紹介患者さんの治療。

主訴は、

3~4年前に治療した左下の奥歯が噛むと痛い。膿が溜まっていると言われた。今は右側メインで咬合している。

であった。

歯内療法学的検査(2024.2.8)

#18 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#19 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(++), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#20 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#19は咬合痛もあるが、圧痛もある。

恐らく…頬側の皮質骨はないだろうと予想できる。

PA, CBCTを撮影した。

PA(2024.2.8)

Apex付近まで太く形成してある。

CBCTを撮影した。

CBCT(2024.2.8)

#19 

M

Mはアンダー根充である。

再根管治療で修正できるかもしれない。

修正できなければ…Apicoectomyだ。

術前検査で#19はPalpation(+)であったが、その理由がここにある気がする。

このようにCBCTは全てを明らかにしてくれる有効なツールでもはや歯内療法にはなくてはならないだろう。

しかし、そのことと、この部分の再根管形成ができるか?は別問題だ。

あくまでも治療のツールにはなるが、治療するのは臨床家だからだ。

もし再根管形成できないと外科になるが…

それほど難しいApicoectomyではないし、再根管治療時にGutta Percha Pointを除去するので、

もし穿通できなくてもGutta Percha Pointではなくて、BC sealerで根充しておけばApicoectomy時の時短になるということもわかる

だろう。

こう言ったところが、臨床上のコツである。

私にとっては、再根管治療で済んだ方が楽だが、患者さんにとっては口を開けなくて済むApicoectomyのほうが楽?かもしれない。

また、今回は依頼されていない#18の近心根にも根尖病変があった。

ここは、かかりつけ医に問題があると報告して治療してもOKであれば、治療へ移行するだろう。

あとで、CBCTを見てみよう。

D

D根に病変はないと思われる。

断層面で見てもない。

Radix

この歯にはRadixもあったが、そこに病変はなさそうだ。

しかし…豪快な形成+根充だ。

あわや、穿孔寸前である。

さて、今回はかかりつけ医から依頼されていない#18の根尖部にも病変があったのでそこも見てみよう。

#18 M

近心根に大きな病変がある。

そして二股の歯根を有する。

これは…Intentional Replantationは無理な案件だ。

再根管治療でも治癒しないくらい大きく形成されている。

ということは…Apicoectomyしかなさそうだろう。

#18 D

#18の遠心には病変はなかった。

近心のみを相手にすればいい。

これは、

頬側のCEJから10mmの位置にApexはあり、

そこを3mm程度、OsteotomyするとApexが顔を出す。

それほど難しい治療内容ではない。

ということで、ここはかかりつけ医に外科治療の了承を得たので、除冠してピンを除去しレジンコアに変化させてから外科治療となった。

ということは、Keyは#19の近心根が満足に形成できるか?どうか?で決まる。

歯内療法学的診断(2024.2.8)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

ということで、同日、Re-RCTへ移行した。


☆この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#19 Re-RCT(2024.2.8)

再根管治療でターゲットになるのは、近心根だ。

ここのGutta Percha Pointを除去していく。

超音波、クロロホルム等を使用してGutta Percha Pointを取り、穿通を試みるが手用ファイルでは無理だった。

そこで、HyFlex EDM #10.05, RaCe EVO#10.04,10.02を使用するが…これでも無理だった。

そうつまり、穿通しなかったのである。

となれば、時間をかけても無駄であるので、近心2根を外科を考慮し、洗浄し、BC sealerで根充しBC Putttyで蓋をした。

ということで、これで外科が決定した。

#18のクラウン、ピンコアを除去し、近心根のGutta Percha Pointを除去し、根充し、レジンコアで築造し、外科治療に備えることになった。

次回は#18 M, #19 MのApicoectomyである。

しかし、7番をApicoectomyできるだろうか?

こういう場合は、口腔内をよく見たほうがいいい。

口腔内を見ると…

下顎前歯が叢生で、臼歯が近心に寄っている

ことがわかる。

つまり…Apicoectomyは可能である。

またその模様はお伝えします。