fileが作業長まで行かない時は無理に突っ込むのではなく、洗浄しつつ徐々に挿入して作業長まで到達するように形成した方がいい

ということがわかるだろう。

また、

洗浄液が何であれ問題はない

と私は考える。

濃度がどうだとか、

これを使わないといけない!とか、

興味がないし、

洗浄液の選択が根管治療の予後に何の影響もないだろう。

使用したい洗浄液が何の為なのか、どういう利点があるか?のみを考えて私は洗浄をしている。

そしてもう1つの洗浄のポイントは、

洗浄時に削りかすがあらかた根管から排除されれば私はそれでいいというレベルでしか洗浄を重視していない。

この後、MB, MLを根管充填した。

その後、D根の根管形成に移った。

ここは1根管であるのでそれほど問題はない。

長さを測定し、-0.5mm引いて#40.04まで根管形成し、根管充填した。

最後がRadixの形成である。

ここも1根管だが湾曲が強いので、工夫をしている。

どういう工夫か?といえば、以下である。

かなり湾曲が強い。

が、Radixの反対側の歯質を削除すれば、使用するFileに負担がかかりにくいということがわかる。

ということで、歯冠部の半分程度まで削除した。

ガイディングパスに近い概念だ。

C+ File #6で穿通し、RIL=20mmであった。

根尖病変もなく湾曲も強い根管であるので、-1mm長さを引いて形成した。

したがって作業長は19mmである。

C+ Fileのテーパーは5であるので1mm上部は#11である。

したがって、湾曲から考慮して、

#20.05→#25.V→#40.04

と形成した。

これは特別なことでなく、

HyFlex EDMの説明書に書いてあることだ。

作業長を測り、グライドパスを必要であればしたならば、上記のように形成することがわかるだろう。

(この説明書には HyFlex CM #20.04とあるが、これは今ではHyFlex EDM #20.05である)

ちなみに私はColtenの回し者でも、販売促進員でもないことを言明しておく。

ということで、上述の方法でRadixも根管形成し、根管充填した。

その後、支台築造し、PA, CBCTを撮影しようと思ったが…

ラバーダムが外れない。

理由は術前のレジン系の仮封剤の所為だ。

これがアンダーカットに入り込んでこのザマである。

結局、ブラケットごと歯牙から外れてしまった。

かかりつけ医には、矯正医に再度外れたブラケットをつけてもらうように依頼した。

術後のPA, CBCTは以下である。

患者さんは矯正中で口腔内が狭く、PAが撮影しずらい…

この患者さんはインジケーターの使用が無理だ。小児用でも無理であった…。。。

この後、CBCTも撮影した。

MB

ML

M根からはパフが見られなかったが、問題はなさそうだ。

D

D根はパフがあった。

Radix

ここも問題はないだろう。

ということで次回は半年後の2024.7である。

また状況をお伝えしたい。