バイト先での治療。
患者さんは20代女性。
主訴は自費で修復物をかぶせるので再根管治療が必要である、とのこと。
#20はこの歯科医院の院長により歯内療法が終了し(ラバーダム、マイクロスコープ使用)、既にTekが装着されていたが、#19にはTekなどは全く装着されてなくコアのままの状態であった。
難しい再根管治療ということで紹介があったのだ。
(歯科医師には珍しく?ここの院長はかなりまともな人である。)
歯内療法学的検査は以下の様になった。
#18 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#19 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#20 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下の様になる。
歯内療法学的診断は以下の様になる。
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT(この歯を治療した前医ではラバーダムは使用していない。)
ポストコアを除去するときに歯質を削りたくない私は、ポストと歯質の間を切削する道具を, SS whiteのEndo Guide Bar EG4を使用した。
残念ながらこのバーは日本では販売されていない。
私が必要だ!と感じる器具は大概日本にはないのだ。
これだとメタル部分のみを正確に切削することができる。
歯質の削合が最小限で済むのだ。
しかし何度もいうが日本では販売さえされていない。
ということで再根管治療となった。
ポストを半分で頬舌的に切断し半分に分けて、その後Endoguide barにてセメントラインを全て露出させた。
この状態でVP-Tipをポストに当てて除去を試みた。
ものの数分でポストコアは除去された。
が、遠心に歯質がないためそこをレジンで隔壁形成しワセリンを同部に塗布してラバーダムを装着しホワイトニング用のブルーレジンで隙間を埋めて再根管治療が開始された。
ガッタパーチャを除去するとガッタの中から白い物体が現れた。(特に遠心根。)
私はそれが何なのかわからない‥見たこともないような景色に覆われていた。
これが日本の保険診療だ。患者に知識がないことをいいことに独自の理論・材料で治療を試みようとする。
そして得てして絶対に責任を取らない。
なので好き勝手が行われる。
そして治療後2ヶ月経過時に、国からお金が振り込まれるというこのシステムに毒された日本の歯科医師はもはやこの毒から逃れることはできないだろう。
与太話はさておきこのあと、作業長を測定したがMBは閉鎖していたが、MLとDは穿通した。
MB, MLはともにHyFlex EDMの#50.03まで形成している。
Dはしかしながら根尖部が大きく吸収されていたため、BC puttyでの根管充填を決意したため、超音波での洗浄のみを行ったため、作業長やReference pointやMAFなどを一切測定していない。
治療の内容は以下の様になる。
ガッタパーチャを試適してPAを撮影した。
すると、ML根から#40.04のガッタパーチャポイントが大幅に根尖にはみ出ていたため、私は#60.04のガッタパーチャ、#50.04のガッタパーチャを14.0mm計測しそれぞれ試適してみた。
すると、#50.04のガッタパーチャポイントは#40.04と同じ位置まで(要するに14.0mmの位置まで)ガッタパーチャポイントが入ったことから、これでは先程の#40.04と変わらない‥と感じた私は、オーバー根充させたくないために、#60.04のガッタパーチャポイントを選択し、この号数で根管充填することにした。
ヨシダのBio-C sealerを用いてシングルポイントで根管充填してレジンとファイバーポストで築造した。
さてこれで治癒するかどうか?は神様が決めることである。
私は神様ではないのでこの歯が今後どうなるか?は予測できない。
しかし、うまく行かなければApicoectomyを行うだけである。
ということでこの日の治療は終了した。
補綴治療も急いで行いたければすぐ行っても構わない。
ところで。
この患者さんは歯科医療にいいイメージをまったくもっていない。
今まで散々歯科医師に騙された?ようだ。
虫歯がいっぱいまだあり、リスクが非常に高いタイプだと勘違いしている。
こういう人が世の中には多いのだろうか?といえば、ちょっと冷静になって考えてほしい。
歯がないからと言って、なにか困ることが具体的にあるだろうか?
歯がないから不幸だろうか?
歯がないからDQNなのか?
北欧のペリオの先生曰く、第2小臼歯まで残っていれば咬合するのに困らないという。
それを考えてもこの患者さんは天然歯がいっぱいある。
自分自身でリスクが私は高い!と信じている。
信じるのは構わないが、この人が悩んでいる病気は歯科疾患である。
命には関わらない。
したがって焦る必要性はないのだ。
私はそのことをコンコンと説いた。
そっちのほうが歯科治療よりも重要だと思ったからだ。
彼女から出てくる歯科医療に対する不満、不平は、この日本にいる多くの歯科難民?の声の代表だろう。
歯科医院に行くたび虫歯があると指摘される
歯科医院に行くたび磨けていないと叱責される
歯科医院に行くたび何日かの通院を強要される
どうして歯科治療はこんなに時間がかかるのか?なぜ1回で終わらないのか?
金儲けなのか?何なのか?もはや意味がわからないとさえ彼女は私に話していた。
今説明しとかなければまた新たな被害者が発生してしまう。
私は彼女をその道へ進めさせたくなかったので、事実をありのまま伝えた。
治療に来たのが14時。治療開始が15時半。治療終了が17時半。
14時から17時半までこの方はこの歯科医院にいたことになる。
しかしそれは米国の(大学院の)歯科医療からすれば当たり前だ。
1日多くの患者の治療などできないからだ。
しかも私は脳出血を起こしているのでなおさらである。
ということでこの日の根管治療は終了した。
みなさんが歯を保存したい、長く使用したいと思うのであれば、安易な治療の受領はせずに立ち止まって考えてほしい。
それ(勧められた歯科医療)には意味があるのか?どうかということを。
以下、患者さんの感想。