バイト先での治療。

患者さんは中学生の女児。

4年前(2017.3.6)に以前の私の歯科医院に来院された患者さんである。

その時の主訴は前歯に外傷が加わったが神経を取りたくないというものであった。

歯内療法学的診断は以下になる。

#7 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PAは以下になる。

CBCTは以下のようになる。

#8の根尖は閉じかかっているが、まだ小学生である。しかも女児である。

母親が絶対に神経を取らないといけないのか?という質問をしてきたため、私はRegenerationの話をした。

患者さんはその治療内容に同意したため、Regenerationが行われた。

Regenerationの治療は基本的に2回法である。

1回目が根管洗浄+根管貼薬

2回目が根管洗浄+血液の根管内への導入+MTA(BC puttyを出血の上に置く)という治療内容で、2回目のこの治療には出血を促す治療のためにエピネフリン含有のキシロカインが使えないとされている。

が、それは実はCase reportでたまたまキシロカインを使用してうまくいかなかったのでスキャンドネストを使用しただけのことであるので、それほどエビデンスも高くない。

実際、臨床ではキシロカインで出血を促せることは多い。

が、当時の私は、AAEのガイドラインに従って、2回目の治療にスキャンドネストを用いてRegenerationを行うことにした。

2017.3.17に1回目の治療が行われた。

根管内を洗浄し、水酸化カルシウムで貼薬する。

水酸化カルシウムの貼薬の目安に関しては様々な意見があるが、根管のどれくらいで貼薬を行うのか?貴方はきちんと記憶しているだろうか?

記憶していなければこの治療を患者に施すことができない。

このRegenerationにおける貼薬の話は、

Advanced Course 2021の11月

で講義される予定である。

ということで1回目の治療に問題は起きなかった。

2回目の治療が1ヶ月後に行われた。(2017.4,6)

この治療ではAAEのガイドラインに従い、スキャンドネストを用いて治療を行なったが治療時間のマネージメントが難しい。

すぐに麻酔が切れてしまうからだ。

根管にファイルを入れて出血を促そうとすると知覚が出てしまう。

従ってまたスキャンドネストを足さなければいけない。

が、小児にスキャンドネストは何本まで打てるだろうか?

それを知らなければ子供が事故を起こす可能性が出てくる。

それで子供があの世に行けば、貴方は刑事犯に問われてしまうだろう。

それを避けたいならば、真実を知る必要がある。

真実は2021年9月5日(日)10:00~17:00に博多駅近郊会議室で行われる麻酔の講義で明らかにされる。

私はこの日、スキャンドネストを用いて出血を促したのだが…このPAまでの位置しか出血は上がってこなかった。

そこから1ヶ月後、経過観察が行われた。(2017.5.13)

根尖病変はかなり縮小している。

治療後から3ヶ月後、経過観察が行われた。(2017.7.15)

治療後から7ヶ月後、経過観察が行われた。(2017.11.25)

この時点で根尖病変は消失したと考えられる。

ここで矯正治療の相談があった。当時の私の歯科医院の近所の歯科医院で矯正するということであった。

私は何の問題もないと承諾した。

治療後から10ヶ月後、経過観察が行われた。(2018.2.17)

根尖病変は変わらずない。

Cold testに反応しだした。

矯正治療を行いたいという申し出があったので、近隣ですでに行なっている。

治療後から1年が経過した。(2018.5.12)

矯正治療をしているので根尖病変的な透過像が根尖部に見える。

治療後から1年半が経過した。(2018.11.10)

この際も矯正の影響がPAで確認することができていた。

そしてこの次の経過を見ることにもなっていたが私が倒れたため、経過が見れないでいたがこのバイト先の歯科医院に患者さんが来てくれたのである。それが2021.2.26のことであった。

Recallで2つ驚くべきことが起きていた。

1つは矯正治療を行なったのに、Open BTになっていたということだ。

私がかつてGPの時に経験した通りの結果になっている。

この患者の居住地にもまともに矯正ができる矯正医はいないのだろうか?

私は唯一、福岡で一人だけそれができる先生を知っているが、

その先生に何かが起きたら私はどうすればいいだろうか?

そしてもう1つが私が治療した部分にSinus tractができてしまっているという悲しい事実である。

CBCTをみさせてもらうと、この治療を行なった#8には外部吸収が見られた。

矯正で動かした時にできたのか?元々あったのか?という話になるが、元々のCBCTにはそのような問題はなかった。

ということは、

矯正治療で外部吸収ができてしまった

という話になってくる。

でもだ。

そうなったのならば、なぜこの矯正医は私にそれを報告しないのだろうか?

私が倒れてカタワになったからか?

それともあいつはもう終わったと思ったからか?

ともかく、

女子中学生を、矯正だけして、Open BTで終わらせて、それでいいのだろうか?

私はこれを歯科医療とは呼べないと思う。

広い意味での人体実験、In vivoの研究だと思ってしまう。

こんな人体実験をしてお金をもらうということを私はしたことがないが、患者さんはお気の毒である。

矯正の話も大分したが、今後どのようになさるのか私にはわからない。

が、何れにしても問題を矯正治療を行うことで咬合の問題を抱えてしまったのである。

話はさておき、私はこのSinus tractを有する歯について以下のように説明した。


①根尖病変はない

②外部吸収がある

③ゆえに、根管内から外部吸収ごとBC puttyで埋めてしまう(根管充填をしてしまう)

④口蓋側からレジンで封鎖する


母親が治療計画に同意したため、根管治療が行われた。(2021.2.26)

根管内部を触知したが…MTAセメントはボソボソであった。

外部吸収から供給された水分でボソボソになったのであろう。

外部吸収を90% TCAで止血し、BC puttyで根管充填し、舌側をレジンで充填した。

PAは以下になる。

さてここから時間が半年経過して経過観察をした。(2021.8.12)

口腔内所見は以下のようになった。

Sinus tractは消失していた。

PercussionもPalpationもBT痛もなかった。

正常へと回帰していた。

しかし、今後も問題は起きる可能性はある。

根尖部に問題が起きればApicoectomyを行わなければならないがなるべくそれは避けたい。

そうしたリスクに関する話もしたが、最後にやはり矯正治療をするべきであるという話をさせていただいた。

が、この患者さん(子供)に矯正治療に対する興味がなければそれはすることができない。

しかし、ここまでの状態に矯正医が追い込むとは…

その当人がこれを気にするような人間ではないことも私はよくわかっているが、実に悲しいことである。

歯科医療に対する信頼問題だ。

こうやって信頼は剥がれ落ちていく。

が、もちろんその当人はこんなブログを読むような人間ではないということもよく知っている。

我々の業界に明るい未来はやってくるだろうか?