非常勤歯科医師の治療についてどうなのか?と聞かれることがある。

しかし、彼らがどういう経歴でどうこうという話をするよりも、症例を出して報告すれば皆さんがそれをみて理解できるだろと考えたので、これからは勤務医の先生の歯科治療もブログ、勤務医の先生の治療の成功率のコーナーを作成し、ホームページに掲載することにしました。今日と明日は勤務医の症例を提示したいと思う。

当歯科医院に受診を考えている方は、近々公開されるそれらのページも参考にしてみてください。


まず今日は一人のの非常勤の先生の治療の報告を行おうと思う。

海外留学を目指す橘先生の治療である。

#30のRe-RCTだ。

患者さんは他院からの治療依頼の患者さんで外国籍の方である。

主訴は

10年以上前に日本で治療した。その際治療に3ヶ月以上かかり痛みもあって大変だった。1回で終わるのであればここで治療したい。

であった。

3ヶ月以上かかる根管治療とは一体なんだろうか?

難しい根管が存在するのだろうか?

歯内療法学的診査が行われた。

術前・歯内療法学的検査(2022.10.20)

#29 Cold+5/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#30 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。

術前PA(2022.10.20)

このどこが難しい根管なのだろうか?

私には意味がわからない。

何度でも言うが、難しいと考えるのであればこう言う歯科医院に紹介すべきだろう。

話は変わるが…

デンタルについてである。

その質の問題であるが、

偏心撮影は一応できているが…根尖部があまり映っていない。これではPAを撮影したことにならない。再度のやり直しを指示した。

撮影をやり直した。以下になる。

今度はうまく撮れている。

が、可能であればクラウンを除去する前にこうした偏心撮影をするべきである。

が、患者さんが口腔庭にフィルムが圧迫されて痛いということで麻酔をしてからの撮影でこの形になってしまった。

が、言い訳である。

絵が違うので同業者は混乱するだろう。

これは次回からの反省点だ。

また、かかりつけ医からはCBCTもいただいていた。

以下になる。

初診時CBCT(2022.10.20)

MB

Mの根尖部には大きな根尖病変がある。

なお、根尖病巣ではない。

病巣という言葉にある意味はそこに病気の原因があるという意味である。

確かに根尖孔外細菌感染の可能性はあるものの、一般的ではないのでその呼び方は適していない。

ML

MLは穿通しなかったようだ。

ここが穿通するかどうか?は治癒に影響を与えると思われる。

なにせ、MLがストレートでMBが湾曲しているという事実を根管治療に反映させたいがそれが叶うかどうか?だ。

D

Dの根尖部にも根尖病変がある。

ここも尖通が必要であるが、形成が全くできていないので修正は可能であろう。

ということで、恐らく再根管治療の適応症でうまくいかなかったらApicoectomyへ移行する形になるだろう。

歯内療法学的診断は以下になる。

#30

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

Previously Treatedといいながら、ほとんどPreviously Initiated Therapyのような根管治療である。

治療では気をつけなければならないことが色々あるだろう。

が、この再根管治療の成功率は90%と一般的に高い。

ということで患者さんは治療計画に同意され、再根管治療が行われた。

鍵はMBまたはMLが尖通するか?である。


Re-RCT① Gutta Percha除去(2022.11.11)

☆以下、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は試聴をお控えください。

Re-RCTでの最大の時間の節約はどういう武器を持っているか?である。

そしてどう治療を進めていくか?意思決定していくことだ。

ここが流れるように決まればそれほど時間をかけずに治療ができる。

非常勤の彼はレシプロでGutta Perchaを除去していた。

Gutta Perchaをあらかた除去して作業長を測定する。

これをML, MBにも行った。

が、MLが穿通しない…

そこでMBへと治療する根管を変更した。

するとMBは尖通した。

またこの後MLも根尖部のGutta Perchaを除去すると残存していたGutta Perchaが取れてMBとMLの合流が確認できたという。

その動画だが…肝心な部分が撮影できていない。

まだ彼はうちのマイクロスコープ(Carl Zeissのマイクロ)のシステムに慣れる必要があるだろう。

ということで治療内容は以下である。

ポイント試適した。

MBにMLが合流していたというパターンで形成している。

問題ないと判断し、BC sealerで根管充填し支台築造した。

最後に確認でPAを撮影した。

1回法で再根管治療は終了した。

患者さんは1回で終わったという事実に驚愕して大喜びしていた。

今までの治療がなんだったんだろう!とお話しされていた。

次回は半年後である。

その際には再度、CBCTを撮影し状況を確認したい。


この治療で彼は彼の治療を支持してくれるファンを一人作ったかもしれない。

私が尊敬してやまない元プロレスラー天龍源一郎は

“たとえ地方会場でお客が少なくても、一生懸命試合をすれば次その会場に来た時にもっと多くの観客が詰め掛けるかもしれない…だから地方でも手を抜かずに戦う”

とかつて言っていたが、彼はその人のようになれるだろうか?

晴れない雨は無いのだから…

未来と夢に向かって頑張れ!