5年前、私はアメリカから帰国し福岡市内の僻地で歯科医院を経営していた。

その後、天神の船越先生から酷評された場所だ。

九州で開業している歯科医師は博多か天神にしか患者は紹介しないと言われた、雨が降ると全くタクシーの捕まらない、曰く付きの場所だ。

思い出すのも心が痛い。

この地にいい思い出はない。

歯科医院の周りはシケモクだらけ。

片付けても片付けてもタバコを捨てられる。

私がそのことをexcuseすると、

新規で立ち入り検査に来た某区の職員が、

ああ大丈夫ですよ。ここの人たちは民度が低いんで。

と酷評した場所だ。

そんなひどい環境の中、私を求めて来てくれた同業者がいた。

今日はその話を。


初診は2017.1.28。

私が既に博多への移転を実行しようとしていた時である。

主訴は

#14の咬合痛・打診痛が治らない

であった。

知り合いの歯科医師の先生の奥さんである。

RCTを行ったが、その治療継続を私に依頼された。

治療を行うと痛みが発生するという。

無麻酔で治療して(8回根管治療した)、その後lingering painが発生すると言う。

それが2016年の夏に本格的に痛みに変わったそうだ。

その後、Sinus tractも発生したと言う。

これは正直やりにくい。

下手すると外科案件だ。

が、いただいた仕事だ。全力を尽くそうと言うことで歯内療法学的検査が行われた。

#13 Cold+2/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#14 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#15 Cold+1/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

歯内療法学的検査で主訴が再現できた。

これは治療でうまくコントロールできる可能性が高い。

Pain levelは7/10。

咬合すると痛く、開けると痛みがなくなると言う。

これだけ聞くと破折を疑う案件だ。

PAは以下になる。

CBCTは以下になる。(紹介元での治療前のCBCT)

遠心根に根尖病変が見える。

別の画像だと以下になる。

治療開始時に既に頬側の歯槽骨は穿孔していた。

これがどれだけ治癒していくだろうか?

が、依頼された仕事で治療も途中で終了している以上私がバトンを受け継ぐしかない。

歯内療法学的診断は以下になる。

#14

Pulp Dx: Previously initiated therapy

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: RCT+Core build up

ということで治療が行われた。(2017.1.28)

治療の内容は以下になる。

この時代はUSCから帰国して間もない頃でProTaper Goldを愛用していた時代だ。

根尖病変があるDBは既にK20で穿通するという状況であった。

ポイント試適した。

根管充填し、支台築造した。

ここからプロビジョナルレストレーションを装着し最終補綴がなされたが、この後この方が一度も来院されたことはない。

が、ご主人からPAとCBCT、そして現在の状況を聞くことができた。

根管治療から約5年が経過している。

PAは以下になる。

画像を見て感動した。

素晴らしい偏心撮影である。

色々歯内療法でも、ああだこうだという歯科医師はいっぱいいるが、偏心撮影を的確にできる歯科医師を私は知らない。

人前に出せるデンタルをあなたは撮影できるだろうか?

この案件でセミナーをしても良さそうな話である。

できなければ?

練習あるのみである。

あなたは練習できる環境にないというのだろうか?

だとしたら歯科医師の民度はそこまで低いのか…

頭が痛い。。。

まあ話を元に戻そう。

PAから、根尖病変はコントロールしているように見られる。

患者さんの症状を聞くと以下のようになった。

疲れた時に違和感はあるが痛みはない。初診時の問題は解決されました。

ということで治療は成功していると言える。(うまくいかなければApicoectomyするだけだ。)

CBCTもいただいたので画像をチェックした。

DBの頬側の皮質骨は再生しているように見える。

治療は一応、現在のところ成功していると言っていいだろう。

次回はまた来年、同じような資料をいただく予定である。

5年は長いが、機能していてよかった。。。

歯科医師として嬉しい瞬間である。

また来年、この模様をご報告できればと思う。