紹介患者さんの治療。
主訴は、この方には特になく他院の先生から根管治療の継続をお願いされた。
紹介の先生とは紹介時に以下のようなやり取りがあった。
松浦先生
いつもお世話になります。
左下6番の根管治療を当院で行いましたが、どうしても根管口が石灰化していて、見つからなかったため、患者さんを先生に紹介しました。
Pre-op時
歯髄に近接する大きな虫歯が#19の遠心にある。
根管治療が開始されたが、露髄しないという。
CBCTは以下だ。
M根
MBは石灰化、MLも根管の石灰化が進み、トグロを巻いているような根管形態になっている。
D根
この絵からすると、近心根に根尖病変があるように見える。
もし外科になったら、
Gutta Perchaも根管にはないのでそれほど難しい外科治療にはならないだろう。
Easyだ。
私は思うに、
こういう状況判断が歯内療法の結果に影響を与える最大の因子だと思う。
外科を嫌えば、なんとか穿通させようとせざるを得ない。
が、穿通できるかどうかは、やってみないとわからないのである。
穿通できない時、あなたは何度も患者を呼ぶのだろうか?
私はそんなに暇な人ではない。
以下のCaseを参考にしてもらいたい。
遠心根管は近心と比べて容易に発見できそうだ。
近心根も遠心根も、根尖病変はないか、あっても最小だ。
CBCTは根尖病変の検出に関しては、凄まじく威力を発揮するが、
Pope 2014 A comparative investigation of cone-beam computed tomography and periapical radiography in the diagnosis of a healthy periapex
によれば、CBCTで病変が見える歯の実に20%の歯がCold testに反応するという。
つまり、
根尖病変?があっても歯髄が生きている
ということである。
そこを考慮しなければならないだろう。
#19 歯内療法学的検査(2024.2.19)
#19 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#18 Cold+4/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#19が患歯だろう。
初診時PA(2024.2.19)
昔はこれで診断力をつけろ!と言われていたが、今はCBCT一択だ。
正直、この撮影方法が必要なのか?と感じてしまう。
初診時CBCT(2024.2.19)
M
近心根には根尖病変がある。
また、この根管は1根管だ。
もらった資料には根尖病変はわずかにあるか…くらいだったが、
この日のCTにはその存在がはっきりと写っていた。
が、1根管であり、
露髄していないような印象を与える絵である。
穿孔しかかっているが、ギリギリセーフだ。
が、気をつけなければならない。
私であれば、
この充填部と歯質の境目を切削するだろう。
容易に露髄するはずだ。
D
露髄できなかった…とあったが、この遠心の充填もどきを除去すれば容易に露髄するだろう。
そして遠心根も1根管だ。
ここも中心よりも舌側寄りに切削してある。
もっと頬側を狙う必要があるだろう。
歯内療法学的診断(2024.2.19)
Pulp Dx: Previously initiated therapy
Periapical Dx: Asymptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: RCT
と言うことで、治療は、根管治療一択だ。
悪いが、時間は全くかからないだろう。
穿通するかしないかだけの問題だろう。
が、おそらく穿通するだろう。
ということで、同日治療へ移行した。
⭐︎以下、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#19 RCT(2024.2.19)
遠心の謎の充填物を除去すると以下のようにカリエスが顔を出した。
縁下カリエスになっている。
が、着色はあるが硬い感触であった。
ということは、除去はする必要がないというのがアメリカでの教育だった。
無理やり防湿し、隔壁を作成した。
英語では、
Temporary Build up
という。
ここまでに24分要した。
長い…
ここから根管治療に入る。
SXでまず上部を拡大し、C+Fileで穿通させる。
Dをヨシダの RE File #25.07で形成した。
MもPrepするが、作業長まで到達しない…。
HyFlex EDM #20.05に変更した。
M,Dともに#25.Vで形成した。
次に#40.04で形成した。
これをMAFとした。
最終洗浄し、Patency Fileを行った。
ここまでの治療行為を表にすると、以下のようになった。
これで根管充填である。
当該Gutta PerchaをBC sealerとともにSingle Pointで根管充填した。
築造してPA, CBCTを撮影した。
ということで、遠心部分はカリエスが縁下付近まであるので、まずクラウンレングスニングを、その後に、プロビジョナルレストレーションを装着し経過を診てもらうこととなった。
また半年後にその模様をお伝えします。