患者さんは20代男性。

以前の歯科医院での患者さんの経過観察をバイト先で行った。

初診は2018.7.3であった。

その際の主訴が以下になる。

左下奥歯に膿が溜まっていてどうしたらいいのかわからない。

痛い。

腫れる。

足首がこる。

18歳で根管治療している。

その後大阪で再治療している。

その後セラミックでかぶせたが腫れて出血が止まらなかった。

かぶせたあとも物が詰まり、痛みで他の歯科医院へ転院。

そこで再根管治療を行う。

その後、経過観察になり福岡へ転勤した。

が、こっちに来たらまた腫れて歯の外からの消毒を行った。

が、腫れた部分から膿が出てきてそこは小さくなったが、現在痛みがある(物を噛んだとき、歯がひびく。)

初診時の歯内療法学的検査の結果は以下である。

#18 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#19 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#20 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下のようになった。

歯内療法学的病名は以下の様になる。

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis with sinus tract(もしくは正しくはこの場合は、Chronic apical abscessであるが、この表記した病名のほうがわかりやすいかもしれない

Recommended Tx: Re-RCT

歯根を取り囲むかのような透過像がある。

これが何を意味するか?といえば、破折である。

アメリカならば、破折している可能性があるので治療すること自体を勧めないだろう。

しかし、ここは日本である。

日本人は折れてますねという確証がはっきりするまで歯を保存したいと強く願う民族である。

再治療で破折が見つかれば即終了という条件で再根管治療を行うことになった。

ということで治療が開始された。(2018.8.9)

遠心根はストリッピングパーフォレーションしていたため根管ごとBiodentineで充填した。

が、破折は見当たらなかった。

もしかすると、なんとかなるかもしれない。

その後、他院へ補綴治療を紹介した。

がその歯科医院の補綴医から、

遠心根管がないのでポスト孔を掘れない

と連絡があり、

私が代わりに行うことになったが、

確かに遠心根は見当たらなかった。(2019.1.24)

が、顕微鏡の最高倍率で稼働内を観察するとBiodentineと思しきクリスタルの結晶の塊を発見し、そこを少しずつGatesドリルで削除し、PAで確認しながらポスト孔を形成していった。

(その時の動画は取り上げられてしまい、今はない。)

その模様が以下のPAである。

問題ないと判断して水酸化カルシウムを根管充填剤の上において仮封した。

このあと私は倒れてしまうのでこの患者の予後は見れなかった。

が、この日この歯科医院でこの患者の予後を約3年ぶりに見ることができたので、皆さんにご報告したい。

再治療終了から約3年が経過していた。

ちなみに初診時にあった打診痛、咬合痛、根尖部圧痛は消失していた。

主訴は改善されていた。

クラウン最終修復もなされていた。クラウンレングスニングも行ったらしい。

PAは以下のようになった。

歯槽骨はかなり回復していたが、未だに根尖病変とおぼしきものがある。

が、患者には症状や痛みがまったくないので私はこの状態を、Healingであると判断し経過を更に見ていくことになった。

Orstavik 1996によれば、

再治療の予後を判断するには少し時間がかかるからだ。(約4年)

次回は1年後にリコールを行いこの歯がどうなったか?をまた皆さんに報告できればと思っている。

再治療の経過を判断するのには時間がかかるのだ。

しかし、この歯科医院は患者さんから再診料を取っていないので、患者さんは再診にもきっとやってくるだろう。

このように歯を大事にしてくれる人で出来ていれば、日本の歯科医療もきっと変わる可能性があるのだが‥。

そして最後に一言。

この患者の主訴を確認して欲しい。


左下奥歯に膿が溜まっていてどうしたらいいのかわからない。

痛い。

腫れる。

足首がこる。

18歳で根管治療している。

その後大阪で再治療している。

その後セラミックでかぶせたが腫れて出血が止まらなかった。

かぶせたあとも物が詰まり、痛みで他の歯科医院へ転院。

そこで再根管治療を行う。

その後、経過観察になり福岡へ転勤した。

が、こっちに来たらまた腫れて歯の外からの消毒を行った。

が、腫れた部分から膿が出てきてそこは小さくなったが、現在痛みがある(物を噛んだとき、歯がひびく。)


このような主訴を伝えられて、貴方(歯科医師)はどう思うだろうか?

面倒くせえ奴が来たな!と思うだろうか?

ちなみに私は全く思わない。

話が長いよ!と思うだろうか?

私は全く思わない。

むしろ多くの情報をくれてありがとうとさえ思う。

しかしそのような悠長なことは(保険)歯科医療ではいうことはできないだろう。

ここが、日本の歯科医療の最大の問題だ。

患者は悩みを吐きたいのに受け入れ側がそれを拒否している。

歯科医院にコーヒーやお菓子、お洒落な?雑誌が必要だろうか?

全部、予定の時間に歯科医療が始まらないためのエクスキューズ(言い訳)ではないか?

こんな現状でいいのか?といえば、私は全くそうは思わない。

患者の主訴を聞くのは院長であって、こーでぃねーたーと呼ばれる歯科助手ではない。

歯科医師・院長が主訴を聞かなくて誰がその問題を解決してくれるのだろうか?

この現状では日本の歯科界はこの先どうしようもないだろう。

しかし、患者さん。

これが日本の歯科医療の現状なのだ。

話も聞いてくれない人にどうやって自分の歯を任せることができるであろうか?

もう二度と再生しない組織なのだ。

自分の話はきちんと聞いてもらわないと困るでしょう?

日本の歯科医療がまともな方向に進むことを望むが…現状では難しいだろう。