他院から紹介の患者さん。
初診日は2022.5.20である。
主訴は
左上臼歯部の歯髄保存(神経近くまで虫歯が進んでいるとの診断を受けているので神経を保護したいと思っている)
であった。
歯内療法学的検査は以下になる。
#13 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#14 Cold+8/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
PAは以下になる。
CBCTは以下になる。
MBに関して分析した。
MBは1根管と思われる。
ここがおそらく露髄した(しかけた?)のだろう。
次がDB, P。
DB
DBは石灰化が進んでいるような感じがする。
根管が見つからないかもしれない。
が、根尖病変がないのでそれほど気にすることでもないだろう。
最後にP根である。
P
ここは歯髄は簡単に見つかるだろう。
歯髄を保存してその歯が失活すると、
①根管の石灰化
②根尖病変の出現の可能性
③外科治療しにくい部分に根尖病変が発現するとマネージメントが困難
という臨床的特徴が出てしまう。
また、断髄を行うとその成功率は若年者では高いが、
成人では研究がないのでわからない。
先がどうなるかよくわからない治療を私は患者さんに薦めることはできない。そしてどうかなった時には、かなり大掛かりな治療になるだろう。
このことを治療前にお話しした。
詳細は今年のBasic Course 2022で再度ご説明する。
最後に、歯内療法学的診断は以下になる。
#14 Pulp Dx: Asymptomatic irreversible pulpitis, Periapical Dx: Normal, Recommended Tx: RCT+Core build up
ということで、患者さんは私の説明に納得し、後日別日に根管治療へと移行した。
RCT+Core build up(2022.7.5)
☆この後、臨床的な画像が出てきます。気分を害される方は飛ばしてください。
歯牙に穴を開けてチャンバーオープンした。
最近、いわゆるほとんど歯に穴を開けない方法が流行って?いる。
が、穴を大きく開けても、小さい穴しか開けなくても破折の強度は変わらない。
ということで、心配することはないのである。
さて露髄するとどうなったか?だが、露髄したP根からは暗赤色の出血が見られた。
それが止まれば生活歯髄療法は成功するだろうか?私にはそうは思えない。
また、MBはこの段階では発見できていない。
DBも然りだ。
このことからももはや歯髄は保存する段階になかったということがわかるのである。
そうつまり。。。
生活歯髄療法は術中の歯髄の状態に左右される治療方法
なのだ。
そして、術前の患者の年齢が大きな意味を持つ。
もちろん、それに該当しない時(老年者なのに歯髄がでかい時)もあるだろう。
が、そうした例は稀な例である。
老年者でもうまく行くというのは怪しい話だ。
歯髄は年齢とともに黄昏れるので、黄昏た歯髄に生活力は期待できない。
ということでChamber Openを進めて行き作業長などを測定して行った。
P根のみ#60.02まで形成し、その他の根管は#50.03で終了している。
そして形成サイズよりワンサイズ小さいGutta Percha Pointを用いてBC sealerで根管充填している。
ポイント試適は以下である。
歯牙が長いのでPAをこの段階から縦に撮影している。
問題がないと判断し、根管充填した。
根尖病変もない抜髄治療なので問題がないと判断している。
補綴は急いで行なってもいいし、時間を置いてもどちらでもいいだろう。
ということで1回法で歯内療法処置は終了した。
以下、患者さんの感想。
今日はありがとうございました。
神経抜いたら、歯質はなくなるのが、ここ30年は普通かと思ってましたが、先生はさすがです、凄いです。
今後、無いに越したことはありませんが、身近な人にも歯に問題あったら、先生を薦めたいとおもいます。
今後ともよろしくお願いいたします。
ということで1回法の治療は終了した。
術前にCBCTがありきちんと分析し、
治療に対する十分な時間を確保し、
適切な道具を用いて感染に配慮して根管治療を行えば(ここが一番難しい?)、
このように1回法で終了することができる。
このブログを読んでいる、歯科医師のあなた。
あなたもこのような術式を是非手に入れましょう。
そして、それを保険診療ではなく自由診療で行うのです。
その際の目安は抜去歯牙の根管充填までに何分かかるか?です。
30~40分で終了すればあなたは1回法で終えることができるでしょう。
そうすればあなたの歯科医院の収入は変わるでしょう。
今は練習でも必ず夜は明けます。
がんばって前に進んでいきましょう。
そのような気持ちの強い歯科医師の先生の見学を私はいつでもお待ちしています。
そのための新しいプロジェクトも前へ進めていくことになりました。(詳細はいずれお話しします。)
ということで、次回は半年後となりました。
また御報告いたします。