紹介患者さんの治療の経過観察。

初診は私が倒れる前の2018.11.20であった。

あれから5年が経過している。

その当時の主訴は、

他院で2年前(つまり2016年)に治療した(修復治療した)、左上奥歯の奥から2番目の歯が痛い…強い痛みで、噛んだ時に特に痛い。ものが触れただけで痛い時もある。修復治療したその医院で相談したが、咬合調整を繰り返されるだけで問題の解決に至らない…

であった。

頭のおかしい奴が来た!と思うだろうか?

私は思わない。

こういう場合は得てして、神経に近い修復治療が行われていることが多い。

歯内療法学的検査(2018.11.20)

#13 Cold NR/20, EPT+31/80, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#14 Cold NR/20, EPT+35/80, Perc.(-), Palp.(+,DBの根尖部分), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#15 Cold NR/20, EPT N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

患歯の#14はColdに無反応だが、EPTに反応している。

これが意味するところは何だろうか?

と言えば、

部分壊死の可能性が高いだろう。

#14はMB, DB, Pの3根管だ。

このうちのどこかは生きていて、どこかは死んでいる可能性が高いだろう。

なぜこういうことが起きるのか?と言えば、

大きな修復治療だ。

大きな修復治療をすれば歯牙は損傷を受け、歯が脆くなる傾向に傾く。

このように、

修復治療は決して患者を幸せにしない

ことが多い。

初診時PA(2018.11.20)

偏心撮影で生活歯髄療法を行なった形跡が見える。

それにより成人歯髄がやられてしまったようだ。

そういう意識がないことが非常に恐ろしい…。。。

また、この当時は私は、CTを撮影しなかった時代だ。

今なら…100%撮影している。

もはやそれなしでは歯内療法はやっていけないからだ。

CBCTは、

非外科的歯内療法にも、

外科的歯内療法(Apicoectomy、Intentional Replantation)にも、

役立つからだ。

そして客観的に治癒を判断できる。

このような便利な機器を使用しない手はない、と今は思っている。

それが私がCBCTを導入した理由だ。

が、時既に遅いか?(笑)

歯内療法学的診断(2018.11.20)

Pulp Dx: Pulp Necrosis

Periodical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: RCT

ということで、根管治療に移行した。

根管治療は1回で終了したが、

この後(2019.3)私は倒れてしまい、当時の根管充填のPAは全て取り上げられたので、私の手元にはもはやない。PAの記録は消失したのだ。

そしてそこから復帰開業し、この日に経過観察に来ていただけたのである。

気づけば、5年が経過していた。

#14 RCT 5yr recall(2023.8.30)

まず口腔内を検査した。

歯内療法学的検査

#14 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#15 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

術前にあった、

Palp.(+,DBの根尖部分), BT(+)は完全に消失していた。

患者さんはそのかつての症状の存在すら、忘れていた。

PA

CBCT

MB

DB

P

全く治療した歯に問題はない。

この日で経過観察は終了した。

治療前にクラウンにしたことが今回の悲劇を産んでいるだろう。この患者さんには口腔内に、こういう治療が多々なされている。今後も都度、問題が出るかもしれない。

このことからもわかるように、繰り返すが、いずれにしても、

修復治療で患者は幸せになるのか?という問いに対して私は明確にこう返答する。

修復治療は決して患者を幸せにしないのだ。