紹介患者さんの治療。

主訴は、

左上の歯茎の痛み。歯磨きをするときに特に痛む…

である。

歯内療法学的検査(2024.5.22)

#14 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(++), BT(+), Perio Probe(WNL). Mobility(WNL)

#15 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL). Mobility(WNL)

#14が主訴の歯である。

歯茎を押さえると痛みがある。

これが患者さんの主訴の歯磨きを…に一致しているのだろう。

そしてこのことは、

恐らく…頬側の皮質骨が開創しているのだろう

ということが疑われる。

病気の進行が疑われる。

Apicoectomyだろうか?

PA, CBCTを撮影した。

PA(2024.5.22)

CBCT(2024.5.22)

MB

MBは根管形成を試みようとしたものの、途中で諦めている。

何が原因か?わからないが、Implantの方が簡単なんだろうか?

私にはそうは思えない。

MB2は無さげな形態である。

頬側の皮質骨は吸収されており開創している。これが、Palpation(+)の原因だろう。

ここは穿通が必須だ。

が、穿通できるだろうか?と言えば、それはやってみないとわからない。

が、

これが歯内療法だ。

穿通できなければ、Apicoectomyへ移行する可能性が高い。

DB

DBの根尖部にも病変がある。

CBCTでは、Gutta Perchaがデカく見えるが、PAではそうもないように見えることがわかるだろう。

ここに

PAとCBCTのアーチファクト

がある。

つまり、

PAだけでも診断できないし、

CBCTだけでも診断できないのだ。

そして、治療を正確に進めていくのであれば、

このDBがポイントになる

ことがわかる。

根尖病変はないので、一見、扱わなくてもいいとなるが、

この根管を起点にすると他の根管がどこにあるかわかる

のである。

P

一番簡単なPが根管形成がほぼ未着手である。

このことから…

前医はエンドにやる気がなかった

のだろう。

こんな低い保険点数で何で根管治療しないといけないんだよ!

という怨嗟の声が聞こえてきそうだが、

それは患者の口腔内と何の関係もない。

つまり…

無責任

ということだ。

こんな状況で歯牙の治療をどうして任せることができようか?

もう、そこのあなたは気づいた方がいいだろう。

保険歯科診療に質はないのだ、

と。

歯内療法学的診断(2024.5.22)

Pulp Dx: Previously initiated therapy

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Re-RCT

ということで、同日に再根管治療へ移行した。

治療の詳細は、

DBを再根管形成し、それを起点にPを見つけ、そして最後にMBを形成する。

これが成り立つだろうか?


⭐︎この後、治療動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#14 Re-RCT(2024.5.22)

チャンバーオープンすると、以下のような状況であった。

さて、DBは容易に見つかるとして、どこにPやMBがあるのだろうか?

まず、DBから形成した。

クロロホルムでGutta Perchaを溶解させ、短針で突く。これが、SXのためのスカウティングになるのである。その後、SXを入れて形成している。

Basic Course 2024で前回、説明した通りだ。

そして長さを計測した。

はっ?Gutta Perchaを全て除去してないのに長さなんて測れるわけないだろ?!

いや、測れますよ。

詳細は、Basic Course 2024でお話しします。

すると、DBはRIL=15.0mmとなった。

#40.04まで形成している。

つまりMAFは#40.04で、根管充填に使用するGutta Perchaは#35.04だ。

つぎにPを探索する。

さあ、Pはどこにあるだろうか?

この上図の濃いブルーの部分か、それとも水色の部分のどちらだろうか?

CBCTに戻ろう。

P根の根管にはすでに何らかの充填物が充填されていることがわかる。

これを探索するのだ。

Pも根管充填した。

この歯は…Previously treatedだが、Previously initiated therapyのようだ。

この言葉の意味があなたにはわかるだろうか?

Basic Courseの受講者なら、理解しなくてはならない。

最後が、懸案のMBだ。

ここを穿通させないと、この歯はApicoectomyへいくことになるだろう。

この根管が最も重要だ。

SXでの形成に成功した。

この動画でのポイントは、

石灰化傾向のある根管に柔軟性の高いファイルは向かない

という事実である。

と言っても、HyFlex EDMは例外だけれども。

以上をまとめると以下になる。

根管充填後に、PAとCBCTを撮影した。

気泡が入ったが、問題はないと思われる。

CTも撮影した。

MB

パフが見られる。

良い根管治療の証左だ。

MBの中央にGutta Perchaが見られる。

このことは、この歯のMB2はないことが示されている。

DBもPも中央にGutta Perchaがあることがわかるだろう。

そこにも他の根管はない。

意味が、???なあなたには、

Basic Course

でお待ちしています。

また、この根管を制したことがこの歯の予後にいい影響を及ぼすに違いないと思われる。

DB

DBにもパフが見られる。

ここも改善できている。

P

Pにもパフが見られる。

つまり、

この再根管治療に問題はないということがわかる。

PAやCBCT的にどう見えようとそれは無関係

なのだ。

ということで、かかりつけ医にはプロビジョナルレストレーションを作成してもらい、それを外れないように合着してもらうように依頼した。

次回は1年後である。また状況をお伝えしたい。