以前の歯科医院(まつうら精密歯科医院)で補綴治療をした患者さんの根管治療。

患歯は#21,22。

この方の治療は約10年前に私が補綴治療までしている。

全顎歯周病の患者さんで、

再根管治療を中心とした歯内療法をし、

中心位で矯正治療をし、

補綴治療を行った患者さんである。

患者さんから以前の資料をいただいた。

矯正治療が終了を一応見たのは、2009年10月23日のことだという。

今から12年も前のことだ。

私がまだ開業して3年目で希望に燃えていた時代だ。

500万近い全顎治療を行った患者さんである。

今現在、そのような治療費を稼げることは私にはない。

なぜか?歯内療法しかしていないからである。

本当に懐かしい口腔内である。

昔を思い出した。

さて患歯は#21,22であるのでその歯を中心に歯内療法学的検査を行った。

#20 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(測定不可), Mobility(3)

#21 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(Fixのため不明)

#22 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(Fixのため不明)

#21,22はど縁上のマージン設定であったのでその部分にCold testを行い、咬合面からも行ったが反応がなかった。壊死を予想させる。

PAは以下になる。

#20はペリインプランタイティスになっていた。

また、CBCTは以下になる。

#21,22には根尖病変が存在する。#20はもうアウトだろう…

#21

#22

歯内療法学的診断は以下になる。

#21 Pulp Dx: Pulp Necrosis, Periapical Dx: Symptomatic Apical Periodontitis

#22 Pulp Dx: Pulp Necrosis, Periapical Dx: Symptomatic Apical Periodontitis

Recommended Tx: #21,22共にRCT+Core build up

さて、#21であるが、患者さんはこのままの状態で経過を見ていたそうだ。

インプラントの問題は私には解決できないので、

インプラントを専門に扱う歯科医院

に行くことを推奨した。

彼らの診断結果を聞くと、#20はそのまま使用できるらしい。

なので、#21のみのインプラントのやりかえとなるようである。

さてそれはさておき、今回は根管治療と支台築造を行うというのが治療の目的である。

しかも2本同時に、である。

が、問題がある。

#22のApexまでの長さである。

いただいたCBCTを見るとApexまでの長さは 24mmである。

このことは、

長いファイルがないと根管形成できない

ことを意味している。

業者から長いファイル(Vortex Blue 30mm, WaveOne Gold 31mm)を複数本購入し、治療に備えた。

下顎孔伝達麻酔を行い、頬神経ブロックし、15分時間をおいて麻酔が効くまで経過を見ていた。

なぜ15分時間を置くのか?

といえば、以下の本に書いてある。

アメリカでは人気があるが、日本では誰も読まない麻酔の本である。

しかも出版会社は

我らの?クイントだ笑

まあ詳しいことは置いておいてこの会社の一押しの?本であるから麻酔に興味がある人は購入をお勧めする。

もちろん英語の本だけども、だ。

しかし我々はいつまで、 ”日本語”  で歯科のセミナーを受ける予定だろうか?

もうそのようなセミナーに参加するのはやめた方がいいだろう。

世界の共通言語で学ばない学問は日本の歯科医療だけではないだろうか?

世界の恥である。

まあそれはさておき、この本の中に以下のような記述がある。

というわけで15分間、#28の外部吸収のCBCTに関して説明した。

おそらく歯髄までは到達していないだろう。

が、到達していれば歯内療法も必要になるし、支台築造も必要になる。

それは多分ないだろうが、リスクがあることは全て説明しなければならない。

ということで15分後に、唇や舌が痺れているか?確認し、確認できたのでラバーダム防湿を行い根管治療が開始された。

しかし…

これが極めて難しい。

補綴が入った歯の根管治療はかなり難しい

のである。

理由は、補綴の歯軸と支台歯の歯軸が一致しないからである。

補綴に並行に削合して行っても根管口は全く違うところにあるなどということは日常茶飯事である。

事実、#21では私はパーフォレーションを起こしてしまった。

(が、即座にBC Puttyでリペアしている)

#22も怪しかったが寸前で回避している。

治療内容は以下になる。

#21

#22

#22のこの長い根管を如何にして攻略したか?

であるが、結論からいえばHyFlex EDMのラバーストップを外して根管治療をした。

ラバーストップを外せばファイルの長さは25mmである。

つまり、RILが26mmで作業長をRIL-1mmとすれば、最大25mm取れることになる。

これは#22の作業長-1mmに一致している。

26mm以上のRILであれば無理である。

若干アンダー形成になるが、現代は?シーラー根充の時代である。

したがって細かいことはもう気にしなくてもいいだろう。

この症例から私がわかったことは、

作業長が 25mmまでであればラバーストップを外して、HyFlex EDMを使用することができる

という事実であった。

これは非常に助かる。

形成が面倒臭いテーパーが強いファイルを使用しなくていいからである。

ポイント試適をした。(PA撮影)

問題ないと判断し、根管充填し支台築造した。

治療自体は2時間程度で終了した。

根尖病変もあるので、Patency FileをしOverfillingになっていることがわかる。

根管の中が完全にパッキングされている証拠である。

さてこの治療から学べることであるが…

補綴が入った歯の根管治療は極めて難しい

という事実である。

つい先日も、紹介元の歯科医師からまあこれは自分でやっときます!というような治療依頼があったが

難しいので紹介した方がいい

という話をし、ことなきを得たようであった。

補綴が入った歯の根管治療はかなり難しいのである。

そう簡単に治療ができないことはこの症例でわかっていただけただろう。

ということで#21,22の根管治療が終了した。

できないことは、自分でやらずに専門医に任せましょう。(しかし、それが難しいのか…?)