紹介患者さんの経過観察。
紹介されたのは2017.11.18。
主訴は
左上の鼻のつけねを押さえると痛い
であった。
歯内療法学的検査は以下になる。
#11 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#12 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(++), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#13 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
根尖部を綿棒で押さえると痛みを訴えていた。
その痛みが主訴と一致していた。
これは治療により問題が解決できるかもしれない。
PAは以下になる。
#12の根尖部に大きな病変が確認できる。これが痛みに関係があろうと推測される。
診断は以下になった。
#12 Pulp Dx: Previously treated, Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis, Recommended Tx: Re-RCT+Core build up with Fiber Post
治療は外科でなく再根管治療を提案した。
PAより術前の根管形成が満足にできていないからである。
患者さんは治療に同意されて再根管治療となった。
Re-RCT+Core build up with Fiber Post(2017.11.25)
以下のように治療を行なった。
☆以下、治療画像が掲載されます。不快感を感じる方は」Skipしてください。
クラウンの下にはメタルポストコアが顔を出してきた。
除去の準備をしてVP-tipを当てて除去を行なった。
程なく、メタルポストコアは除去された。
すると以下のような形状の歯牙が顔を出してきた。
さて、この上顎の6番に似たような形態は一体なんだろうか?
論文をレビューしてみると以下のような事実に気がつくだろう。
Vertucci 1979 Root canal morphology of the maxillary first premolar
この文献からわかる事実として、3根管の状態が上顎第1小臼歯の5%あることがわかっている。
そう。
この歯は3根の小臼歯だったのだ。
んなもの、CBCTとればわかるだろう!というそこのあなた。
はい。その通りです。
しかし当時の(2017年当時の私)私はまだ、
”過度な被曝は患者利益を損ねる!”
とか信じていた時代だったのだろう。
今(2022年の私)なら無条件でCBCTの撮影を依頼する案件だ。
3根管とも尖通して根管充填した。
この後、サンドブラストし、ファイバーポストを用いてレジンで築造して再根管治療は終了した。
PAは以下になる。
さて、この後は#12-13-14-15のFPDを装着するために治療内容に問題があった#13,15もRe-RCTとなりかかりつけ医がFPDを装着した。
その後、私は倒れてしまい予後を見れなくなってしまった。
が、この患者さんに連絡をかかりつけ医にとってもらうように話すと患者さんから連絡が来た。
実に5年ぶりの経過観察である。
#12,13,15 5yr Recall(2022.6.20)
この時、いかなる臨床症状も消失していた。
初診時にあった強い圧痛は無くなっていたのである。
PAを撮影した。
病変が本当に消失したかどうか?はCBCTを撮影しないとわからない。
が、この患者さんの主訴は5年経過して消失していた。
もしCBCTを撮影して根尖病変が残っていたとしても、”Healing”ということができる。
患者さんには、再度連絡してCBCTを撮影していただくように伝えようと思う。
ということで5年ぶりの経過観察の幕が閉じた。