非常勤の歯科医師の治療の経過観察。
主治医は
橘 慶州(たちばな けいしゅう)先生。
彼は来年の6月から
テキサスA&Mに留学が決まっている。
これで患者さんが治癒すれば…
今日が最後の経過観察だ。
以前の治療の内容は以下にまとめてある。
当時の主訴は、
10年以上前に日本で治療した。その際治療に3ヶ月以上かかり痛みもあって大変だった。1回で終わるのであればここで治療したい。
であった。
根管治療に3ヶ月以上かかっていた…
意味がわからない。
痛みが取れないのは、治療内容が問題で治療の結果はそれに付随してくるだけ
なのだ。
治療内容を考えないといけない。
正しい教育を受けていないというのはこれほどまでに恐ろしいこと
なのだ。
それが東京へわざわざ行かなくても学べる、
Basic Course 2024
であるが、
もう、あと1名で締切
である。
ちなみに、
Advanced Course 2024
も
あと2名で締め切りだ。
話が逸れたので元に戻そう。
術前・歯内療法学的検査(2022.10.20)
#29 Cold+5/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#30 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#31 Cold+3/3, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)
#30には打診痛がみられる。
術前PA(2022.10.20)
このどこが難しい根管なのだろうか?
私には意味がわからない。
何度でも言うが、難しいと考えるのであれば、うちのような歯科医院に紹介すべきだろう。
また、かかりつけ医からはCBCTもいただいていた。
初診時CBCT(2022.10.20)
MB
Mの根尖部には大きな根尖病変がある。
なお、根尖病巣ではない。
病巣という言葉にある意味はそこに病気の原因があるという意味である。
確かに根尖孔外細菌感染の可能性はあるものの、一般的ではないのでその呼び方は適していない。
ML
MLは穿通しなかったようだ。
ここが穿通するかどうか?は治癒に影響を与えると思われる。
なにせ、MLがストレートでMBが湾曲しているという事実を根管治療に反映させたいがそれが叶うかどうか?だ。
D
Dの根尖部にも根尖病変がある。
ここも尖通が必要であるが、形成が全くできていないので修正は可能であろう。
ということで、恐らく再根管治療の適応症でうまくいかなかったらApicoectomyへ移行する形になるだろう。
歯内療法学的診断(2022.10.20)
Pulp Dx: Previously treated
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Re-RCT
ほとんど根管形成できていないことから、再根管治療となった。
それで治癒しなければ…Apicoectomyである。
⭐︎このあと、臨床動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
Re-RCT① Gutta Percha除去(2022.11.11)
Re-RCTでの最大の時間の節約はどういう武器を持っているか?である。
そしてどう治療を進めていくか?意思決定していくことだ。
ここが流れるように決まればそれほど時間をかけずに治療ができる。
非常勤の彼はレシプロでGutta Perchaを除去していた。
Gutta Perchaをあらかた除去して作業長を測定する。
これをML, MBにも行った。
が、MLが穿通しない…
そこでMBへと治療する根管を変更した。
するとMBは尖通した。
またこの後MLも根尖部のGutta Perchaを除去すると残存していたGutta Perchaが取れてMBとMLの合流が確認できたという。
その動画だが…肝心な部分が撮影できていない。
まだ彼はうちのマイクロスコープ(Carl Zeissのマイクロ)のシステムに慣れる必要があるだろう。
ということで治療内容は以下である。
ポイント試適した。
MBにMLが合流していたというパターンで形成している。
問題ないと判断し、BC sealerで根管充填し支台築造した。
最後に確認でPAを撮影した。
1回法で再根管治療は終了した。
患者さんは1回で終わったという事実に驚愕して大喜びしていた。
今までの治療がなんだったんだろう!とお話しされていた。
ということでここから1年が経過していた。
#30 Re-RCT 1yr recall(2023.11.9)
術前にはPerc.(+)であったが、1年経過してその症状は消失した。
いかなる臨床症状もない。
PA, CBCTも撮影した。
PA(2023.11.9)
CBCT 初診時(2022.10.20)vs 1yr recall(2023.11.9)
術前の近心根の病変はほぼ消失した。
遠心根はまだ変わらないように感じる。
が、
患者さんには臨床症状がない。
AAEの基準では、
Healing①
である。
ということで、来年は彼の代わりに私が経過観察を行うことになった。
うちに来る利点としては、
CTで費用がかからない
という点だろう。
一般的には¥10,000程度請求されるらしいが、
CBCTは診断に必要なものであるので、それを患者から請求はするなよ、というUSC時代の恩師のDr. Schchterの教えを私は忠実に守っている。
そうした費用は、治療費で請求すればいいのだ。
それが最もフェアなやり方だ。
ということで来年は私が経過を見させていただく。
この患者さんは他にも治療すべき部位があるそうだ。
私はどうすればいいんですか…と落胆されていたので、この方の紹介元の、
くりえいと歯科おおかわちクリニック 院長 大川内 秀幸 先生
〒811-4184 福岡県宗像市くりえいと3丁目3番1号
TEL: 0940-39-8020
に通っている限りは大丈夫ですよ、とお伝えした。
しかしこの1年で様々なことが変わった。
橘先生が、テキサスA&Mに合格したこと
うちにCBCTが導入されたこと
など様々な変化があった。
そしてつい先日は、今まで長く通ってくれていた、まつうら精密歯科医院時代の患者さんが亡くなってリコールに来れなかったという連絡を家族の方から受けた。
人はやがて皆、死ぬ。
どうせ死ぬ短い人生なら自分の思ったこと、好きなことを懸命にやり切るべきだと改めて思った。
いろいろなことが人生はあるが…
前を向くしかないのだ。
ということで来年の11月に2yr recallを行う予定である。
またその模様はお伝えしたい。