経過観察処置。
治療したのは今から4年前(2018.1.29)である。
主訴はかかりつけ医の
補綴を装着するので、抜髄・根管治療をしてください
であった。
クラウン形成してから歯が染みるという。
歯内療法学的検査は以下になる。
#28 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#29 Cold++1/21, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#30 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
PAを撮影した。
病名は以下になる。
#29 Pulp Dx:Symptomatic irreversible pulpitis, Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis, Recommended Tx:RCT
歯が長い。
そしてかかりつけ医は生活歯を補綴にしようと試みていたので、#29は歯髄に接近する歯冠形成となり冷水に対してひどく染みる症状が続いていたという。
特に近心の髄角はすでに露髄していると言っていいだろう。
私の専門分野からすればこの状態では既に露髄している。
いつもこういう症例を見て思い出すことがある。
USCの時だ。
抜髄根管治療を極力避けようと思った入学したての私は、深いう蝕を露髄を避けるようにエンジンで切削していた。
30分くらい経過した時点で、その結果をFacultyに見せるとファカルティは鋭い短針を手に持ち窩洞を突き刺し出した。
おいおい…このおっさんは露髄させる気か?とおもったのも束の間、
”はい、露髄したぞ。根管治療”
あの時若くて無知な私は頭にきた。
何を考えているんだ…せっかく歯髄を残して治療したのに。。。
私は怒りと共に抗議をそのFacultyにぶつけた。
するとこう返事をされた。
”こういう状況は既に露髄してるんだよ、Akira。 お前はここに何しにきたんだ?Root Canalだろう?であれば、お前がすることは歯髄を保存をすることなのか?俺はそうは思わない。お前に必要なのは根管治療を頑張ることだ。わかったらつまらないにこだわらず、根管治療を頑張ってやれ”
正直、頭にきたが…この謎はその後、Dental PulpやLiterature reviewで解決することになる。
歯髄に対する専門医と一般医の判断には大きな差があるのだ。
先日も紹介したあの論文である。
PAで歯髄に近接するような虫歯がある時、どのような治療を提案するか?調べている。
Koopaeei 2017 General dentists’, pediatric dentists’, and endodontists’ diagnostic assessment and treatment strategies for deep carious lesions: A comparative analysis
結果は、以下のようになった。
GPと小児歯科医師の80%がDirect Pulp CappingかPartial pulpotomyを行うのに対してEndodontistは60%が根管治療を選択する。
何を教育されたか?の違いがこの治療方針の違いに影響を与えていると言えるだろう。
この”教育”により歯内療法専門医はみだりに歯髄を残すという選択をしない。
もししたいなら…生活歯髄療法(断髄)を選択するだろう。
しかし、それと引き換えに根管の石灰化という道を選ぶ羽目になるが。。。
以上を説明し、根管治療へ移行した。
根管治療開始時(2018.1.29)
Wire Filmである。
作業長が長く安定しなかったため、Wire Filmを撮影した。
いい位置にファイルは存在した。
これを頼りに根管形成し、根管充填した。
治療内容は以下になる。
当時の私はEdge Evolveを使用していた。
根管充填した。
シーラーパフは根尖病変がないので確認できないが、PAを偏心で撮影すると根尖部にシーラーが確認できる。
ちなみに、支台築造は向こうでやるのでしなくていいと言われたので根管充填剤の高さ(位置)は調整していない。しかし今思えば…調整してあげるべきだったのかもしれない。象牙細管を介して感染が起きるからである。
術後にプロビジョナルレストレーションを再装着した。
ここから3ヶ月が経過した。
RCT 3M later recall(2018.5.11)
いかなる深い症状も術後にすぐ消失しているので、最終補綴をおこなっている。
ちなみに痛みはどれくらい続くか?だが一般的には1週間程度であることが多い。
以下の、AAEのColleagues for Excellence を参考にしていただきたい。
A recent paper on nearly 5,000 patients (3) revealed about a 90% reduction in pain within one week of root canal treatment(Figure 2).
ここで引用されている(3)の文献は、Pakの2011のJOEのreview論文である。
Pak JG, White SN. Pain prevalence and severity before, during, and after root canal treatment: a systematic review. J Endod. 2011;37(4):429-38.
さてここから私が病気で倒れたため4年の時間が経過していた。
久々の経過観察であったが、問題は全くなかった。
PAを撮影した。
RCT後 4年経過時(2022.4.27)
根尖病変はない。
ということで4年経過時の経過観察は終了した。
次回は来年4月に再度Recallを行う予定です。
また皆さんにもご報告いたします。