紹介患者さんの治療。

主訴は

歯に吸収があると言われた。矯正をずっとしていたので、抜きたくない。なんとか残せないだろうか?

である。

歯内療法学的検査(2023.7.26)

#2 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Cold+2/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

症状は全くない。

歯髄も正常だ。

抜髄する?理由があるだろうか?

PAを撮影した。

PA(2023.7.26)

#3の遠心〜隣接面にかけて侵襲性外部吸収が見られる。

患者さん曰く、

矯正が長かった

そうだ。

現に今も、下顎前歯舌側にワイヤーが貼られたままである。

これはいつまでつければいいのか?と矯正医に聞くと、

永遠

という絶望的な答えが返ってきたという。

それは本当なのだろうか?私にはわからないが、歯内療法の日米差を見るに恐らくそれはFakeなんだろう?!か、と思ってしまう。

CBCT(2023.7.26)

B

O

吸収の範囲は遠心頬側〜遠心口蓋側と思われる。

そしてラッキーなことに隣接面を超えて吸収が進んでいない。

また、

侵襲性歯頚部外部吸収は歯髄までは到達しない

という特徴がある。

ということは、根管治療後に吸収を片付ければいいとわかる。

が、それを片付けるには従来は

Ca(OH)₂で止血するか, 90% TCAで化学的に焼却する

くらいしか手段がなかった。

90% TCAで止血を図っても正直、出血のマネージメントは従来難しかった。

かといって、Ca(OH)₂で貼薬すると2回法になってしまう…

さてどうしたものだろうか?

もっと効果的な??方法はないだろうか???

言い換えれば、

機械的に、しかも楽に吸収細胞を除去できないだろうか?

と私は常々思っていた。

実はこの治療でそれができたのである。

それは後ほど述べるとしよう。

CTの分析を続けよう。

MB

MBには吸収は及んでいないことがわかる。

また歯根の中央に根管と思しき線が1本のみ見れることから、この根管はMB1しかないことがわかる。

MB2を探す必要性がない。

これは、治療が迅速に進んでいく可能性が高い。

次はDBだ。

DB

DBには吸収が及んでいる。

Pにも及んでいそうだ。

P

P根にも吸収は及んでいる。

ここも処置が必要だ。

が問題は…大概、出血してきてその扱いに困ることが多いという点である。

どのようにそれをマネージメントして吸収を抑え込むことができるだろうか?

歯内療法学的診断(2023.7.26)

Pulp Dx: Normal Pulp Tissues

Periapical Dx: Normal apical tissues

Recommended Tx: RCT+Invasive Cervical Resorption Repair

以上を患者さんに説明し、別日に治療へ移行した。


☆この後、臨床動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#3 RCT+Invasive Cervical Root Resorption Repair(2023.9.8)

まずは根管治療を行なった。

歯髄からは流血がひどい。

術前にPulp Dxは、Normal Pulp Tissuesと予想したにも関わらずである。

この性状から私にはこの歯の歯髄病名が、

Normal Pulp Tissuesではなく、Asymptomatic irreversible pulpitisに思えてしょうがない。

それが実は、“より適した” 歯髄の病名なのかもしれない。

が、それは誰にもわからないが…

なぜか?といえば、吸収は虫歯ではないからだ。

さておき、SXでコロナルフレア形成して、作業長を測定した。

また生活歯髄であるが、Apical Foramenが開いている感じの歯であったため、#60.02まで形成している。

が、P根は形成がオーバーになってしまった。

HyFlex EDMのラバーストップは緩く、それを補うためのDentsplyのラバーストップがここで切れたからだ。

この時点で、シーラーが溢出するリスクが発生する。

WL=RIL-1.0mmに設定したにも関わらずである。

この点の改良をColtenには求めているが、現在も解消されないままである。

MB,DBも#60.02まで形成し、#35.04のGutta Perchaを使用したが、

Pは#60.04,#60.06を試適して、よりReference Pointを再現している#60.04を使用して根管充填をすることにした。

さて。

根管充填ができたので、これで吸収に対応することができる。

吸収はどこにあったか?といえば、

根管治療をした“現場”よりも遠心にある。

そしてそこには骨も存在するだろう。

ということで、

90% TCAとFEEDに掲載されている某・超音波チップ

を使用して骨を削合しつつチャンバーを広げてみた。

この動画の最後をあなたは見ただろうか?

このブルーは象牙質だ。

その象牙質の露出に大いに役立つ器具(超音波チップ)が実は…

FEEDにある。

詳細は、Advanced Course 2023で解説します。

ということで90% TCAで窩洞内を洗浄しながら、出血を追いかけ、窩洞を広げていった。

最終的に全ての出血を抑えることができた。

これは…

非常に有用な道具である。この業界にいる人間は把握した方がいい器具だろう。

窩洞内を清掃した。

出血は完全にない。

ほぼ、吸収をマネージメントできたことになるだろう。

ということで即日、支台築造した。

術後にPAを撮影した。

ということで治療は終了した。

次回は半年後にRecall予定である。

それまで少々お待ちください。