紹介患者さんの治療。

主訴は、

他院で2年間根管治療をしていた。前歯のずわーんとした痛みが取れない(#7,8で咬合すると痛む)。その医院では違和感を訴えていたが歯軋りが原因と言われ、専門医に診てもらいたくなり、ここをかかりつけ医に紹介してもらった。#7,8は根管治療をしたが今後どうせ悪くなるかもしれないと言われ、硬質レジン前装冠を装着された…

である。

2年間も根管治療…

考えただけでホラーだ。

歯内療法学的検査(2024.7.22)

#6 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#7 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#10 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#11 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

患者さんの主張通り、#7,8,そして#9にも咬合痛と打診痛がある。

ラバーダムを装着しない2年間の根管治療の結果が、これだ。

PA, CBCTを撮影した。

PA(2024.7.22)

全ての前歯が目一杯根管形成されている。

そしてメタルポストコア。

歯牙の寿命がこれでは伸びない。

むしろ縮まる。

CBCT(2024.7.22)

#7

#8

#9

#10

症状がある#8,9,10には根尖病変が大きいものも小さいものもある。

が、

それがどういう大きさであろうが、症状がある歯は治療しなければならない。

ということで、

Apicoectomyをまずこの日に行い、VRFの有無もCheckしてその後に支台築造をやり直す

という治療方がBestであろうと伝えた。

ということで、同日に治療へ移行した。

歯内療法学的診断(2024.7.22)

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Apicoectomy→Core build up with Fiber Post

☆この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#7,8,10 Apicoectomy(2024.7.22)

さて、Flapデザインであるが、2択である。

①#5~12までの広範囲のFlapを開けて(Papilla Base Flap)、#7,8,10をApicoectomyする

利点 特別なし

欠点 広範囲の外科治療, 上顎前歯の治療のため麻酔のコントロールが困難, マージンが下がる(が、レジン前奏冠が装着されているのであまり関係がないだろう)

②#6~10までの角化歯肉に切開を入れて(Submarginal Flap)、#7,8,10をApicoectomyする

利点 治療がしやすくなる, 外科の範囲が狭いので術後の腫脹が少ない可能性

欠点 術後の瘢痕治癒および歯肉の審美的な問題が出る可能性

さて上記の2つの方法の利点・欠点のうちあなたはどちらを取るだろうか?

私はこの2つを外科前に話すが、難しいことは患者さんにはわからない。

端的にいうなら、

早く終わりたいが術後に傷跡が残る切開方法でやるか?時間がかかり広範囲に切開する方法でやるか?の二択を提示するだろう。

患者さんは、

術後に傷跡が残る切開方法でいいので、早く終わりたい

という希望があったため、この処置はSubmarginal Flapで行うことになった。

なお、全ての歯牙の頬側の皮質骨は健全であるので、適応症であると言える。

何のことか、???なあなたは、

Advanced Course 2025

でお待ちしています。

が、あと4人で締め切りになるが…

ということで治療に戻ろう。

Flapを開いたら、歯根の位置を探す必要がある。

術前のCBCTから、

#7のApexは、

 

CEJよりも15mm下方にあり、頬舌的に4mm切断するとApicoectomyが完了することがわかる。

これは、

簡単か?

難しいか?

中間か?

あなたは判断できるだろうか?

判断ができれば、Apicoectomyに慣れた臨床家になるだろう。

Advanced Course 2024に参加している先生はどう考えますか?次回、質問します。

また、

#8のApexは

 

である。

ここの難易度はどうだろうか?

最後に、#9のApexは

 

であることがわかる。

これは、どうだろうか?

治療前に考察するにはもはやCBCTはなくてはならないことがよくわかるだろう。

#7

#8

#9のApexの位置は後ほど検索することにした。

まず、#7からApicoectomyする。

途中から切断面が見えたのはなぜか?わかっただろうか?

次が#8である。

ここは容易に外科治療を進めることができた。

最後が#9である。

ここはCEJよりも16mm先にApexがある。

が、それほど難しくない。

ということで、全ての処置が終了した。

術後にPA, CBCTを撮影した。

#7

#8

#9

問題はないだろう。

最後に縫合して終了した。

この後、除冠して支台築造して現在は以下のような状態である。(他院にてプロビジョナルレストレーション作成時のPAである)

ということで、次回は1年後である。

またその模様をお伝したい。