バイト先での治療。
患者さんは30代男性。
主訴は咬合時に5年前に治療した歯(#14)が痛むというもの。
初診時の検査は以下のようになる。
#13 Cold NR/20, Perc.(-), Plap.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio probe(MB=5, DL=5), Mobility(WNL)
#15 Cold+3/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下のようになる。
この歯科医院ではCBCTも撮影できたので, #14は以下のようなCBCTが得られている。
MB
MB2は根尖部でMB1と合流しているようである。
しかもMB1のかなり近傍にその入口が存在するとわかる。
しかし、前医はMB2を無視した。
ラバーダムをしていたのであれば百歩譲って問題が出なかったかもしれない。
しかし、ノーラバーダムで根管治療をしてしまっている。
それはNG行為だ。
でもこのMB2を根管形成できたからと言って、この患者の主訴が解決するかどうかはわからない。
私の臨床経験から言えば、それでは解決しない可能性がおそらく高いだろう、と思う。
DB
根尖病変がなく問題がある根管とは考えにくい。
が、ラバーダムをしていないのだ。
であれば根管は唾液まみれだっただろう。
つまりこの根管も見た目はなにもないが、問題が深いのである。
P
最後にP根である。
P根はオーバー根充だろうか?
CBCTのアーチファクトもあるのでそこまではよくわからない。
が、口蓋根は注意して治療をしたほうが良さそうだ。
ということを説明し、実際の治療法は
①再根管治療+支台築造
②支台築造→意図的再植術
と説明した。
患者さんは、まず再根管治療を行いそれでも主訴が解決しなければ外科治療を行いたいという方針であった。
私はそれに従い、①再根管治療+支台築造を行うことにした。
ただ、隣在歯には深い虫歯がある。
ここが歯髄診査でColdに対して反応がないのである。
咬合面も頬側歯頚部にも反応が出なかった。
これは、#13が壊死している可能性を示唆している。
壊死していれば、#14を再根管治療後に、#13の根管治療も行わなければならない。
しかしそれは、露髄させないと生活か?失活か?の判断はつかないのである。
つまり、根管治療に移行するかしないかであるが、まず#14の再治療を行い主訴が改善しなければ#13の根管治療も行うという治療方針を立ててそれに同意していただいた。
ということで、治療が開始された。
#14 Re-RCT開始(2021.5.19)
MB1とMB2は合流した。が、穿通しなかった。
DB, Pは穿通した。そしてP根のオーバ根充しているかもしれないガッタパーチャも丁寧に除去した。
治療内容は以下の様になる。
PAは以下の様になった。
それから1ヶ月が経過したが、咬合痛はやはり取れなかった。
術前の説明通り#13も根管治療を行うことになった。(2021.6.8)
これで1ヶ月程度経過観察を行い、咬合痛が取れなければ#14の意図的再植を行う予定である。
が、#14には根尖病変がないのでそのような歯を抜くというのはかなり難易度が高い処置であることは間違いない。
絶対に脱臼させないと抜歯はできないだろう。
ということでこの日の処置は終了した。
また1ヶ月後にどの様になったか?報告したい。