バイト先での治療。
#29に埋入されたImplant周囲の歯の治療をしたい。咬合痛がある。
と言うのが主訴である。
歯内療法学的検査(2019.10.19)
#28 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#30 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴は再現できた。
患者さんによれば、#28の遠心の#29はImplantで埋入時には#28は生活歯だったと言う。
が、この日のCold Testには反応がない。
このことは歯牙の失活を想像させる。
PA(2019.10.19)
#28は根尖病変がある。
また歯髄に到達しそうな虫歯もできている。
そして#29にはImplantだ。
これは危ない。
CBCTを撮影した。
CBCT(2019.10.19)
確かにこのままだとまずい、ことがCBCTだとよりリアルにわかる。
しかし、下顎の第1小臼歯は非常に難しい根管形態を有する歯である。
Implantを守れるだろうか?
恐らく2根管である。
が、根管形成ができるかどうか?はやってみないとわからない。
石灰化している可能性もある。
治療できればいいが、私は器用な人間でないので全てを攻略できるかはわからない。
しかもここはバイト先だ。
私が自由に時間を使えるわけではないのだ。
歯内療法学的診断(2019.10.19)
Pulp Dx: Pulp Necrosis
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
推奨される治療は根管治療である。
根管充填後 PA(2019.10.19)
ツッコミポイントは以下である。
まず、ラバーダムフレームがPAに思いっきり写っている。
これはレントゲン造影性があるからだ。
このことからも、私はレントゲン造影性がない
Visi-Frame
をお勧めする。
このフレームはUSCでも使用していたやつだ。
非常に使用しやすい。
ラバーを途中で外しても再度装着しやすいと言うのが最大の長所だ。
が、この時代は脳出血から復帰し、器具(基本セット)を取り上げられていた時代なので私は使用することができなかった。
しかしそれ以上に重要なことは、
私はこの2根管(B, L)を見つけたが、両方とも穿通ができなかった
と言う事実である。
このようにCTがあっても、根管形成をApical Foramen-0.5/1.0mmまで確実にできるか?穿通できるのか?と言うのは全く無関係な話
ということがわかるだろう。
が、それでは治癒しないのか?と言うのがそれ以上に重要なところだがこれは誰にもわからない。
シーラーパフもないのでこの根管治療はアメリカで言うところの、
Underfilling+Underextension
と言える。
(Basic Course 2023に出ている先生、この言葉の表現がわかりますか?)
さてここから時間が4年経過した。
この歯は治癒しただろうか?
#28 RCT 4yr recall(2023.5.23)
完全に消失してはいないがかなり縮小している。
ちなみに、術前にあった臨床症状は完全に消失している。
今は何ともないと言う。
CBCTを撮影した。
根尖病変は大幅に縮小していた。
今の所、Implantに害はないだろう。
もし症状が出れば…Apicoectomyで対応する。
ということで治療から4年目のリコールが終了した。
術前、術後は以下である。
と言うことでこの症例は、来年またご紹介しよう。