バイト先での治療。

患者は40代女性。

患歯は#15(左上7)であり、歯内療法学的な検査では以下のようになった。

Cold(+5/3→Coldに浸したロールワッテを歯に当てて5秒後に反応ししみる状態が3秒間持続したという意味)

Perc.(-), Palpation(-), Bite(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

したがって病名はどうなるだろうか??

PAである。(この医院は1枚しかPAを取らない…)

歯髄はCold testで反応したので正常であろうか?

しかしながら深い充填物が装着されている。

3根管か4根管の中でどこかが死んでいて、どこかが生きているのかもしれない。

しかしそれは誰にもわからない。でも根尖部に根尖病変があるのだ。

ということであれば、AAEの以下の診断の基準を参考にする。

生活歯髄が炎症を起こして元に戻らない状態であるということを示す、主観的または客観的な特徴に基づく臨床診断。また臨床的には症状はないが、カリエスやカリエス除去、外傷により歯髄に炎症が生じていると思われる状態

を指す。

Key pointは深いカリエスだ。

深いカリエスがレジンで充填されている。

ということで私の診断は以下のようになる。

Pulp Dx: Asymptomatic irreversible pulpitis

Periapical Dx:Asymptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Root Canal Treatment

成功の見込み:90%

失敗した場合:意図的再植術

Order of TX:RCT→3ヶ月経過観察→クラウン修復治療→問題があれば意図的再植術

この治療がうまくいくか?どうか?は私は神様でないからわからない。

しかしわかっていることは、治癒する可能性はかなり高いということだ。

しかし、問題はもう一つある。

この患者の口腔内が極めて狭い、小さいということである…

この7番は7番だが、感覚的には親知らずをRCTする感じである。

非常に治療がしにくい患者である。

表面麻酔をし、根尖部に浸潤麻酔、そしてもう1本伝達麻酔=PSAを行なった。

PSAの成功のコツはやりすぎないことである。やりすぎると血腫が発生する。

昔、1人女性の患者が血腫になってしまったことがある。

彼女はその後大学病院へ行かれたが今はどうしているだろうか…

懐かしいが下の写真のような状態になることが少なからずあるのである。

だから麻酔はやばいことが?必ずつきまとう。それと我々は戦わなければならない。

ではどうすれば血腫が防げるのか?それはPSAの回数をできるだけ少なくするということである。

1回よりも2回、2回よりも3回の方がHematoma(血腫)の可能性は高くなる。

そしてもし患者がHematomaになったら以下のことに関してよく患者に説明しなければならない。

まず腫れた部分は氷で冷やした方が良い。氷を腫れた部分に当ててもらう。

そして、次からが重要であるがその後どうなるかだ?

  1. 間欠的に氷を6時間は当てる
  2. 痛みを抑えるためにアスピリンを飲むことは避ける(血液サラサラ効果で顔がさらに腫れる)
  3. 顔面の変色が起きることを説明する
  4. 感染の兆候と症状や開口障害が出た場合はかかりつけ医に素早く連絡させる。

抗凝固剤などを使用している患者の場合、麻酔をする前にかかりつけ医に相談し局所麻酔を使用していいかどうか確かめる必要がある。

症状の改善には数週間要する。

さて麻酔後にラバーダムを装着し根管治療が始まった。

銀歯を除去し隔壁の形成が必要となった。

しかしながらこの後、問題が発生した。器具の根管への挿入がかなり厳しいということだ…

特にMB根へのC+ Fileの挿入には困難を極めた…

こんな時に短いファイルがあれば…と思ったが21.0mmのK Fileは穿通どころか何の役にも立たず、結局後の祭りだった…。。。

作業長などは以下のようになった。

MB:閉鎖、Reference point:不明、IBF:不明、MAF:#50.03

DB:18.0mm、Reference ponit:DB、IBF:C+ File #08、MAF:#40.04

P:RIL=20.0mm、Reference point:P、IBF:C+ File #06、MAF:#50.03

MBは結局穿通というかそういう話ではなくなった…

ガッタパーチャポイントを試適し、BC sealerを用いて根管充填した。

DB, Pはシーラーパフが確認できるがMBには確認できない。

もう1枚のPAにもMBからシーラーパフは確認できなかった。

この症例はブログに出すかどうか迷ったが敢えて出してみた。

そして世間からあいつは下手だとか何とかだとか色々と評価が私に降るだろう。

歯内療法専門医は人から評価されるということがもはやほぼない。

あとは私にある人生で他人から評価される道というのは、ABEのOral Boardくらいだ。

バイト先の先生には、口腔内が狭く、7番だが8番を治療しているようであったと一言Excuseをしておいた。

色々世の中にはあるなと思いしらされた1日であった。