紹介患者さんの治療。
主訴は
右下奥歯の痛み。痛くてものが噛めない時がある。自費で治療した歯なのに…。。。
である。
#30はPorcelain Inlayが装着されていた。
紹介先の前の歯科医院で治療したそうだ。
患者に聞いてその歯科医院をネット検索すると、そこはちなみに保険医だ。
が、そこで治療した#30が痛いという。
お金をかけたのに…と患者さんはがっくりしていた。
自費が持ちがいいと言う言葉は何だったのか?とお怒りであった。
#31はちなみにその医院が、根管治療専門の歯科医院に紹介して、根管治療をきちんと行ったそうだ。
そこはどうもないという。
それはそうだ。
その歯科医院は、おそらく、ルールを守った治療をしているのだから。
が、それはとりもなおさず、
歯科医師全員がルールを守った根管治療をすれば、結果はそうなるだけだが。
非外科的な根管治療に海外留学したか否かは関係がないだろう。
“ルール” を守るだけなのだから。
まあそれはともかく、まずは検査を行った。
歯内療法学的検査(2023.9.19)
#28 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(N/A)
#29 Cold+1/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(N/A)
#30 Cold++1/12, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#30に装着されているPorcelain Inlayの歯牙がCold test, Percussion, BT testに強く反応した。
ここが主訴と思われる。
#31には何の陽性反応もなかった。
#28,29にはInlayが装着されているが、なぜか連結されている。したがって、この2歯は動揺度が不明である。
しかし、歯周病の問題もないのに、なぜ連結がなされているのだろうか?
といえば、
面倒臭いから
だろう。
ああ、俺が何で(保険の)メタルインレーを入れないといけないのだ!
と言う呪いの声が聞こえてきそうだ。
こう言う調子だから問診で聞いてみると、
Porcelain Inlayもラバーダムなしで装着された
と言う。
それでは…歯牙には接着しない。
それどころか、プラーク付着装置になってしまっているだろう。
ここから考えられることは…
この方の歯牙はどこも恐ろしい状況に陥っていることが考えられる。
PA(2023.9.19)
#30の近遠心髄角には直覆的な治療をした跡がある。
成人に行っても成功率は高くない。
と何度言ってもそれをやろうとするという。。。
私はもはや何も言うことがない。
また#28,29は連結されている。
#28と#29を連結して、磨けないと歯周病になりますよ!と、どの口が言うのだろうか?
私には意味がわからない。
多くの患者さんへ…
これが日本の歯科医療の現状です。
保険治療すればするほど、歯が悪くなるという。。。
安い治療費に“質”はないのです。
これは当たり前のことです。
当たり前のことをきちんと把握しましょう。
あなたが千円もって、ホテルで鉄板ステーキののフルコースを出せ!と言えますか?迷惑客として排除されるだけです。つまり…安かろう、悪かろうなのです。
こんな当たり前のことがなぜわからないのだろうか?と私はいつも思うが、まあ人にはそれぞれ事情があるから仕方がないのかもしれない。
しかし…
これが治療でなくて、破壊だと言って何が問題だろうか?と私はいつも思う。。。
日本の歯科医療の闇は深い…
CBCT(2023.9.19)
MB
MBの近心付近に直覆を施した形跡がある。
と言うよりも…
この歯にInlayを入れると言う行為が何を意味するだろうか?
と言う発想力がない。
少し削れば…露髄だ。。。
この下顎第一大臼歯近心根は合流していなさそうだ。
ML
MLを中心にして見ても、やはりこの根管は合流していないように見える。
D
M根にも、D根にも根尖病変はない。
抜髄根管治療で成功率は93%だろう。
かなり高い確率でマネージメントができそうだ。
歯内療法学的診断(2023.9.19)
Pulp Dx: Symptomatic irreversible pulpitis
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
と言うことで、同日治療へ移行した。
☆この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#30 RCT(2023.9.19)
D根をSXで拡大すると…血まみれだ。。。
Direct Pulp Cappingの影響がここでも出ている。
次がMLだ。
MLは出血も何もない。
Necrosisの途中だったのだろう。
これがこの患者さんの痛みに寄与していた可能性が高い。
最後がMBだ。
ここも出血はほぼない。
やはり、Pulp Necrosisの過程であったのだろう。
経験的にこの時が一番痛いと思われる。
ここから作業長を測定すると以下になる。
Pulp necrosisであったということも考え、#40.04まで拡大することになった。
その後、#35.04のGutta PerchaでBC sealerとともに、Single pointで根管充填した。
その後、PAを撮影した。
術前のCT読影通りの結果になった。
問題はないと思われる。
次回は半年後である。
またその模様はみなさんに報告したい。