2022年、明けましておめでとうございます。

今年もこのブログを中心に症例の経過観察をご報告いたします。

今年もよろしくお願いいたします。

さて。早速本題に入っていこう。

根管治療の経過観察症例の報告である。

当歯科医院での初診は2017.7.3になる。

患者さんの主訴は以下になる。

主訴:右下の奥歯で噛むと痛い

ちなみにこの痛みは2016.10.11から持続しているという。

何でこんなに正確に痛みの日にちを覚えているか?あなたはわかるだろうか??

そう。それは、

痛みで困っているから

である。

決して頭がおかしい患者ではない。

患者さんはあなたが考える以上に真剣に歯のことを考えているのである。

適当な診断や治療は一切許容されないだろう。

ということで、歯内療法学的検査が行われた。(2017.7.3)

#29 Cold+2/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#30 Cold+3/5, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold+2/8, Perc.(-), Palp.(-), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

検査結果と主訴が一致した。治療で解決できる可能性がある。

PAを撮影した。

歯髄に近接する深い修復治療がなされている。

いわゆる、Asymptomatic irreversible pulpitisの可能性が示唆される。

歯内療法学的診断

#31

Pulp Dx: Asymptomatic irreversible pulpitis

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommneded Tx: RCT+Core Build Up

推奨される治療はおそらく根管治療である。

患者さんは痛みに疲れていたようで、治療計画に同意された。

根管治療を開始した。(2017.7.3)

治療内容は以下になる。

チャンバーオープンすると根管内は血まみれであった。

診断が当たっていたのである。

が、それはカルテへの記載のみで当時の動画がない…

返す返すも治療の記録は重要である。

.06テーパーで形成を行い、それよりも小さな.04テーパーで根充している。

テーパーの差を利用した根管充填方法である。

3根管全て穿通した。

また、樋状根であった。

根尖病変はないのでシーラーパフは期待できないだろう。

(と思っていたらシーラーパフがあった。PAでの診断はこのように本当に難しい。)

この当時は、私の愛用ファイルはEdge Evolveだったようである。

が、今はもう全く使用していない。

懐かしいファイルだ。

昔はこの程度の柔軟性でも、おぅ!すごい!!と感動していた。

USC卒業前に、Dr. Rogesにプレゼントしてもらってこの会社を知ることになった。

そして一定期間このファイルを愛用していた。

が、前述したように私はもう使用していない。

なぜこれを使用しなくなったのか?といえば、最も小さいファイルが#17だからである。

根管治療で#17を最初に使用する機会がどれくらいあるだろうか?

おそらく、#15で穿通して作業長を、WL=RIL-1.0mmとした場合だろう。

しかし、以前も説明した通り#15というファイルは非常にでかいファイルである。

なかなかそれで穿通するという機会はないのである。

通常は、KファイルやC+ Fileを#10→#8→#6と使用する。

つまり、このファイルが登場する機会がないのである。

なので時間経過とともにこのファイルは化石になってしまった。

昔はよく使用していたファイル、の中の一つである。

そしてこれも最近某業者から質問されたので皆さんに誤解がないように言えば、

私は決して、

HyFlex EDM押しではない

ということである。

正確には、

今は、

大臼歯などの難しい根管を歯質保存的に治療しようと思えば、

HyFlex EDMが望ましい

と考えているだけである。

誤解をしないようにしていただきたい。

私が推奨するからそれが一番いいのだ!という考えは浅はかすぎる。

みなさんがお気に入りのファイルがあり、それを使用するには理由があるのである。

某メーカーの某ファイルは使用できない!などというつもりはない。

それぞれ使用する理由がある。

例えば、上顎の前歯でHyFlex EDMは使用に耐えないだろう。

なぜか?根管が太いからである。

太い根管に細いHyFlex EDM…どう考えても辻褄が合わない。

またHyFlex EDM #10.05にはそれほど柔軟性がない。

これは時間経過とともに使用しなくなる要因である。

この点で言えば、

白水貿易のRace Evoの#10.04, #10.02の方に軍配があがる。

RaCe Evo #10.04

RaCe Evo #10.02

HyFlex EDM #10.05

白水は意識しているかどうかわからないが、無意識で?HyFlex EDMをこの点に関しては超えている。

私は、

メカニカルグライドパスを制するものはエンドを制する

と考えている。

その点ではこの商品は今の所私には革命である。

これ以上のものが今後出てくるのであろうか?

