バイト先での治療。
主訴は、
右下奥歯が痛くてものが噛めなかった。どこの歯科医院に行っても歯が折れているので抜歯と言われたが本当なのだろうか…私は歯を抜きたくない…
であった。
この右下7が患歯である。
メタルクラウンが装着されている。
まず検査を行った。
歯内療法学的検査(2024.1.23)
#30 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#32 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
患歯は#31のようだ。
Sinus tractは最近できたそうだ。
が、押さえても痛みはない。
PA, CBCTを撮影した。
PA(2024.1.23)
何らかの理由で近心根、遠心根ともに、Apex付近まで形成できていない。
CTで詳細を把握した。
CBCT(2024.1.23)
MB
M根の周囲に
J-shaped lesion
がある。
これがどこの歯科医院に行っても、
折れているので抜歯
と言われた理由だろう。
が、歯牙が折れているかどうかは、前から述べているように、その歯を抜かないとわからない。
近心根を3次元的に見てみた。
MBはApex付近で根管充填材が薄くなっている。
力尽きたのだろうか?
ML
MLは石灰化している。
が、根管口部を削れば根管が出てくるかもしれない。
が、MLよりも、MBの方が直線的であるような気がする。
というよりも、
MBかMLかどちらかを主根管にすれば、必ずしも他方を穿通させる、根管形成する必要性がないかもしれない。
なぜ、かもしれないのか?といえば、
人の免疫力、
細菌の毒性、
は個々で違うからである。
これが納得できなない人はうちで治療はできないだろう。
治らなかったら、詐欺だ!となるからだ。
D
遠心根に病変はない。
ということは、この治療の鍵は
MBかMLを尖通させて、根管形成すること
に他ならない。
歯内療法学的診断(2024.1.23)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Chronic apical abscess
Recommended Tx: Re-RCT
ということで、推奨される治療は再根管治療である。
成功率は90%だが、私のように治癒しないかもしれない。
それは、
患者さんの免疫力と、
私がMBかMLを穿通・根管形成できるか?
に左右される。
ということで、別日に治療へ移行した。
⭐︎この後、臨床動画が出てきます。不快に感じる方は視聴をSkipしてください。
#31 Re-RCT(2024.3.26)
MBのGutta Perchaを除去し、HyFlex EDM #10.05を650rpm 0.5Nで根管を突くとCBCTから仮に測定した作業長 15mmまで到達した。
MBのみが尖通した。
MLは根管口らしきものは存在していたが…穿通・根管形成ともに不可能であった。
結局、MBのみをした。
術後にPA、CBCTを撮影した。
MLは根管口さえ見つからなかったが、MBは穿通しApical Foramen-0.5mmの位置まで形成できている。
これで治癒するかどうか?は神様が決めることだ。
また半年後にご報告したい。