バイト先の治療の経過観察。
以下記事の続報である。
当時の主訴は
右側の奥歯で痛くて噛めない…近所の歯科医院で治療したのに。。。
であった。
歯内療法学的検査(2023.1.24)
#30 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
PA(2023.1.24)
CBCT(2023.1.24)
O
分岐部病変が出ている。
ただ、今までの治療歴を考えるとエンドの問題であろう。
M
典型的なMLが直線でMBがそれに合流している。
MLが主根管になるだろう。
根尖病変も見られる。
この部分は穿通必須である。
D
歯内療法学的診断(2023.1.24)
Pulp Dx: Previously initiated therapy
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
#3o RCT PA(2023.1.24)
近遠心ともに合流根管であった。
さて、ここから半年経過した。
術前の痛み(主訴)は改善しただろうか?
#30 RCT 6M recall(2023.7.18)
#30 Cold NR/20, Perc.(±), Palp.(-), BT(±), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
咬合痛や打診痛は消失した。
治療の前が10とすれば今は1,2だという。
しかし、たまに咬合痛や打診痛(自分で歯をトントン叩くと痛い)がするという。
これは治癒不全だろうか?
画像診断へ移行した。
PA(2023.7.18)
根尖部の病変は大幅に縮小している。
シーラーパフが痛みの原因だろうか?
しかし、私はそのような文献を読んだことがない。
誰かそれに関してご存知の方がいれば逆に教えて欲しい。
CBCT(2023.7.18)
MB
咬合面観を見ると、分岐部の歯槽骨の欠損は回復している。
問題はないと思われる。
MLにMBが合流している。
治療でよく再現できていた。
根尖病変もほぼ消失している。
D
遠心も同じようにDLにDBが合流している。
それを根管形成・根管充填で再現できていた。
ここまで行くと、治療の技術的には何の問題がないように感じる。
ここで主訴の咬合痛が消失すれば大万歳だが、患者さんは、
普段はどうもないが、疲れた時に、歯をトントン叩いたり、硬いものを噛むと痛みを感じる時がある
と語っていた。
最終補綴はできるのか?といえばどうだろうか?
何らかの基準が必要だ。
このようなとき、私はAAEの基準を用いている。
ここに書いてあることを日本語に訳すと以下になる。
このガイドラインからすると、患者さんの症状は
Healingの②である。
つまりこの状況は、
好ましくはないものの、外科治療を行うような状況ではない
と思われる。
という説明をして、
1. 最終補綴治療はもう半年延期する(プロビジョナルレストレーションは合着する)
2. 最終補綴を装着して経過観察する(痛みが出るようであれば、補綴を装着したままApicoectomyを行う)
のいずれかであると説明した。
それからさらに半年経過したのがこの日だ。
1年が経過している。
#30 RCT 1yr recall(2024.1.23)
#30 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
半年経過時の違和感は消失していた。
AAEの基準で言うところの
“機能的”
な状態になったのだろう。
最終補綴が装着してある。
また、遠心根にはまだ病変と思しきものが見えるようだ。
CTも撮影した。
ML(B)
MB(B)
D(B)
M(M)
D(M)
O
初診時と比較してみよう。
初診時(2023.1.24)vs 1yr recall(2024.1.23)
状況が大幅に改善していることがわかる。
が、遠心根はまだ時間が必要だろう。
が、分岐部病変は消失している。
私は思うに、世の中のエンドペリオ病変はほとんど、Primary Endoで終わっていることが多いと考える。
歯内療法が適当だからだ。
さておき、次回は1年後である。
また経過をご報告したい。