紹介患者さんの治療と経過観察。
当時の主訴は、
根の先に膿が溜まっていると、かかりつけ医で言われたので治療をお願いしたい
であった。
歯内療法学的検査(2022.9.22)
#18 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#19 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#20 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
臨床症状はどこにもない。
初診時PA(2022.9.22)
根尖部付近までの大きな形成と根管充填、
不適合補綴物、
の
歯内療法が失敗する原因が揃っている。
これでは…根尖病変ができてしまうだろう。
問診すれば、
その当時は、担当歯科医師がラバーダムもせずに根管治療をしているという。
これも日本の保険歯科医療の平常運転だ。
初診時CBCT(2022.9.22)
根尖部付近まで及ぶ根管形成と根管充填は外科治療しか選択肢がないことを患者さんに与えてくれる。
ちなみに…#19は他院で(この治療をした歯科医院で)、根管治療をしたという。
が、
ラバーダムは使用していない
そうだ。
そこも分析した。
#19 B
#19 M
#19 D
#19のMには過小な根尖病変?と思しきレントゲン像が目に入る。
遠心は何もない。
この時点ではひとまず安心だ。
診断は以下になる。
歯内療法学的診断(2022.9.22)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Intentional Replantation
治療はIntentional Replantationを提案した。
根尖部まで大きく形成済みだからである。
が、である。
患者さんはIntentional Replantationの提案を拒否した。
理由は、
一回歯を抜いて元の位置に戻すとか、考えただけで気持ち悪いし、私にとって現実的な治療内容ではない
というものであった。
では、再根管治療の成功率はどれくらいか?と言えば、もしこのレントゲンの位置がApical Foramen近くまで根管形成されているとすれば、40%程度しかないだろう。
が、不適合修復物の存在が術前に見て取れる。
この事実は、再根管治療の成功の可能性に期待を寄せることができるかもしれない。
また、そうでなく、Foramenから遠い位置に根管形成+根管充填されているとすれば、成功率は90%程度だ。
40%か90%か…
さあ、どっちだろうか?
と言えば、
再根管形成してみるまではわからない
のである。
治療前に言えることはそれ以外には何もないのだ。
やってみて初めてわかるのである。
ということで患者さんは再根管治療を希望されたので、予定を変更し、再根管治療へ同日移行した。
#18 Re-RCT(2022.12.22)
最後にPAを撮影した。
ここから経過を置くために1年待機した。
この歯の予後はどうなっているだろうか?
#18 Re-RCT 1yr recall(2023.12.1)
ということでここはもう少し経過を見た方がいいだろう。
ところで、#19だが、以下のようになっている。
MB
ML
D
#19の近心根にはできていなかった根尖病変ができている。
なぜか?
ラバーダムなしでの根管治療がその一助になっていることは間違いなさそうだ。
ここは、再根管治療ではなく、歯根端切除術が適した治療になろう。
ということで余計な治療部位が増えてしまった。
これはなぜか?を臨床家はもっと真剣に考慮する必要があるだろう。
審美や機能を追う前に、もっとやることがあるだろう?と思わずにはいられない。
あなたが面倒臭いとか興味ないとかは患者に関係ないからだ。
次回はさらに半年後に経過を見ることになった。
またその模様を報告したい。