とかいうと、また私が白水推しだと誤解されるのか…

ちなみに以下のパンフほどさまざまな種類があるがこの中で私が使用してみたい!と思うのは、#10.04と#10.02だけである。

RaCe エボ カタログ

それ以外は仕様に耐えない。

なぜ、こんなに種類が多いのか?と思ってしまう。

カタログを一覧してひかれたのはこの部分だけである。

回転数が800~1000でトルクが1.5Nである。

ということはこれは単回使用してくれ!というメッセージが聞こえてくる。(白水はそうじゃないと言っていたがファイル破折が嫌なので私は単回使用するだろう。)

これで恐らく根管治療の術式は変化するだろう。

と私が言えば、また白水押しとか言われるのである。

歯科業界というのは、全く何ともしょうもない…ああ言えばこういうで人の成功が気に食わないらしい…

あえてこのファイルに突っ込みを入れるとすれば、そもそもこんなに種類が多くて、一体我々は何回治療中にPatency Fileすればいいのだろうか?

#10→#15→#20→#25→#30→#35→#40→#50…ファイルを8回も交換する必要がある。

8回もPatency Fileしろ!というのだろうか?

そういう韓国人の同級生がUSCの時にいたが、クラスでダントツで治療が遅かった。(が、根管充填はすごく綺麗だった)

なぜそんなに時間がかかるの?と聞いたら、毎回Patency Fileしているというのである。

それを私は悪いとは思わないが、間違いなく治療が遅くなるだろう。

効率が悪いのである。

つまり、効率性が良いファイルというのは数本で治療が完了するファイルである。

その点で、HyFlex EDMは実に考えて?作成されていると私は考えている。

というわけで、言いたいことをまとめれば、

使用するファイルは症例によって変わってくるし、そのファイルを使用する理由というのは、個人個人で違ってくるのである。

それを、いやそれは違うからこうしろ!などというつもりもないし、

これが唯一無二のファイルだ!というものはないのである。

しかし、わざわざこんなことを言わないといけない?この業界というのは何だろうか??極めて低いレベルの???争いである。

極めて情けない。

しかし、逆に言えば…

頭が他人よりも抜けていい人が、この業界に参加すれば、いつでも天下を取れるだろうということの証左になるが…

と話が脱線したが、本題に戻そう。

ちなみに、その使用したファイルがうちの歯科医院の在庫に死ぬほどあったので画像を提供したい。

今はFEEDで販売されている?ようである。

私は詳しくないので詳細はわからない。

ということで根管充填から時間が経過してリコールとなった。

最初のリコールは2017.12.13である。(5ヶ月リコール)

咬合痛は消失している。

主訴は解決した。

さらに時間が経過して治療から1年半が経過した。(2018.12.12)

咬合痛はもはやない。

補綴治療も完結した。

さて、この後私は脳出血で倒れたため予後が見れなくなってしまった。

が、患者さんに連絡すると来院していただけた。

治療から約5年経過している。(2022.1.5)

また、#30.06という小さなサイズで根管治療を終了しているのにも関わらず根尖病変ができていない。

これは、

以前のブログの結果と反した結果

になっている。

小さな拡大の限界〜#30 Mimimum PrepでRCTしたが…根尖病変発生⇨Re-RCTへ

#30.06で終了しても問題が出ていないのだ。

USCの根管治療の最低の基準ファイルに一致している。

こうなると…うーん…

何とも悩ましい問題である。

恐らく…上記の#30 Re-RCTの患者さんは根尖部が破折していたのであろうか?

それは永遠にわからない。

このように小さな拡大でも問題が出ないこともあるのである。

歯科治療というのはこのように何が正解なのか?本当にわからない。

しかしながら各種方法で通法通り行えば、治療の成功率は90%と高い数字である。

治療内容を考えさせられる結果と最近のこのリコールの出来事に、私は考えを新たにしなければならないだろう。

ともあれ、根尖病変もなく5年も経過している症例が現れたことは私にとって自信につながった。

この患者さんは非常に協力的な方なので、また次回1年後も予後をご報告したい。