以前の歯科医院での患者さん。

この日にリコールにいらした。

県外からの患者さんでMB根にレッジができていた。

そこからファイルが進まない、というのが主訴(かかりつけ歯科医院の主訴)であった。

あの曰く付きの、長住で治療している患者さんである。

患者さんの主訴は左上の奥歯が痛くて噛めない。歯茎を押さえると痛みがあるであった。

歯内療法学的検査が行われた。(2017.2.22)

#13 Cold+3/8, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#14 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#15にはインプラントが入っているため、検査の歯には入れていない。

が、検査で主訴が再現できた。

これは歯科治療により問題を解決できる可能性が高い。

この考え方が非常に重要である。

再現できない主訴を持つ患者の治療は得手してうまくいかない。

PAは以下になる。

このモスキートで挟むデンタル撮影は私は昔から苦手である…

この時はまだ、X線フィルムホルダーの存在を知らなかった。

レッジの攻略は昔の論文に書いてある。以下のように行う。

Jafarzadeb 2007 Ledge formation: review of a great challenge in endodontics 改変

①レッジの部分まで根管形成・拡大形成する

②#10 C+ / K File をプリベンドし、Root ZXにつなぎ、ローテーションさせながら根管に挿入

③尖通させ、作業長を確認・決定

④②で穿通しなければ、RaCe Evo#10.04/#10.02またはHyFlex EDM#10.05で根管形成。作業長はCBCTを参考に決める。また、この時には高速回転+低トルクで使用する

下図の絵を理解することが非常に重要である。

もしレッジが凄まじく大きくつけられていれば?その改変は難しいだろう。

レッジ量の大きさでそれが改変できるか否か?は決まってしまう。

以下のような症例はレッジの解決ができない。

既に大きく変異しているからである。

レッジの修正をイラストで示すと以下になる。

(ちなみに、このイラストは某有名な歯内療法の教科書に載っているやつだ)

歯内療法学的診断は以下になる。

#14

Pulp Dx:Previously Treated

Periapical Dx:Asymptomatic apical periodontitis

Recommended Tx:Re-RCT

レッジができているが、その量は大したものではないので解消可能であろう、と考えて私は再根管治療の適応症であると考えた。

患者さんは治療計画に同意し、再根管治療が行われた。

ちなみにこの当時は、Edge EvolveやProTaper Goldなどが私が愛用していたファイルである。

再根管治療の内容は以下になった。

 

ProTaperGoldのGutta Percha Pointは形成サイズよりもテーパーを小さくしている。

したがって、そのままのサイズを使用しても問題は出にくいだろう。

でれば、交換すればいいだけである。

意味が???な方は以下のブログで確認しよう。

⬇︎

Sinius tract がある歯の特徴とは?〜#8 RCT 1回法とあなたは知っているか??側枝の根管充填の重要性?とProTaperのGutta Percha Pointの黒?歴史を…

レッジは簡単に解消できた。

この問題を解決するには、もはや柔軟性の高い道具が必須であるといえる。

その意味では昔よりも修正が簡単になっただろう。

またGutta Percha Pointも以下のようにCold Sprayで冷却して先端を曲げての修正が必要である。

以上のようにしてGutta Percha Pointも曲げて入れないと根管充填ができない。

しかし、シーラーを入れると大概作業長までいかなくなる。

が、今はBC sealerがあるので、だいぶ楽になったといえる。

ということでレッジを乗り越えて根管形成し、ポイント試適して根管充填し支台築造処置をした。

MB根の根尖部には大きな根尖病変がある。

さて。ここから時間が経過した。

1yr Recall 経過観察時(2018.2.7)

根尖病変はだいぶ縮小しているように思われる。

ここからさらに1年後に経過を見るはずであったが、私が脳出血で倒れて見れなくなってしまった。

再開業して患者さんに連絡すると遠方からわざわざ来院してくれた。

初診から5年経過している。

いかなる臨床症状もない。

RCT 5年経過時(2022.3.8)

MB根の周囲にあった根尖性歯周炎は完全に消失した。

Healedと言っていい状態である。

ちなみに患者さんは私が倒れたことを知らなかったようだ。

その話をしてびっくりされていた。

以下、患者さんの感想。


先生、おかげさまで治療していただいた部位は全く問題がありません。

最近呼ばれないなと思ったら先生、倒れていらしたんですか…

健康に気をつけて頑張ってください。私たちには先生が必要なんです。

また来年見せに来ますのでよろしくお願いいたします。


ということで5年目のRecallが終了した。

病気をしなければ、本来私が見たであろう景色を患者さんから見せていただいた。

今日の昼も私は筋肉トレーニングを行った。

疲労がひどいが、今後も継続的に続けていこうと思っている。

こういう患者さんもいるのだ。

まだまだ、頑張らなければと決意を新たにした。