非常勤の橘先生の根管治療。

彼は2024.5末に渡米するのでこれが当歯科医院で最後の?歯内療法処置になる可能性が高いだろう。

かかりつけ医から、依頼された治療すべき歯(依頼された歯牙)は、#14。

患者さんの主訴は、

奥歯でものを噛むと痛い…

であった。

歯内療法学的診査(2024.4.4)

#14 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#15 Cold+4/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio probe(WNL), Mobility(WNL)

#14には打診痛と咬合痛がある。

ここが依頼された歯だ。

PA, CBCTも撮影した。

PA(2024.4.4)

断髄がなされた形跡がある。

ということは根管には石灰化が生じているはずだ。

CTも撮影した。

CBCT(2024.4.4)

MB1

MB1には根尖病変は見えない。

ということは、必ずしも穿通の必要性がないとわかる。

が、石灰化が亢進していることはわかるだろう。

これがVPTの弱点と言える。

MB2

MB2のApexには若干病変が見える。

が、それほど大きくない。

穿通は必須とは言えないだろう。

DB

DBにも若干、病変がある。

が、それほど大きくはない。

P

P根周囲には切削の跡がある。

これの直近にP根はあるだろう。

また根尖病変はない。

ここもそれほど神経質に何かを追求することはないだろう。

歯内療法学的診断(2024.4.4)

Pulp Dx: Previously initiated therapy

Periapical Dx: Normal apical tissues

Recommended Tx: RCT

治療は私がAAEでロスにいる時に、日本で行われた。


⭐︎以下、治療動画/画像が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。


#14 RCT(2024.4.18)

口蓋根のみ形成して、MB, DBは無いという結論に達したそうだ。

が、既充填部分を除去していないのが気になる。

得てしてこういう部分に根管があるからだ。

その後、私が学会にいる間にLINEが来た。


先生、AAE楽しまれていますか?

学会中に水を刺してしまいすみません。昨日の根管が見つからない人の治療、やってしまいました。

Pは問題なく処置したのですが、MB,DBはさわれずでした。

天蓋や修復象牙質の張り出しを除去できていなかったのでそれを除去していくと根管の入り口が確認できたと思い、エンド探針のひっかかりはあるもののファイルが入っていかなかったためそこまでで築造し、外科の説明をしました。

しかし術後CTを撮影すると、まだまだ象牙質の張り出しを除去する余地があったことがわかりました。。。

前医の切削がパーフォレーション直前だったことを意識しすぎて攻めきれませんでした、、、。

もちろんそこを除去したところで同じ結果だった可能性は否めませんが、自分の未熟さに辟易し、患者さんに申し訳なく思った次第です。。。

術前CTと術中写真があるのでお送りします。

その時は全く頭になかったのですが、

術中にCT撮っていたら何か違ったかもしれないと後になって思いました(涙)。

このような場合、先生ならもう一度RCTして頬側2根にアプローチされますか?それともこのまま外科でしょうか?

下手くそで申し訳ありません。。。

久しぶりにがっつり凹みました。

調子に乗るなよと言われた気分です。。。


以上の文章を要約すると、

根管(MB,DB)を探索したものの、前医の治療が気になり、それを発見できず、CBCT撮影前に患者さんに次回は外科治療です、と言ってしまったものの、

その後の術後に撮影されたCBCTを見ると、自分がそれほど根管の探索に対して歯牙を切削していない事実に気づいてしまい、患者さんにどう説明したものか、と悩んでいる

ということであった。

こういうケースは今後も大学院でもあるだろう。

その際に彼にアドバイスするとすれば、

Pulp Dx: Previously initiated therapyのCaseに対しては、術前のCBCTは絶対必要という事実

と、

Previously initiated therapyのCaseでは、旧充填物/修復物の完全除去はマストである

という2点だろう。

以下のケースを私は思い出す。

うちの歯科医院で唯一、治療が2回法になったケースだ。

Previously Initiated TherapyのRCTには危険がいっぱい…MB?が穿孔してしまった、#14 RCT 久々の2回法とメカニカルグライドパスの方法

人が手をつけて、なぜかわからないが引いたケースには危険が大きく孕んでいることが多い。

以下は1回法であったが、Dangerousな状況であった。

Previously Initiated therapyの根管治療から8年経過〜#2 RCT+Perforation Repair

上記の最初のケースでも旧充填物の直下にMB1,MB2根管が存在していたし、

2番目のケースでは、P根は石灰化が亢進しており穿孔させていた。

このことからも、

Previously initiated therapyのCaseでは、旧充填物/修復物の完全除去はマストであり、術前のCBCTも必須

であるという事実だ。

彼がテキサスA&Mに入って、そうしたケースでCBCT撮影が許されるのか?否か?は私にはわからないが、

この日の失敗?を回復させるにはこの日の出来事を記憶に留める必要性があるだろうし、

そうしたケースでCBCT撮影する必要があるのだとFacultyと交渉する必要がある

だろう。

いずれにしてもいい学習になるケースだと思う。

彼のケースのCBCTを私なりに分析してみた。

分析のポイントは根管口の位置である。

口蓋根管よりも6mm先にMB1はあり、4.6mm先にDBはある。

そしてMB1とPを結ぶ線の0.7mm近心寄りにはMB2もある。

が、根尖病変はない。

この上図のような絵が非外科的な根管治療では重要だろう。

以上を踏まえて、私は以下のように返事をした。

ということで、別日(私が帰国した日)に2回目の根管治療が行われた。

#14 RCT 2回法(2024.5.7)

DBは形成完了した。

MBはレジンの下部にあるだろう。

そこを全て削合しなければ、根管口は顔を出さない。

近心壁のレジンを削合した。

ということで根管が見つかり作業長を測定した。

やはり、

Previously initiated therapyのCaseでは、旧充填物/修復物の完全除去はマスト

であるということが改めてわかる。

この後、MB, DBを形成した。

作業内容は以下である。

ポイント試適した。

問題はないだろう。

根管充填し、治療後にPA, CBCTを撮影した。

MB

MB2

MB2の根尖部には病変が見えるが、

MB1を適切な位置まで形成したのでこれは消失する可能性はある。

また、消失しなければ、Apicoectomyだ。

それに何の問題があるだろうか?

何の問題もないだろう。

DB

P

次回は半年後である。

またその模様をお伝えしたい。


ここで橘先生にアドバイスを。

今後、アメリカでこうしたPreviously initiated therapyのケースで全てのケースでCBCTが撮影できるだろうか?できなければ、こうしたケースではかなり悩むだろう。

そしてそれは可能であれば全てのケースで撮影が必要だろうと思われる。

私の同級生のDr. Youn

がFacebookで指摘している通りである。

PAでは判然としないが…

CBCTでは、

ここまではっきりわかる。

そして問題を解決できる可能性が高い。

このように、CBCTはもはや歯内療法にはマストと言って差し支えないだろう。

それだけに… FacultyがCBCT撮影をRejectすれば…茨の道だ。

が、それを望んで向こうに行くのだから頑張れとしか言いようがない。

人生は1度切りである。

チャンスは掴まないといけない。

人生はチャレンジなのだから。

彼がどういう臨床家になるかは、今後の鍛錬にかかっているだろう。

ということで彼の日本での治療のケースはこれで終了した。

アメリカでも頑張れ!