他院から紹介患者(小児)の治療。

初診は2021.12.14。

主訴は

生えてきたばかりの永久歯に虫歯ができた。痛みがひどくて子供が夜も寝れない

という。

子供の主訴というよりは母親の主訴だ。

このように小児歯科とは、主訴が親が持つことが多い。

子供はそれほど重要視していない。

それはそうだ。患者は当時10歳の子供(男児)である。

歯が死ぬほど大事だ!とか思うわけないだろう。

普通に生活していてこういう状態だ。

このことから、非協力が想像される。

多くの人から、貴方は子供の治療もするのか?とよく聞かれる。

が、私はもちろんしている。

子供の治療はUSC時代、PIDO Timeとして週1必ず配当されていた。

そこで随分と鍛えられた。

今日のブログのテーマは今年?北欧歯科との生活歯髄療法のセミナーのテーマに通ずる話である。

非常に重要だ。

(とどれくらいの人が感じるか?私は知らないが)

まず事実としてここに記載しよう。

アメリカでは生活歯髄療法は小児にしか行わない。

成人で行うことはない。

行うとしたら…かなり稀なケースであろう。

しかし米国で大人の患者が歯が痛くて

”俺の神経を残してくれ。No RCT!!”

などと騒ぐことはない。

騒いでいるのは日本人くらいだ。

その治療の欠点としては

①PAやCBCTでのみ、歯の生活性を判断する必要性

②断髄するとAδ繊維がないのでCold testに反応しなくなる

③根管の石灰化が進む

という問題がある。

問題が起きて根尖病変ができれば…Apicoectomyは避けられないだろう。

と考えるとそこまでいい治療方法なのか?と私はいつも思う。

が、そんな治療がまつうら歯科医院でも行われた。

その時間経過をリポートする。


初診時歯内療法学的検査(2021.12.14)

#19 Cold++1/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#30 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#19は冷水痛に激しく反応(もしくは子供だから?)、打診痛も咬合痛もある。

口腔内写真は以下になる。

エナメル質形成不全に#19はやられてしまったのだろう。

#30も気をつける必要がある。

しかし…彼はこの時10歳である。

親の責任か?と言われればこの子の親は乳歯が抜けてその隣の乳歯(第1大臼歯である)にも虫歯か残っていると思っていただけだとという。

すると痛みが出て、紹介元の歯科医院がいやこれは永久歯だから大変だ!ということで、まつうら歯科医院に紹介になったのである。

困った。。。

PAを撮影した。

初診時 PA(2021.12.14)

露髄寸前の永久歯である。

頭が痛い。

ということで診断は以下である。

歯内療法学的診断(2021.12.14)

#19

Pulp Dx: Symptomatic Irreversible Pulpitis

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Vital Pulp Therapy(Cvek/Full Pulpotomy)

私は治療方法をPulpotomyを選択した。

理由は…この状況でIndirect Pulp Cappingができるだろうか?

自発痛もある日があるという状態である。

それを行えば…この小児患者はまたうちに来ることになるだろう。

それではかわいそうである。

なんとか1回で終わってあげたい、しかもなるべく短時間にとなれば私は

Full Pulpotomyを行うしかないだろう

と考えていた。

子供の母親にそれを告げて治療は開始された。


Vital Pulp Therapy(2021.12.14)

治療を行うには麻酔が必要である。

さてあなたはどんな麻酔をするだろうか?

私は…

USC時代似たような患者で子供(女児)に伝達麻酔をしろと南アフリカ出身の中国系のEndodontistである、Dr.Cheinに指示された。

が、

日本では子供にはおろか大人にも伝達麻酔などしたことがない…

そこで私は

子供に伝達麻酔をしていいのか?と質問した。

すると…

”(爆笑されながら)伝達麻酔をしないんだったら何するの?”と言われてしまう…

そして、

”あそこ(衛生士科)に日系人がいるから彼女に聞いてきなさい”

と言われ、私は日系人の歯科衛生士に習うことになるのだ。。。

これが私の再デビュー戦である。。。

この時彼女は私に、

①カートリッジをどこに置くのか?

②何本まで麻酔が可能なのか?は体重で決まる

③伝達麻酔だけでは痛みが取れない可能性が高い。その時どうするか?

などを教えてくれた。

伝達麻酔は無敵だ!と思っている貴方。

無敵じゃないんですよ…

人間とは無力なものです。

詳細を知りたい方はAdvanced Courseでお待ちしています。

ということでこの子供にも伝達麻酔をしようとするのだが…

案の定、号泣であった。。。

私まで悲しくなってくるがうちの歯科医院は患者がほとんどいないのでそこは問題はない…(1日の患者数を多く設定した方がいいだろうか?汗)

なんとか宥めて伝達麻酔を行った。

その後、頬側にも浸潤麻酔を行い断髄の準備を行う。

ということで治療に移行したが、以下のようなPAになった。

#19 Full Pulpotomy後(2022.1.14)

Full PulpotomyをBiodentineを用いて行った。

Biodentineを咬合面まで充填している。

この上のPAの歯髄より上の充填物は全てBiodentineである。

さてここからの時間経過を報告する。

根尖部が閉じれば私の勝ちだ。

#19 Full Pulpotomy後 6M recall(2022.8.16)

根尖はだいぶ閉じつつある。

順調な経過である。

Cold testには反応しないがなぜか手が上がる。

これは完全に恐怖に対する偽陽性であろうと思われる。

ここからさらに半年経過した。

#19 Full Pulpotomy 1yr recall(2022.12.24)

根尖部はめでたく閉鎖した。

Cold testには反応しなかった。

ようやく歯科医院に慣れたのか?生活性は回復しなかったのか?は私にはわからない。

が、問題は解決された。

その模様を時間経過とともに比較してみた。

根尖部は閉鎖している。

この状況であれば、Biodentineを削って印象しても構わないだろう。

間接法でレジン修復をしてもらう予定である。

子供の歯にセラミックは…不可能だ。

また、なるべく長く経過を見る必要があることも伝えた。

こうならないように、このブログをみている親御さん、子供の虫歯には気をつけましょう。

そして多くの歯科医師の方へ。

こうした治療は小児でしかできません。歯根が完成している成人での適用は無理なのです。

いや、俺なら高い顕微鏡があるからできるから!という人はアメリカでは相手にされません。

そんな生やさしいものではないし、そういう問題ではないからです。

もっと詳細を知りたい貴方は…

今年、北欧歯科と共催予定の生活歯髄療法の公開セミナーに参加してください。

よろしくお願い致します。


Warning: Undefined variable $post in /home/r3671677/public_html/fukuoka-endodontics.com/wp-content/themes/newsup/inc/ansar/hooks/hook-index-main.php on line 117