以前(博多駅東時代)に治療した患者さんの経過観察。
その当時の主訴は以下のようであった。
”2017.9にSinus tractが口蓋に発生した。その後、再根管治療開始(ここで1ヶ月は治療にかかると言われた)。治療するにつれて肉芽組織ができて膿も止まらないので抜歯した方がいいと言われて抜歯へ誘導された。インプラントにするか?Bridgeにするか選択を迫られた。自分自身では歯牙を残したい。なお、根管治療中に担当歯科医師が”あっ!”と叫びその後に抜歯した方がいいと言われた。先の方まで掃除ができないので治療の終わりが見えない。早くこの問題を解決したい。”
アタオカが来た!と思ったそこの貴方。
アタオカはあなたです。
患者は真実を告げている。
上記の主訴は施術した歯科医院名は伏せているが、概ね患者のいう通りでほぼ事実だろう。
やっている方は普段通りの診療だろうが、された方はたまったもんじゃない。しかし悲しいかなこれが日本の歯科医療の平常運転だ。
初診時(2017.12.20)
歯内療法学的検査は以下になった。
#2 Cold+4/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
#3 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)
#4 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)
口蓋惻にSinus Tractがあり、Gutta Perchaを挿入すると問題の穿孔部位に到達していた。
PAは以下になる。
歯内療法学的診断は以下になる。
#3 Pulp Dx: Previously Initiated Therapy, Periapical Dx: Chronic Apical Abscess
Recommended Tx: Re-RCT+Core Build up w/wo Fiber Post
再根管治療を提案した。
その根拠は以下になる。
口蓋根に穿孔があるが、それよりも先の口蓋根管根尖部に根尖病変がない。であれば単純に口蓋根管そのものをMTAセメント等で封鎖してしまえば、将来起きる問題は少ないだろうと思われる。
穿孔の場所・位置によりその治療の予後は大きく変わっていくことが再根管治療では知られている。
一般的に根尖部寄りであれば予後はいいが、歯頚部の穿孔の予後はよろしくないことが多い。
ではこの症例ではどうだろうか?
根尖部1/3に問題はあると思われるし、根尖病変もない。
ということは、
穿孔ごとMTAセメント等で封鎖してしまえば勝負に勝てる可能性は高い
と言えるだろう。
以上を患者さんには説明して治療内容に同意されて再根管治療となった。
Re-RCT時(2018.1.22)
MB,DB,Pともに穿通しなかった。
が、それの何が問題だろうか?
根尖病変がないのである。
将来できれば、Intentional Replantation一択である。
根管充填して支台築造した。
さてここから私は倒れて予後を追えなくなってしまったが…患者さんは来院してくれた。
Re-RCT後 5年経過時(2022.4.27)
初診時に存在していた口蓋側のSinus tract、咬合痛はすでに遠い過去に消失していたという。
術前に存在していたレントゲン的透過像も消失しているように思われる。
2根は尖通せず、1根管は根管治療さえしていない。
それも病変のコントロールができている。
このことから何がわかるか?であるが、
歯内療法は術前に術後のことがほぼ予想できる
という事実である。
このような状況になるであろうことが術前に予測できるのだ。
そうした歯科医療をあなたは受けたことがあるだろうか?
受けたことがなければ…そうした歯科医院を探すことを推奨しよう。
明けない夜はないのだから。