紹介患者さんの経過観察。

当時(2018.8.22)の主訴は、

#15の再根管治療をしたが、ムズムズ感(違和感)についてのセカンドオピニオンと保存の可否の相談。ムズムズ感が1年前(2017.8)から続いていて取れないでいる。

であった。

患者さんは#14,15の治療を希望されていた。

#14はラバーダムなしでの根管治療だったからだ。

その後、当時のかかりつけ医に転院した。

歯内療法学的検査(2018.8.22)

複雑な事情?があるのだろうか。

が、不適切な治療内容(ラバーダムなしでの根管治療)がこれに起因していることは否めないだろう。

打診痛と咬合痛。

そして、咬合時のムズムズ感。

それに付随する痛みは別だと言う。

このことからあなたは何を感じるだろうか?

何を使用してどう言う結果を導くか?よりも、治療の基本を厳守することの方が重要だ

と言うことがこのことからもわかるだろう。

PAを当時も撮影していたが、データを喪失しているため当時の契約書のPAをこの記事では採用している。

初診時PA(2018.8.22)

根尖部に大きな病変がある。

当時はCTのDICOMデータもいただいていた。

#15 初診時 CBCT(2018.8.22)

MB

DB

P

歯内療法学的診断(2018.8.22)

Pulp Dx: Previously initiated therapy

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: RCT

同日治療へ移行した。

MB2のみが穿通している。

この後、Gutta Percha Pointを試適して根管充填した。

ここから経過を追うわけだが、脳出血で倒れて追えなくなってしまっていた。

が、また見せていただけた。

#15 RCT 3yr recall(2021.1.13)

初診時のムズムズ感は消失したという。

PAも撮影した。

#15 RCT 4yr recall(2022.1.26)

何も症状はないと言う。

#15 RCT 5yr recall(2023.2.1)

風邪を引いた時に初診時のムズムズ感はあるが、日常生活では何もない、とのことだった。

病変が巨大化?したような印象を与える絵である。

が、治療が必要ならIntentional Replantationである。

そこまでしてしないといけない治療なのだろうか?

と言う疑問が患者さんにもあるのである。

でれば、経過を見ていくしかない。

次回は、CTも撮影しましょうと言う話になった。

が、2023.6中旬にうちの歯科医院にCBCTが導入されたので、今回のリコールではCT撮影も行った。

#15 RCT 6yr recall(2024.2.6)

6年目のリコール。

患者さんには症状がなかった。

PA, CBCTを撮影した。

MB1

MB2

DB

P

ということで、術前の病変は大幅に縮小した。

この記事で私が言いたいことは何だろうか?

どうだすごいだろ!ではない。

画像診断だ。

特に経過観察中は、術前の病変が大きくなったか?小さくなったか?判然としない。

が、CBCT撮影を行うとどうだろうか?

#15 初診時(2018.8.22)vs 6yr recall 時(2024.2.6)

明らかに問題が消失したことがわかるだろう。

ちなみに、

#14の根尖部にも病変がある。

これは6年前にはあったのだろうか?

#14 初診時 CBCT MB(2018.8.22)

#14 MB 6yr recall CBCT(2024.2.6)

#14は根管形成も十二分に行われているため、Apicoectomyが必要だろう。

その際は、

CEJから10mm下方にApexはあり、

歯槽骨を3mm削合するとApexが出現し、

Apexから3mmで切断すると、頬舌的に 6.6mm切断する必要があると言うことまでわかる。

これが3次元的な画像の力だ。

このようなパワーはPAには出せないだろう。

PAのみではApicoectomyの治療計画は立てられないからだ。

しかしそれ以上に重要なことは、

ルールを守った根管治療をすることの重要性だ。

それがあれば、このような状況にはならなかっただろう。

そして、

穿通しなくてもルールを遵守した根管治療が凄まじい威力がある

ことがわかっていただけただろう。

ということで、

#15はこのままでOK

#14はMBにApicoectomyが必要

と言うことがわかる。

患者さんは同意されたので別日に、Apicoectomyとなった。

またその模様はお伝します。