紹介患者さんの経過観察。
半年前に再根管治療を行っていた。
当時の主訴は、
根の先に病気があると言われた。歯茎が腫れてそこを押さえると痛い。根管治療をお願いしたい。
であった。
歯内療法学的検査(2023.2.9)
#2 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
主訴が再現されていた。
そして、Sinus tract(+)。
これがあるということは、根尖孔外細菌感染の可能性が出てくる。
つまり…
根管治療だけではマネージメントできないかもしれない。
外科の可能性が出てくる。
これは治療時に患者さんに伝えなければならないだろう。
PA(2023.2.9)
最も簡単な?P根に根管充填材が入っていない。
DBには病変のようなものが見える。
CBCT(2023.2.9)
MB
MB1とMB2は独立している。
根尖病変はなさそうだ。
DB
DBの根尖部に大きな病変がある。
歯槽骨を破って感染は増大している。
これが、Palpation(+)の原因かもしれない。
P
P根の根尖部にも大きな病変がある。
これが、最も頭が痛い。
外科になれば、
口蓋からフラップを開けてApicoectomyを行うか
MB, DBを切断してIntentional Replantationを行うか
の二択になるからだ。
ここの攻略が最も重要と言える。
歯内療法学的診断(2023.2.9)
Pulp Dx:Preveously treated
Periapical Dx:Chronic apical abscess
Recommended Tx: Re-RCT
推奨される治療は再根管治療である。
なぜならば、
①DB根の根管形成・根管充填が甘い&ラバーダムなしでの根管治療の経験、
②口蓋根に大きな病変+不適切な根尖部の根管形成+根管充填があると考えられたため、
再根管治療を提案し、患者さんはそれに同意した。
そしてそれがうまくいかなければ、Apicoectomyへ移行する可能性も伝えている。
ということで、同日に再根管治療が行われた。
☆この後、臨床動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#14 Re-RCT(2023.2.9)
根管形成は以下である。
MB1, MB2は扱っていない。
根尖病変がないからだ。
DB, Pのみに絞って再根管治療をしている。
#60.02まで形成した。
Gutta Percha Pointを試適し、最もReference Pointでしっくりきた#40.04でSingle point法で根管充填している。
根管充填後のPAは以下である。
DB, Pからはシーラーパフが見られた。
緊密な根管充填の証左である。
作業内容ではほぼ穿通か?という感じであったが、事実上その長さで穿通していたのかもしれない。
さて…
ここから半年が経過した。
この患者さんの状況はどうなっているだろうか?
#14 Re-RCT 6M recall(2023.8.31)
治療開始時のPerc.(+), Palpation(+)は消失した。
また、Sinus tractも消失している。
再根管治療が機能したのだ。
PA(2023.8.31)
CBCT(2023.8.31)
MB
DB
P
ということで半年リコールは終了した。
最終補綴治療へ移行しても構わないだろう。
なぜなら、
口蓋根にある根尖病変が消失したからだ。
つまり、
Intentional Replantationの可能性は無くなったからだ。
初診時と比較してみよう。
初診時(2023.2.9)vs 6M recall(2023.8.31)
DBの頬側の皮質骨が回復したため、Palpation(+)が消失したことがわかるだろう。
またそれにより、Sinus tractも消失した。
さらに、最も効果的だったのは、P根の病変がほぼ治癒したことだろう。
なぜならば、
厄介な外科治療(MB,DBのApicoectomy→Intentional ReplantationによるP根の処置)に移行しなくて済んだから
である。
ということで経過観察は終了した。
再根管治療はこのように患者さんにとっては不幸なことではあるけれども、前医の根管形成がうまく行っていなければ奏功する。
ということでこの日のRecallは終了した。
次回はさらに半年後の2024.2に1yr recall予定である。
またその状況はご報告いたします。