他院からの紹介の患者さん。
患者さんは20代女性。
県外からの患者さんである。
主訴は
体調がすぐれない時に左下の歯が痛む(今は痛くない。生理の時などに歯が痛む。先月は痛かった。)
とのことであった。
元々は今から数年前に有髄神経のまま(抜髄をしないまま)クラウン修復をしていたという。
その後、クラウンが外れて歯髄も失活してしまい別の歯科医院で再装着されたが、そこが痛むということである。
ちなみにその際、その歯科医院で歯内療法になっているがそれ以来、ずっと調子が悪いという。
歯内療法学的検査をおこなった。(2021.12.25)
#19 Cold+3/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#20 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#21 Cold+2/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下になる。
CBCTも紹介先からいただいていた。
紹介された部位のみ根管治療をしているようだ。
別紙を見ると明らかであった。
そして、そこの調子が悪いという。
オトガイ孔まではかなりの距離がある。
以上のことから分かる事実としては、
- 根尖病変がかなり大きく存在している
- 根尖部の形成はしていないか、ほぼできていない
- 再度修正が可能な状況
ということが言えるだろう。
ということは??
そうおそらく、再根管治療の予後は極めて高そうだ。
恐らく先の方まで再形成が可能であれば、成功率は90%近くあると言える。
が、外科治療の可能性がないわけではない。
それを決めるのは、科学に則ってやれば、神様である。
#20 Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis, Recommended Tx: Re-RCT+Core build up w/wo Fiber Post
ということで再根管治療が行われた。(2021.12.25)
作業内容は以下になる。
作業長は20.5mmであった。
なぜそんなに長かったのか?といえば、
この修復治療が除去されたものではなかった
からだ。
私は除去済みと聞いていたが除去されていなかった。
どうりで麻酔後に何度Tek?を除去しようと試みても外れないわけだ…
まあそれはさておき、根管治療は?といえば非常にEasyであった。
一言で言えば前術者の、
ああもう!面倒臭い治療だな!!
という心の声が聞こえてきそうな治療であった。
謎の物体が根管充填されていたが除去は極めて容易であった。
恐らくシーラー等を使用していない根管治療だと思われる。
除去したGutta Percha Pointを見れば明らかだ。
シーラーは何がいいのか?とよく聞かれるが、正直何でも構わない。
以下にそのような文献があるので紹介しよう。
Wu 2004 Fluid transport along gutta-percha backfills with and without sealer
最もSelaerを使用する量が少ないと言われるCWCTを行い、AH26, Roeko seal, ZOE, No-sealerどれが最も封鎖性がいいのか?という研究を以下のようなシステムで行なった。
根管充填を行った抜去歯牙を図のように括り、水圧をかける。
封鎖性がないものほど少ない圧でAir bubbleが右へ動く。
つまり、
水圧がシーラーの封鎖性を破りリークした
ことになる。
某勉強会はシーラーを用いず根管充填する方法を歯科医師に教えていたらしい。
全くもってあり得ない。
それは個人の感想や嗜好が治療の結果に影響することになる。
そうした歯科医療がいい治療なのだろうか?
私はそうは思わない。
お金をかけなければ、歯内療法はできないことは世界中の誰もが知っている。
しかし、日本人だけは知らないようだ。
いつまでも国や患者の奴隷になっている。
これをいつまで続けていくのだろうか?
もう無理だろう。
そして、こうした治療は保険診療では全くお金にならない。
根管治療は不採算部門であるからだ。
単根管の抜髄根管治療の保険治療費は相当安いはずだ。
うちだと¥120,000(税別)だが。
お金が低いというなら、自分が望む金額に上げればいいのだ。
しかし誰もそれをしない。
それをやると誰かからshotされるからだろうか?
誰も私をshotしようとする人間は今のところいないようだが…
さておき、根管治療は終了しGutta Percha Pointを試適した。
PAは以下である。
歯根が長いので、PAを縦にした。
問題のない位置にGutta Percha Pointはあると思われる。
根管充填し、支台築造処置をした。
シーラーパフは見られなかった。
シーラーの量が少なかったのだろうか?それとも別の原因だろうか?
いずれにしても今回はPatency Fileもしたし、MTA系シーラーの根管充填であったがパフはなかった。
ということで根管治療は1回法で終了した。
次回は半年後の2022.6下旬〜7月上旬である。
その際、再度PAや現象などを問診・診察してこのブログで明らかにしたい。
しばしの時間をいただこう。