紹介患者さんの治療。

主訴は

矯正治療が終了したが、根管に問題がある部分があり、そこの治療をしたい

であった。

歯内療法学的検査(2023.2.7)

#27 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#29 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(+1)

#30 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(+1)

#31 Cold+4/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#29,30は他の歯と比べると動揺が若干あった。根尖病変の影響だろうか?それとも矯正の影響か?

私にはわからない。

☆検査動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


ということで、PAを注視する必要がある。

PA(2023.2.7)

#29,30に根尖部に問題がある歯がある。

これがMobilityの原因かもしれない。

が、私にはその動揺を元に戻すことは歯内療法の成功でしか寄与できない。

CTも撮影していた。

CBCT(2023.2.7)

根尖病変が#29,30には見える。

#31も見えるが、Coldに反応しているし深い修復物もないのでここは治療は不要だろう。

この歯で最大の問題は、

どうやって

このパラレルなメタルポストコアを外すか?

だろう。

論文に従えば、このメタルポストは除去が著しく難しいはずだ。

しかし、根管治療は異常に容易だ。

つまり、

この再根管治療に費やさせる時間のほとんどはメタルポストコア除去になるだろう。再根管治療は容易で時間はほとんどかからない

ことが治療する前からわかる。

私はそれを患者さんに治療前に伝えた。


歯内療法学的診断(2023.2.7)

#29

Pulp Dx: Previously treated

Peripaical Dx: Asymptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

推奨される治療は再根管治療である。

ということ同日、治療へ移行した。


#29 Re-RCT(2023.2.7)

口角が異常に硬く相当治療がやりにくい患者さんである。

下記の動画でもそれを理解することができるだろう。

しかも口がほとんど開かない。

これでは治療がかなりやりづらくなる。

難症例と言える。

#29はクラウンの除去後にメタルポストコアの除去が待っている。

ここでの注意点は

#29はMobility(+1)なので、歯が動いているのか?メタルポストが除去しかかっているか?の判断が難しい

というところである。

最大のポイントは上記動画の1:01~の部分だろう。

このように

一瞬注水をstopしてVPチップを当ててメタルポストに当てて、メタルが外れそうなのか?否かを確認

しなければならない。

するとこの歯のメタルポストコアは除去できると私は踏んだので、その後外すことができたのである。

ここまでくれば…再根管治療は異常に容易だ。

まずはメタルコアをつけていたセメントを除去した。

この時便利な器具がFEEDで売っていることは多くの人が知らないだろう。

Gutta Perchaが見えればあとは容易な治療である。

クロロホルムを根管に入れて穿通を試みた。

この時のコツは、

Fileで穿通を試みる前に鋭い短針で根管を突くこと

である。

そうすると尖通しやすい。

が、この理論にエビデンスはない。

その後、C+ Fileの#10で穿通した。

RIL=14.5mmでApical Foramenの位置で穿通し、作業長は0.5mm引いて14.0mmであった。

#25.V, #40.04まで形成し、#35.04で根管充填している。

私がなぜHyFlex EDMを愛用しているか?わかるだろうか??

たった2本で根管形成が終了するのである。

こんな便利な道具をなぜみんなが使用しないのか?私にはわからない。

根管形成時のコツはReference Pointにラバーストップがきちんと触れているか?顕微鏡で直視すること

である。

ということで最後、ヒポクロを浸して超音波をかけて、ペーパーポイントでそれを吸い取り、EDTAを入れて1分時間を置いている。

最後に再びヒポクロを根管に注入し、#10 K FileでPatency Fileをして根充前の準備は整った。

なおこの時に、

ヒポクロの中にGutta Perchaを1分間入れておくのも重要だ。

Gutta Perchaも汚れているからである。

所定の位置(Reference Point)までGutta Perchaを挿入し、BC sealerを入れて根管充填した。


この歯にはファイバーポストを挿入し支台築造する予定であったので作業長から5mm引いた長さが担保されているかどうか、BLコンデンサーにラバーストップをつけて確認している。

細かいようだがこうした作業も重要だ。

なぜか?と言えば、うまくいかなかった場合には外科治療になるからである。

ということで支台築造し再根管治療は終了した。

最後にPAを撮影した。

シーラーパフも確認ができる。問題ないと判断した。

これで再根管治療は終了である。

さて。

今回のブログで分かったことであるが、

再根管治療はこのようにそのほとんどが根管形成前までの処置に費やされる。

つまり、

勝てる見込みがないとこうした治療をやっても無意味である

ということがわかる。

動画をCheckするとこの治療に費やした時間は合計で71分で終了しているが、その中で再根管治療以外に費やされた時間は60分である。

根管治療は11分しかかかっていない。

非常にEasyな治療だが再根管治療はこのように様々な道具を使用して行う治療である。

様々な道具の準備無くして再根管治療はできない

のである。

ではそうした再根管治療ができないのであれば、ApicoectomyやIntentional Replantationを行うのか?と言えばそれも憚られるのであろう。

患者が歯牙を残すことを強く望んでいるのであれば、あなたは誰か近くの歯内療法専門の歯科医院に紹介することが必要である。

自分で責任を抱えて抜歯してしまうことほど愚かなことはないからだ。

ということで、この患者さんは、次回に#30のRe-RCTを行う。

その模様はまた次回以降にお伝えいたします。

少々お待ちください。


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