以前の記事の続編。

10年以上経過した歯(#31)の再治療〜自分が装着したクラウンが外れることは、歯科医師人生で負けなのだろうか?

10年以上前に、以前の歯科医院で治療した患者さんである。

当時の口腔内写真, 検査, PAの内容は以下である。

その後、再根管治療で以下になる。

その後、安定するが、レジンコアが外れて、歯がないからメタルポストコアがベストと言われ、メタルポストコアを装着しクラウンを修復した。

#31 Re-RCT 9yr recall(2020.12.23)

その後、違和感が強くなる。

そしてさらに1年経過するとこの歯は以下のようになっていた。

#31 Re-RCT 11yr recall(2022.5.11)

PFM Crown, メタルポストコアを除去すると以下のようになっていた。

そう。

内部は、

VRFからリークが起きて虫歯がひどいことになっていた。

患者さんは覚悟していたが大変ショックを受けていた。

補綴医の言うことを聞かなければよかった…と。

経過を診ていた歯科医師には、福岡はおろか、日本でもナンバーワン?wの歯科医院を紹介されたものの、

そのHPの胡散臭さに、怪しい…と感じ、

別の歯科医院(自宅の近所のGPのクリニック)でインプラントをされたそうだ。失われた信頼は取り戻せないのだ。

その後のPAは以下である。

#31 Implant埋入後 PA(2023.6.7)

なおこの歯(#31)以外の再根管治療、ファイバーポスト、クラウン修復はGP時代の私が行なっている。

その際には、ファイバーポストをシラン処理しろとか、内部まで光が届くように道具など使用していなかった。

が、今も機能している。

しかしいつかは脱離するだろう。

所詮レジンだからだ。

そこで患者さんには、歯牙が脱離しかけたら連絡をいただくように申し付けた。

私の考えに近いGPの先生をその際には紹介するだろう。

当たり前だ。

クラウン修復1本できない歯科医師などこの世にいるはずもない。

そんなものは馬鹿か間抜けである。

ということで、また来年も(今年度だが)、患者さんは来られるだろう。

さて。

以上のことから何が学べるだろうか?

私の友人の歯科医師の言葉と共にお送りしよう。


”あなたはメタルポストコアを使用するのか?”と周りにいる知り合いの歯科医師に聞いてみた。

すると、質問した歯科医師は全てGPであったが以下のように回答をくれた。(n=4)


歯科医師A:全部は防げないが、歯牙が割れないようにという観点も(ポストコアを設置する時には)考えてもらいたい

歯科医師B:「歯の生存」であるべきエンドポイントが、「補綴の長期維持」に置き換わっている。補綴ばっかりやってたら脳がそうなるのか、あるいは責任回避ではないだろうか?

歯科医師C:歯頸部歯質が無い場合、フェルール獲得の為に①歯冠延長術のみか②部分矯正で挺出と歯冠延長術を合わせて行う。基本的には①で対応するが、それが出来ない場合にはグラスファイバーの数を増やして接着を頑張る。最近はメタルを使用していない。フェルールがあれば、尚更いらない。

歯科医師D:ポストだが、個人的にはもうメタルポストは10年くらいやっていない。が、私も留学中補綴科のドクターに聞いたところ、ファイバーポストはやっていなかった。というよりレジンコアがかなりまれ、という状況であった。接着を信じてない、ということと、ポストの種類よりも残存歯質量が重要である、という考え方のためであったようだ。レジンコアも大変稀のようで、便宜抜髄くらい歯質が残っていないとしてなかったようだ。蓋をする、くらいの症例のみであった。とは言っても、ここは日本なので、フェルールがないからと言って全て抜歯するわけにもいかない。私は個人的にメタルポストはしないが、やはり残存歯質量が一番大切だとは思っている。

ということで解答を得られた4人の歯科医師が全てメタルポストに否定的な意見であった。



メタルポストコアをはじめとする補綴治療は、患者を幸せにするだろうか?

もう答えは出ているだろう。