紹介患者さんの治療。
主訴は
神経の治療をした、右上奥歯でものを噛むと痛い…
であった。
歯内療法学的検査(2023.8.16)
#2 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
主訴が再現できた。
適切な治療を行えば問題が解決される可能性が高い。
が、#3にはジルコニアベースのオールセラミッククラウンが装着されている。
得てして、こうした修復物の直下の根管治療は出鱈目なことが多い。
PAを撮影した。
PA(2023.8.16)
根管治療など、なぜ俺様がやらないといけないのか!
という根管治療である。
ここが…日本国民の意識と歯科医療従事者の意識の最大の違いだろう。
歯科医療の価値を売る方がこの有様では誰もその仕事に尊敬を抱かないし、そういう仕事に就きたいと思う若者はいないだろう。
が、この状況に追い込んだのは他でもない我々、歯科医療従事者自身だ。
適当な治療、独自の歯科理論、保険点数が低いという謎の理屈を並び立てて、正しいことができないといつも遠吠えしている。
そして気づいたら抜歯されてネジが埋入されているというのがこの業界の現状だ。
それなら…
正しいことを正しい方法で(適切な治療費で)やってみては?と思うが、それができないでいる。
また、そのことと国民の歯の健康とはちなみに無関係である。
さておき、話をこのPAに戻そう。
この歯の遠心は…生物学的幅径を侵襲している。
それが可能かどうか?私にはわからないが、クラウンレングスニング等が必要だろう。
また、クラウンの内部にはメタルポストコアが装着されている感じがする。
これはおそらく、除冠が必須だろう。
治療方法としては、
チャンバーオープンして直接内部を確認する方法で行く
ことにした。
さらに、CTで根管内部を精査をした。
CBCT(2023.8.16)
MB
DB
P
P根以外には病変がある。
MB, DBは穿通が必要だ。
これらは、上顎洞底粘膜の肥厚に寄与している可能性が高い。
MB2の存在は…正直分かりかねる。が、その根管の走行具合からして存在はしてそうだ。
が何度も言うように、
それがありそうなことと、実際そのものを発見し、形成できるか?は実際には別問題だ。
探す努力はする必要はあるだろうが、最悪問題が解決しなければApicoectomyを行えばいいのである。
頬側の皮質骨はやや厚いが、それほど難しいことではない。
歯内療法学的診断(2023.8.16)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx:Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT
ということで、同日に再根管治療が行われた。
☆この後、治療動画が出て来ます。気分を害する方は視聴をSkipしてください。
#3 Re-RCT(2023.8.16)
ジルコニアのクラウンに窩洞を形成したが、動画の通りであった。
遠心のマージン部分は生物学的幅径を侵襲しているだろう。
何らかの歯周処置が必要だ。
この後、ラバーダムをかけてメタルポストコアを除去していく。
この動画を見れば、
どうやってメタルポストコアを除去すればいいか?
わかるだろう。
Pathway’s of the Pulpに記載通りの方法だ。
セミナーに行く必要があるのか?とさえ思ってしまう。
このように再根管治療には道具の準備が欠かせない。
Pにはファイバーポストを入れる準備のみ行い、MBとDBのGutta Percha Pointを除去し、作業長を測定し、再根管形成をしていく。
よくあることだが、前医はコロナルフレア形成不足である。
これではファイルが破折しかねない。
SXをこれくらいまで根管内部に挿入する必要があるだろう。
作業内容は以下である。
#25.V→#40.04→#60.02までMB, DB共に再根管形成した。
MB2はMB1とPを結ぶ線よりも近心に存在することが多い。
論文によっては90%も存在すると言われている。
この際も、Munce Discovery Bur(紫)を使用してMB2を探索したが、見つからなかった。
問題が仮にあれば、外科治療(Apicoectomy)で対応する。
この後、#10のK FileでPatancy Fileをし、根管充填へと移行した。
最後にPAを撮影し、確認した。
PA
MB,DBからはシーラーパフが認められた。
緊密な根管充填の証左である。
と言うことで治療は終了した。
次回は半年後である。
またそこで状況を皆さんにお伝えしたい。