週末日曜日はBasic Course 2023 第10回が行われた。
講義内容は、
生活歯髄療法
である。
講義は昨年の7月に東京で行った物をベースに行っている。
1. Preface(序文)
話に入る前にまず、小児と成人の歯髄の違いについて述べた。
Dental Pulpに記載されている通りの内容である。
しかし、高齢者でも成功している!という文献もあるだろう。
が、そうした文献の欠点は何だっただろうか?
ということで、生活歯髄療法とは小児患者に行うべき治療である。
成人にはできない。
が、世の中には俺はすごいんだ!、俺は他人と違うんだ!という御仁がいる。
そうした治療の欠点は何だっただろうか?
SXで上部拡大ができても、穿通するかどうかはわからない。
穿通させなければいけない根管かどうか?がこうした治療をするときは重要だ。
その判断法とは何だっただろうか?
以下のような状態になれば、どのように解決しないといけないだろうか?
以上のように、成人のVPT治療というのは非常に危うい治療である。
気安く、歯髄を残しますよ!などというものではないのだ。
という序文から今回は入っていった。
2. 生活歯髄療法(小児編)
次に小児のVPTを説明していった。
以下のようなケースが典型的なVPTのケースである。
根未完成歯の歯髄の持つ特徴とは何だっただろうか?
成人と何が違っただろうか?
これは非常に重要な部分である。
よく頭に入れておきましょう。
3. 生活歯髄療法(成人編)
今までの話をまとめると、VPT(生活歯髄療法)は小児に行うもので成人に行うものではないという結論が出ていたが、それでも世の中にはVPTを成人に適応したいんじゃ!という御仁がいる。
VPT治療を系統的にまとめて整理してその特徴や成功率などを論じた。
そして5年前に東京VPTセミナーで提示したあの患者さんのCaseはどうなっただろうか?
今は抜髄しているだろうか?
合わせて提示した。
Cold testには正常に反応している。
術前にいかなる症状もない。
さて、この状況で以下のうちのどの治療方法をあなたは取り入れるだろうか?
それぞれの治療の成功率をもう一度頭に入れておこう。
①Indirect Pulp Capping
<成人>
<小児>
②Direct Pulp Capping
<成人>
<小児>
③Full Pulpotomy
<成人>
<小児>
以上から、症状があれば生活歯髄療法は成人には通用しない治療方法であるということがわかるだろう。
しかし、小児患者は根管治療をするのではなく、生活歯髄療法を行うべきである。
なぜならば、歯髄が森のように茂っており、血液供給もかなり豊富だからである。
つまり以上から、
この治療(生活歯髄療法)は小児に適応するための治療である
ということがわかるだろう。
成人では歯髄が石灰化し、目も当てられなくなるのだから。
さて、冒頭のCaseの患者さんはあれからどうなっただろうか?
歯内療法したくないのであれば何がKeyになるかわかっただろうか?
よく理解して臨床に応用しましょう。
午後からは、応急処置の対応方法を説明した。
3. 急化Pul患者の対応方法
急化Pulの患者さんがきたらどう対応すればいいだろうか?
以下の文献が超・有名である。
しかし最大の問題が、
“何をもって急化Pulと断定するか?”
である。
これは講義でも述べた通りであるが、最新の技術とあなたの目があればどうにでもなるだろう。
いずれにしても、露髄して時間に追われるような診療をしていてはマネージメントは不可能だ。
それなら最初からIndirect Pulp Cappingしてしまった方がいいだろう。
4. 急化Per患者の対応方法
急化Perで悩まされるのは、
①自分が根管治療したのに
②自分が治療をする前の状況
の2つである。
①自分が根管治療したのに急化Per症状を呈した時はどういう対応を必要としただろうか?
②自分が治療をする前の状況で急化Perの患者に当たった場合はどうすればよかっただろうか?
上記3つの文献から得られる知見は何だっただろうか?
スライドをよく復習しましょう。
ということで1日はあっという間に終了した。
この日の内容を一言で言えば、
“歯髄を保存したいのであれば、リスクを追うべし”
であろう。
リスクを負えないのであれば、保存療法ではなく、根管治療へ切り替えるべきだ。
そしてもし、それが何らかの事情で困難なのであればできる人に紹介すればいいのである。
という単純な仕組みは、
2024年の現在に至っても福岡では成立していない。
相変わらず、今日も、この瞬間も適当な根管治療が日本国中至る所で行われているだろう。
そこから脱した歯科医師がこれからの時代を生き抜いていく人材と言える。
そして、もう大型歯科医院経営は無理だろう。
“人” がいないからだ。
仮に、“人” がいても、その “人” が使えない。
であれば育てるしかない。
が、育てばみんな辞めていく。
これは当たり前のことである。
安い給料で働かされては未来が見えないからだ。
夢を語るのはいいが、夢を与える経営をしろよと言いたい。
また、人の出会いには始まりがあってそして終わりがある。
これは誰もが経験することだ。
永遠に存在できるものなどこの世にはないのだから。
私もあなたもいずれあの世に行くのだから。
ということで、明日から新しい気持ちで診療してくれればいいなと感じた1日であった。
皆さん、お疲れ様でした。