紹介患者さんの治療。
主訴は、
歯牙を保存したいがどの歯科医院に行っても抜歯→Implantと言われる…
である。
歯内療法学的検査(2025.4.23)
患歯は依頼された#18だ。
PA(2025.4.23)
このPAからわかることは、この歯牙は健全な残存歯質がほぼないということだ。
そして歯周ポケット4mmはその不適合なDBの補綴と一致している。
根管治療をするなら、
せめてきちんとした環境でやれよ、
とこの治療を行った方にはメッセージを送りたいが、
まあそんな言葉は届かないのがこの業界の常だ。
ともあれこの状況は、
Intentional Replantation時の抜歯行為を難しくしている。
つまり、
Intentional Replantationができない可能性が出てくる。
歯牙を掴めないからというよりも、歯牙を脱臼できないからだ。
これが多くの臨床家が歯牙保存よりも抜歯→Implantへ傾く最大の理由だろう。
またこの歯牙を保存しても長期的に持たない可能性が高いだろう。
そういう歯をあなたは残したいと思うだろうか?
一般的にはコスパが悪い。
が、この歯牙の近傍には親知らずがある。
パノラマも撮影した。
多くの智歯が存在する。
ということは、この歯がダメなっても、智歯を抜歯し自家歯牙移植も可能な口腔内だ。
この一連のやり取り、考察から何が言えるか?と言えば、
多くの患者さんはImplantを望んでいないという事実である。
が、臨床家が最も好きな治療はImplantだ。
世の中の流れといつも逆行しているのがこの業界だ。
CBCT(2025.4.23)
気になる穿孔部位だが、
MBに存在する可能性があるのと、
DBにもそれが存在する可能性がある。
が、直視をしないとわからない。
どうやって?といえば、抜歯して口腔外で直接見てみて、だ。
歯内療法学的診断(2025.4.23)
Pulp Dx: Previously initiated therapy
Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis
Recommended Tx: Core build up→Intentional Replantation+Perforation repair
ということで、同日に治療が行われた。
⭐︎この後、外科動画が出てきます。不快感を感じる方は視聴をSkipしてください。
#18 Core build up→Intentional Replantation+Perforation repair(2025.4.23)
クラウンを除去すると…予想通りの残根だ。
これでは築造時にラバーダムがかからない。
縁下カリエスもある。
泣く泣く、電気メスで歯肉を削除してZooを使用して、複数のFiberPostを使用してレジンで築造した。
BTを落とすと歯冠長がほぼないという事実。
さて、抜歯は可能だろうか?
可能ではあったが…かなり手こずっていることがわかるだろう。
それでも可能だったのは、
CBCT撮影でこの歯牙が樋状根であると判定できたからだ。
以下がその参考ケースである。
が、抜歯ができても術前のCBCTで歯牙がすでに破折している可能性もある。
歯牙の精査はもちろん必要不可欠だ。
が、その前に抜歯窩に忘れ物がないか?精査する必要がある。
忘れ物はなかった。
が、歯牙が破折している可能性が残っている。
歯牙をまず精査した。
歯牙に破折線は見当たらない。
ということは、生存率がどれくらいかはわからないが保存は可能だろう。
ということで、ここからIntentional Replantationの作業へ移行する。
まずRoot resectionだ。
逆根管形成部位が判然としなかったが…
そういうときはLight testをするとそれがどこか?がわかるようになる。
この意味でも、Lightは必須だ。
私は従来、それを米国から購入して行っていたが、すぐ壊れるのである。
しかも今は円安だ。
海外から物を購入するのは費用がかかる。
ということで、この治療から以下の商品を使用した。
安いし、円安にも悩まされない。
ということで、私はQ-opticsから卒業?したのだった。
逆根管形成した。
3mmの逆根管形成の深さを確保するのがことの他難しいということがこの治療でも実感できる。
これも、
Intentional Replantation 1day マンツーマンコースの受講者の感想と一致するのである。
逆根管充填した。
通常ならここで終わりだが、この歯には穿孔もある。
そこを探し、封鎖しなてはならない。
術前のCBCTではそれは、
MのB側
DのB側
にそれらが存在する可能性がある。
穿孔を捜索した。
DのB側にはそれを見つけることができたが、MのB側にはそれを見つけることができなかった。
それが見つかれば、穿孔部を形成してBioceramicの厚みが3mmになるように形成している。
使用したシーラー、パテはペントロンジャパンの商品だ。
とこれで、治療は終了だが、縁下カリエスが深く正しく歯冠形成できていないので、口腔外で歯冠形成を行った。
ここから何が言えるか?だが、
歯冠形成など誰でもできるという臨床的事実である。
そんなものに特別なテクニックややり方はないだろう。
最後にPAを撮影した。
問題はないだろう。
ということで、抜歯窩へ再植し、歯牙固定し、咬合調整した。
術後のPA,CBCTも撮影した。
#18の遠心はCL必須だが、#17を抜歯すればそれが可能(やりやすくなる?)もだろうか?
私にはそうした知識がないのでわからない。
ということで次回は1ヶ月後である。
またこの歯牙の予後をご報告したい。