紹介患者さんの治療。

主訴は、

被せた歯に痛みがあった。2ヶ月前から歯にできもののようなものがあることに気づいた。今は痛みはないが…

である。

歯内療法学的検査(2024.12.5)

#2 Cold+2/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(++), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Abscess(+)

主訴は歯肉にアブセスがみられる、#3だ。

PA(2024.12.5)

CBCT(2024.12.5)

MB

DB

P

MBは頬側の皮質骨が喪失している。

これが、圧痛に反応する原因だ。

が、MBはおそらく1根管だろう。

理由は以下だ。

根の中央に根管が見える。このことはその歯根には1根管しかないことを示している。

もしくは、MB1の近傍にMB2はあるのだろう。

根充すると以下のような絵になるはずだ。

根の中央にGutta Percha Pointが来ることから、MB2はあってもMB2の近傍でそして恐らくかなり上部で合流するだろう。

CBCTがあるとここまで予想がつく。

なければ…

盲目的な歯内療法にならざるを得ない。

いずれにしても、

もはやCBCTなしで歯内療法臨床はできないだろう。

得られるメリットが放射線被曝よりも明らかに大きいのだから。

歯内療法学的診断(2024.12.5)

Pulp Dx: Pulp Necrosis

Periapical Dx:Chronic apical abscess

Recommended Tx: RCT+Core build up

ということで、同日に治療へ移行した。

それが成功しなければ、Apicoectomyだがどうなるか?は誰にもわからない。

理由は以下である。

Siqueria 2008 Clinical implications and microbiology of bacterial persistence after treatment procedures

いずれにしても近心根に問題があるように見える。

人間の免疫力が勝つか?細菌の毒性が勝つか?

その勝負の結果は誰にも予想はできないだろう。

が、#35以上に拡大すれば勝負に勝てる見込みは、ある。

やれることはやるだけだ。

☆この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#3 RCT(2024.12.5)

SXで根管上部を拡大し、C+ Fileで穿通させた。

その後、根管形成し(HyFlex EDM #40.04まで)、#35.04のGutta Percha PointでBC SealerとともにSingle Point根充した。

MB2はMB1の根管上部で合流していた。

治療にかかった時間は20分である。

こうなるためには、

治療前にCBCTを撮影して歯牙を分析し、

根管に追従するようなNi-Ti Fileを手にしなければ無理

だろう。

その意味では

HyFlex EDMは, 現段階で, 他のNi-Ti Rotary Fileの追従を許さない優秀な器具

である、といえる。

術後にPA, CBCTを撮影した。

MB

DB

P

私の治療前の予想通りであった。

ということで次回は1年後である。

またその経過をご報告したい。