バイト先での治療。

患者は30代女性。

主訴は前歯の裏が腫れた。

北陸の某有名スタディクラブの講師(歯内療法専門医ではない)が再根管治療を行なっている。

それもあるのか?その前の歯科医師のやり直しだから仕方ないのか?やたらと根管上部の拡大が大きい。

左下犬歯(#22)の裏側に腫脹があり、同部の歯周ポケットを測定すると8mmであった。

これは破折か穿孔などを想像させる…嫌な治療だ。

さて歯内療法学的検査は以下のようになった。

#22:Cold N/A, Perc.(-), Palp.(+), BT(+), Perio probe 8mm(舌側中央。その他は全て健全), Mobility(WNL)

PAは以下のようになる。

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

ということになり、破折か穿孔の可能性を秘めた不安定な再根管治療を行なうこととなった。

ガッタパーチャポイントを除去し作業長を測定する。

しかしプレパレーションがでかい。

私がアメリカに行く前のようなプレパレーションだ。

作業長などは以下のようになった。

RIL=27.0mm, MAF=#60.02(HyFlex EDM), Gutta Percha+BC sealerでSingle point根充

根充をしようと洗浄を繰り返し行なっているときだった。

私は根管内部に嫌なものを見てしまったのである。

VRFである。

なぜVRFが?といえばやはりこのでかすぎるプレパレーションと根管充填だ。

歯を保存するのではなく、破壊してしまっている。

でもこれが私が留学前の2014年くらいの日本の歯内療法だったのだ。

この時代はいわゆるCWCTをしようとみんな躍起に?なっていた。

しかし、アメリカに行くと周りは全員Single point根充だったのである。

USCではアピカルプラグを先端のガッタパーチャポイントから7~9mmで切断して作れと指導されていた。

(指導していたのは、AAEのボード専門医の日系人である。)


VRFがあるときはどのような態度で治療に望めばいいか?覚えているだろうか?

Treatment may involve extraction of the tooth. However, endodontic surgery is sometimes appropriate if a tooth can be saved by removal of the fractured portion.

治療は抜歯、または破折した部分を外科的に取り除くことができるのであれば外科治療が時として適切であると思われる。

この破折している部位まで水酸化カルシウムを根管内部にいれてキャビトンで仮封してPAを撮影した。

すると以下のようになった。

患者さんはインプラント絶対NGの人である。

何か残す方法はないですか?と言われ私が提案したのは垂直性歯根破折している部位まで歯根を切断して残りに対して歯根端切除を行うことである。

頬側の歯周ポケットは治療前にWNL(3mm未満)だったからだ。

審美的な問題は出にくいだろう。

しかし私にはこの治療に関して嫌な思い出があり(後日掲載予定)、なぜだか私が総攻撃を受けて謝罪をさせられたので、若干?トラウマになっている部分があるが、患者さんには以下のような治療方法を提案した。


1. まず支台築造する

2. 垂直性歯根破折している部位まで全て切断する(PAのオレンジの部分まで切断する)

3. 残りに対して歯根端切除+逆根管充填する


しかしながらそのトラウマのせいもあり私は患者さんに歯茎が大幅に下がれば審美的に問題が生じるのでその際は抜歯になってしまう可能性がある、ということも一応伝えた。

また、舌側が破折していれば抜歯ということも伝えた。

患者さんはもし歯が残らなければ抜いてそのままにすると答えている。

ということでこの歯は保存できるだろうか?審美的な問題を引き起こさないだろうか?

それは次回の処置の結果で判明するだろう。

その治療の内容、結果はこのブログで必ず皆様にお伝えいたします。