以前も紹介した患者さんの治療の続き。
矯正治療中からずっと痛い右上奥歯…なぜ??〜#3 RCT+Core build up
に詳しくは記載しているが、
#2がCold++1/1であること、
また得られたCBCTから以下のように覆髄がなされていることから
#2
Pulp Dx: Asymptomatic Irreversible Pulpitis
Periapical Dx: Chronic apical abscess
として根管治療を進めていた。
この日はその治療となった。
#2 RCT+Core Build up(2022.8.27)
☆以下、治療の動画が出てきます。不快に感じる方はSkipしてください。
この日はDentsply社から
ProTaper Ultimate
の提供があったために、この器具を使用して治療している。
原点回帰だ。
治療内容は以下になる。
Single Pointで根充するためアンダー気味でも問題がない。
時代が変わった。
あの細々しい根管充填は過去のことだ。
新しい時代へと踏み出そう。
Gutta Percha Pointを試適した。
問題ないと判断し、Single Pointで根管充填した。
支台築造し、PAを撮影した。
このまま印象して最終補綴へ移行しても構わないし、半年待ってもいいだろう。
かかりつけ医にお任せすることにした。
次回は半年後である。
CBCTとともにまた結果をお伝えしたい。
さてここでこの新商品、ProTaper Ultimateに対して私が感じた感想を書こう。
①術式が煩雑で洗浄、リキャピチュレーション(ペーテンシーファイル)が頻繁に必要
最終File(#30.09V)までNi-Ti Fileを6本使用する必要がある。
煩雑だ。
HyFlex EDMだと最多で4本で済む。
簡単な根管であれば2本で終了するだろう。
実にすっきりしている。
②最大、#30.09までしか拡大できない(感染根管には不向き?or Minimum Preparation File?)。#30以上だと、使用するファイルのテーパーがデカすぎて、どう使用していいか?不明。また歯根破折に対する不安もあるので結局、#30.09までしか拡大できない。
#30以上の根管形成が必要な場合は以下の特殊なファイルで形成することになる。
#35.12v, #50.10vで形成をしなければならない。
そんな根管が果たしてあるだろうか?
前歯の再治療かRegenerationを諦めた(知らない)歯科医師による前歯の根管治療くらいしかないだろう。
私の臨床でこれが必要な局面が浮かんでこない。
③Fileの”色”と実際のサイズに誤差(Slider 紫なのに#16, Shaper 白なのに#20)がある
④UltimateのSXは従来のGoldのSXに比べて、デカくて長くて根管に挿入しずらい(ProTaper Goldの方がBetterと思われる)
ここまでが残念な点である。
いい点は以下になる。
⑤Minimum Preparationを行う際の最低限のサイズ(#30.06)以上に到達できるので歯質の削除量を極力少なく根管形成できる(Smaller Prep可能)
⑥最終号数のテーパーが大きいので既製のGutta Percha Point(#30.06, #30.04)で根充が可能
⑦1本1本が滅菌された構造になっているので術後感染等を気にせず根管治療に集中できる(HyFlex EDMと同じ設計)
⑧米国では既に販売済みのAH Plus Bioceramic sealerを用いて根管充填すればかなり容易に根管充填まで可能
この先端の細い?チップを使用するのがもったいなので、某社安いチップをつけてやってみたが充填可能であった。
私ならその会社のチップを買って根管充填するだろう。いつか時間がるときにセミナー等で紹介したい。
ということでいい点も悪い点もあるProTaper Ultimateを使用するのはInitial RCTのみだろう。
アメリカならいざ知らず、ここは再治療王国日本である。
それが何を意味するかははっきり言及しないがそういうファイルであるという認識が必要だろう。
以上、この商品の解説をしてみた。
皆さんの参考になれば幸いである。