バイト先での治療。

患者さんは30代女性。

主訴はメンテナンス時にSinus tractを指摘された

痛みなどはない。

さて、Sinus tractが存在していたこの歯であるが、Gutta Percha PointはSinus tractに入らなかった。

感染初期?歯槽骨の吸収がそこまで進行していない?ことが存在することが予想される。

歯内療法学的検査を行った。

#7 Cold+2/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#8 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#9 Cold+1/1, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

PA は以下になる。

#7にも歯髄に近接する修復物が充填されている。

が、歯内療法学的検査の結果はCold+2/4であるので根管治療の適応症になる歯では無い、と言える。

したがって、同部は治療しないと患者さんに説明することにした。

明らかに怪しいのは#8だ。

ここには歯髄に近い充填物が充填されている。これが歯髄の生活性を奪った、といえよう。

以上から以下のような状況であると考えられた。

#8

Pulp Dx: Pulp Necrosis

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: RCT+Core build up

歯牙の変色は若干あったが、患者さんは気にしていないため歯牙漂白はこの治療では行わない。

それよりも大事なのは、Sinus tract があるという事実である。

Sinus tract はどのような特徴があるだろうか?

論文を振り返ってみよう。

Ricucci 2018 Histobacteriologic Conditions of the Apical Root Canal System and Periapical Tissues in Teeth Associated with Sinus Tracts

The prevalence of sinus tracts in teeth with apical periodontitis lesions ranges from 8.5%–18%

They are more common in teeth with large lesions (>5 mm in diameter) and frequently open intraorally on the buccal mucosa.

Sinus tracts are generally associated with longstanding infectious processes.

In a study in monkeys, Valderhaug extirpated the dental pulps and left the teeth open for different time periods. Sinus tracts were observed in teeth that remained open for longer than 100 to 200 days.

まとめると、

大きな根尖病変があり(5mm以上)

長期的な感染があり

罹患率は8.5~18%程度

100~200日以上根管解放すると発生する

ことなどが知られているが、一言で言うと

“長期的な細菌感染がある証左”

であると言える。

つまり、

根管治療では治癒していかない可能性がある。

その際は外科治療が必要になるだろう。

そのことも治療前に患者さんには伝えた。

ということで、#8の根管治療を行うことになった。

2021.11.17のことである。

治療内容は以下になった。

#20で穿通したため、HyFlex EDM の使用は適切では無いと考え、この症例に関してはWaveOne GoldとProTaper Goldを形成に使用した。

具体的には

WaveOne Goldの赤(#25)⇨緑(#35)⇨白(#45)⇨ProTaper Gold F5(#50)を使用して根管形成は終えた。

その後、F5のGutta Percha Pointを試適したら以下のようになった。

若干、アンダー気味である。

したがって、F5からF4に変更した。

PAは以下になる。

F4のGutta Percha Pointの方がより適していると考え、F4+BC Sealer で根管充填することになった。

術前の予想としては、根尖病変があるためおそらくSelaer Puff が起きるだろうということである。

根管充填し、支台築造した。

PAは以下である。

CR充填の不適に関しては、最終補綴治療でクラウン形成する予定であるため除去していない。(その際に修復治療の先生が形成で除去する予定)

側枝にシーラーが入り込んだ部位と入り込んでいかない部位があった。

が、これが治療の予後に影響しないことはRicucciが論文で述べている通りである。

Ricucci 2010 Fate of the Tissue in Lateral Canals and Apical Ramifications in Response to Pathologic Conditions and Treatment Procedures

AAEでPDFがフリーで落とせるようだ。

以下の二つの画像がインパクトがあるだろう。

側枝がありそうなのに、そこが根管充填できていない。

が、根尖病変は治癒している。

側枝も根充で埋めないとダメ!という人は目が覚めるかもしれない。

ではその側枝には根充後、一体何があるのだろうか?といえば、

Necrosisした歯髄と根管充填材のみであった。

全くパッキングなんてできていない。

ということでそこにシーラーが入っているかどうか?はエンド的にはあまり重要では無いのである。

ということで、次回は半年後の来年の5月以降に6M recall で来院される予定である。

この症例を通じて私が学んだことは、

根管形成のサイズとGutta Percha PointのサイズはProTaper でも一致しない

という事実である。

昔の投稿を思い返して欲しい。

HyFlex EDMとC+ File~#14 Re-RCT MB2の攻略と形成サイズとGutta Percha Pointの関係性

ちなみにProTaper GoldのGutta Percha Pointは昔、かなり太かった。

私がUSCにいた時、ProTaper GoldのGutta Percha Pointはなかった。

当初は、DentsplyからProTaper UniversalのGutta Percha Pointを使用するようにと言われていた。

なので私は今でもその時のGutta Percha Pointを持っている。

それが以下になる。

UniversalのGutta Percha Pointの特徴はFileよりも太いという事実である。

これではF2で形成してもF2のGutta Percha Pointは作業長までいかないことが多いだろう。

それに気づいた?Dentsplyは新しいGutta Percha PointをProTaper Gold用に販売し出し、それを買うように勧めてきた。。。

今までのが使えないじゃ無いか…

しかし、外見はProTaper Universalのままである。

でも、中身を見てもらいたい。

今までと太さが違う…

それから程なくして、DentsplyはProTaper GoldのGutta Percha Pointと言われるものを販売するようになった、とUSC時代にランチで盛んに宣伝していた。

この新しいGutta Percha Pointの特徴は形成ファイルと比べてテーパーを落としている、いう点である。

が、Universalの改良版と何も変わっていない…

この二つを比べてみよう。

太さに明らかな差があることがわかるだろう。

アメリカのDentsplyという会社は秘密主義で細かい点を教えてくれない。(日本のDentsplyは多分、違うが)

なのでこのテーパーの印象は見た目で、ということになってしまうが太さが違うことは明らかだろう。

このように歴史を知らなければ根管充填ができなくなってしまう。

それをいいことに先ほどFEEDでProTaper UniversalのGutta Percha Pointを探したが見つからなかった。

多分、もう販売していないだろう。

ということでここまでを理解して治療しなくてもいいのだが、エンドマニア?な方には受けるかもしれない?情報を提供して今日の投稿を閉めようと思う。