紹介患者さんの治療。

主訴は

下の前歯、ブリッジ部分の右端(10年以上前に治療している)の歯について。歯茎が2週間前から腫れている。昨夜、夕食時に熱いものを食べるとしみた。歯磨きすると出血する。以前から時折調子が悪い

であった。

歯内療法学的検査(2023.5.2)

#26 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#27 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#28 Cold+8/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#26~27にかけてSinus tractが見られた。

これが主訴である。

以下、検査動画を示す。

Sinus tractは#26の舌側に存在する。

根尖病変がかなりでかいのだろうか?

それとも破折が絡んでいるのだろうか?

PAを撮影した。

PA(2023.5.2)

PAからわかることは…

#26はメタルポストコアを形成しそれを装着しようという最中に穿孔を起こしてしまったのだろう。

もしこの治療をした歯科医師に良心があれば、

穿孔をどうやって封鎖するか?

を考えるのだが、そうした考えがこの患者さんを治療した歯科医師にはなかったのだろう。

この歯を治療した歯科医院名を患者さんは覚えていた。

そう。やった方は覚えていないが、やられた方は覚えている。

当たり前だ。

どんな治療でも、治療は治療なのだから。

#26舌側のSinus tractの原因は医原的なミスである。

こんなことをしでかす仕事をしている職業に尊敬など一生、うまれないだろう。

また、#27は根管形成が全くできていない。

やる気がなかったのだろう。

“なぜこんな低い点数で、根管治療をしないといけないんだ!”

という怒りの声が聞こえてきそうだが、

そうした日本の歯科医師の経済的事情は患者の主訴とは無関係である

ことはいうまでもない。

誰かや制度のせいにするのではなく、やるべきことをちゃんとお前がやれよ!といつも言いたいのだが、

そんなことは誰も相手にはしないのだ。

で、増患セミナーやら接遇セミナーに足繁く通うという悪循環。

この国の歯科医師に尊敬が集まることは未来永劫ないだろう。

まあ私がそんなことを言っても何も変わらないこともよくわかっている。

所詮、なんとかの遠吠えというやつだから。

歯内療法学的診断(2023.5.2)

#26

Pulp Dx: Previously Treated

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: Re-RCT

#27

Pulp Dx: Previously Treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

2本とも再根管治療が必要である。

が、#26は根尖病変がないので穿孔のマネージメントが最重要であると考える。

#27は根尖病変があり、根管形成がほぼ未着手である。したがって、ルールに則った治療を行えば勝算は高い(90%)だろう。

この話は何度もこのブログでしてきた話だ。

ということで、まずは#27のRe-RCTから行った。


☆この後、臨床動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#27 Re-RCT(2023.5.2)

Gutta PerchaをAM File #25で除去し、C-solutionを用いて穿通を図っている。

その際、C+ Fileを#10→8→6と使用しているが…

なかなか穿通しなかった。

これは前歯ではよくあることだと思うが、そういう際は

25mm→31mmに変更

しよう。

もちろん、その際はC+ Fileでなく、K Fileを使用する。

この歯もそうであったが、前歯は長いのでC+ Fileで穿通できない場合が多い。

つまり、

穿通させるには、“この歯のApexまでの長さが長い”ということが最大のポイントだった

のである。

それはそうだ。

下顎の犬歯だから長いに決まっている

のだから。

が、治療中は忘れがちである。

と言うことで

K File 31mm #10で容易に穿通

した。

この後の治療の詳細は以下になる。

#60.02まで形成し、#40.04のGutta Percha Pointで根管充填している。

Single Pointで根管充填し、支台築造した。

PAは以下である。

シーラーパフは若干認められるが…それほど大きくはなかった。

まあ無くはないか…と言うレベルである。

この患者さんは#26のRe-RCTも依頼されていた。この後、再根管治療をしている。

#26 Re-RCT(2023.5.9)

主根管をまず根管充填した。

穿孔部は治療中はBC puttyでブロックしていた。

その後、EDTAで洗浄すると…

穿孔部が顔を出した。

出血を止めるには、水酸化カルシウムで貼薬するか、

90% TCA(Trichloroacetic Acid)

で止血するか?だ。

私は1回法で終了させたいので、90% TCAを用いた。

90% TCAは、日本の歯科業者では販売していないだろう。

が、海外サイトでは購入できる。

このように、私が使用したいもの、必要なものは日本の歯科業者にはほぼないことが多い。

ちなみに米国では、Henry Schineで購入できる。

が、日本では無理だろう。

海外に知り合いや友人がいる人はその人に購入してもらって、日本に送ってもらうしかないだろう。

もしくは、以下の購入先のリンクを貼るのでそこから購入するしかない。

https://www.henryschein.com/us-en/Shopping/ProductDetails.aspx?productid=1124121&CatalogName=B_MEDICAL

TCA, Trichloroacetic Acid, 90%, 2 Dram Vial Peel Solution

マイクロブラシで90% TCAを塗布した。

すると…

速攻で止血が得られた。便利だ、としか言いようがない。

ここをBC puttyで塞いでいき、支台築造していった。

術後のPAは以下である。

#26は不満が出てくるような治療だが、それは患者には関係がない話だ。

また、#22にはへぼい根管充填がなされているが、根尖病変はないのでそのまま補綴へ移行してもらう。

ということで、前歯の治療が終了した。

この続きは、また1年後にお届けしよう。

それまで少々お待ちください。