週末日曜日は、まつうら歯科医院でマイクロサージェリーライブコースが行われた。
参加者は4名。
患者さんは私の知り合いの歯科医師の先生。
患歯は#14。
主訴は、
既に病院歯科を含む、3件の歯科医院でラバーダムをかけて再根管治療をしたものの、そこが芳しくない(咬合痛)
という。
歯内療法学的検査(2024.3.10)
#14 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#15 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14に咬合痛があるようだ。
ここが主訴だそうだ。
PA(2024.3.10)
MB根の根尖部に病変がある。
患者さん曰く、
最後の治療でBC sealerを使用して再根管治療した
とのことなので、パフがあるということはフラップを開ければApexの位置が容易にわかるだろう。
が、MBは短い歯根のような気がする。
反対側同名歯も精査した。
左右差はそれほどないと思われる。
CTで精査してみよう。
CBCT(2024.3.10)
#14 MB
#3 MB
MB根の左右差はそれほどないと思われる。
また、#14のMB根の口蓋側よりに病変がある。
MB2はMB1と合流していたであろうと思しき根管充填の様子が垣間見える。
MB3の存在があるのだろうか?
であれば、再根管治療?
しかし、既に再根管治療はなされている。
MB3を見つけて、形成してそれで病変が治癒するだろうか?
MB1とMB2はおそらく、超音波でつなげたのだろう。
これは…昔、USCでDr.Zweigに厳しく注意されたやつだ。
あれは大学院の時、上顎の大臼歯の再根管治療で、
MB1とMB2間のイスムスを超音波で削合していた時だ。
Dr. Zweig:『お前、何でMB1とMB2を削ってるんだ?』
私:いや…この2根管は合流しているんで、削合すればそこの細菌が取れるじゃないですか。
Dr.Zweig:『そこを削って細菌を取れたとして、それが歯内療法の予後にどれほど貢献するのか?俺は知らないし、そこを削合するということは歯根が脆弱になって破折しやすくなる。除菌を取るか?歯質の保存をとるか?の二択だが、歯が折れてしまえば除菌なんてその時点で無意味だろ。そういうことはやめろ。』
ごもっともで反論のしようがなかった。
私はそれ以来、この根管を大きく削るとか繋げるとか一切していない。
無意味で歯牙の脆弱性を惹起させるからだ。
以上を考慮すると…Apicoectomyの可能性が高いだろう。
また、Root resectionしても上顎洞が周囲にはないので、非常にEasyなCaseである
と言える。
MBを精査した。
CEJよりも10mm先にApexがある。
Apexを切断する時に、それを妨げるような解剖学的要素(上顎洞)もない。
頬側の歯槽骨はあるような、ないような。。。
が、
BC sealerのパフの存在が、MBのApexはここであるという客観的事実をわかりやすく提示してくれるだろう。
こういう点でもシーラーパフは臨床的に役立つ?のである。
というより、ケガの巧妙か?
さておき、Apexから3mmで切断すると、
頬舌的に5mm切断することになる。
ゼックリアバーの半分以下なので容易だ。
そして、逆根管形成時は#4の歯根を参考に形成するといいということもわかる。
が、この絵ではダメだ。
外科をする時には、上下を逆にして、実際外科治療する時の絵で治療しなければならない。
つまり、以下のような絵をユニット横に貼り付けなければならない。
#3 MB, #4が平行である
ことがわかる。
逆根管形成の時にはここに注意しなければならないだろう。
DB
DB根には病変がない。
パフしていてもだ。
パフはアメリカでは、根管の中が完全にパッキングできていることの証左とされる。
日本では、???だが。
P
口蓋根にも病変はない。
このことから、
MBのみが外科治療の適応症
と言える。
それはCBCTでしか判定できない。PAでは無理なのだ。
かつて色々な人が色々な、歯内療法の診断の話をしてきたが、
私の中では、
結局、
CBCTを撮影しているからわかるんじゃないか?と思わざるを得ない。PAで、PAを2枚撮影しただけでは、何も臨床的に得るものはない可能性は高いだろう。ポストの形状以外は。
メタルポストが外れる!と術前に予想できた理由=PAがCBCTよりも勝る点は?〜#21 Core build up with Fiber Post
私の同級生も某SNSに同じポストをしていた。
CBCT scan became such a standard of care in endodontics. It reveals great details and helps the practitioner to plan it better to give patients better outcomes.
PAでは、???だが、
CBCTでは、
ここまでわかる。
まさに、
CBCT scan became such a standard of care in endodontics.
このポストの通りだ。
becameという表現になっているところが憎い。
もはや、この業界の歯科医師で術前にCBCTを撮影しない人を私は知らない。
歯内療法学的診断(2024.3.10)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Apicoectomy
ということで、同日にApicoectomy(MB根のみ)が行われた。
Apicoectomyの前に、このケースに関連するApicoectomyの知識をベースに講義した。
そのスライドはもちろん差し上げた。
#14 Apicoectomy(2024.3.10)
ApexはBC sealerの存在で容易に発見できた。
そこから3mmで切断した。
すると、
MB1,MB2,MB3が発見
された。
これは…
難しくない。
理由は?
それらを簡単に繋げることができるからだ。
新しい逆根管形成チップで形成し、Lid techniqueで逆根管充填し、術後にPA, CBCTを撮影した。
この際、骨窩洞からの出血が多かったので、
今回初めて
3MのAstringent Retraction Paste
を使用した。
これはかつて、AAEの年次総会でDr. Marga Ree が私はApicoectomy時に、ラセレットを使用すると、それを残してしまう可能性があるのが嫌なので、Astringentを使用すると言っていて、いつか使用したいと思っていたが、それがようやく叶った形になった。
Osteotomyを広げた時に、骨窩洞から出血があり、逆根管形成後の窩洞内部をCheckしづらくなった。
そこで、このAstringentを使用すると…確かに止血効果があった。
が、設置するのが多少面倒だ。
あらかじめ出して、だんご状にしてから充填して使用するのがいいかもしれない。
とまあ、結構面倒くさい印象を与えるものだった。
これなら、Racelletを使用した方が簡便か…と思わなくもなかった。
が、これからの臨床結果に左右されるだろう。
逆根充後に、PA,CBCTを撮影した。
問題はないだろう。
縫合して終了した。
次回は半年後である。
またその模様をお伝えしたい。
さて、今日は治療中の動画が一切掲載されていない。
その理由は…
撮影し忘れ
である。
縫合時に気がついた。
今日のセミナーはスタッフは全員休みであったので、それに誰も気がついていなかったという。。。