他院から紹介の患者さん。

主訴は

他院でエンドし、補綴まで装着されているがその歯が凄まじく痛くて噛むことができないし夜も寝れなかった

という。

予約を調整して初診で検査し、明くる日の16時からの再診時に治療を行った。

初診時の様子は以下になる。

初診時 歯内療法学的検査(2022.10.20)

#30 Cold N/A, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#31 Cold N/A, Perc.(++), Palp.(-), BT(++), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

主訴が検査で再現できている。

適切な治療をすれば保存ができる可能性が高い。

次にPAを撮影した。

初診時PA(2022.10.20)

近心根には破折ファイルが見える。

これは治療前に指摘させていただいた。

さもなければ私が犯人?になってしまう。

しかも折れたファイルは根尖部で湾曲より先である。それを超音波で取ろうとすると歯に穿孔が起きやすいことはBasic Courseで教えている通りである。

私にとっては、そんなことをするよりもIntentional Replantationの方が遥かに速いのである。

CBCTも撮影していただいていた。

初診時CBCT(2022.10.20)

2根の7番である。

根尖病変も近心に見える。

頬側から見ると、歯牙は歯槽骨の中に埋まっているがこれなら容易に抜歯できそうである。

あとは痛みのコントロールだ。

次にCTの特徴的な絵を提示する。

近心根

抜歯は容易にできそうである。

遠心根

遠心根の根尖にも破折ファイルが見える。

近遠心ともファイルを破折してしまったため、根尖部の掃除ができないことがこの状況に陥っていることに繋がっている。

が、根尖病変が大きい=歯槽骨がほとんどない

ので、容易に抜けそうだ。

あとは痛みの管理である。

ネクローシスの急発の場合は歯科治療の進め方にいつも頭を悩ませられる。

この時、当歯科医院の予約状況を見るとこの患者さんに時間をかけてみれるところがどこにもなかった。

ということでロキソニン+カロナールを処方し、この次の日に診察することになった。

歯内療法学的診断は以下になる。

#31

Pulp Dx: Previously Treated

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: Intentional Replantation

ということで翌日の夕方にIntentional Replantationをおこなった。


#31 Intentional Replantation① 脱臼・抜歯(2022.10.21)

☆以下、臨床的な動画/画像が出てきます。気分が悪くなる方は試聴をskipしてください。

Intentional Replantation成功の鍵は咬合の調整である。

したがってまず咬合調整を行なった。

これでまず#31の咬合を全て落とした。

クラウンを除去せずに治療を行うのは不本意だが他院との絡みがあるので仕方がない。

次に歯牙を脱臼させようとしたが…痛みは拭い去れなかった。

この時、私が施した麻酔は以下になる。

①伝達麻酔

②浸潤麻酔

が、奏功しなかった。

そこで、患者さんには申し訳ないが強行突破の方法として歯根膜麻酔をするという方法を選んだ。

歯根膜麻酔をすると痛いですよ、という話を事前にしていたのでそこまで患者さんはパニックにはならなかったようだ。

が、やはり痛みはかなり強かったと思う。

体動がかなりあったことからもそれは予測できる。

申し訳ないが…

これがEmergency歯科治療、これが歯内療法だ。

しかし、歯根膜麻酔後にはいかなる痛みも消失した。

もし痛みがそれでも残れば…リスケは避けられなかっただろう。

が、麻酔が奏功したのだ。

もう何をされても痛くないという。

ということで歯牙を脱臼させ抜歯した。


次に歯牙を観察した。

#31 Intentional Replantation② メチレンブルー染色・歯牙観察(2022.10.21)

破折を疑わせる所見はないと思われる。

次にApicoectomyを行なった。


#31 Intentional Replantation③ Apicoectomy(2022.10.21)


#31 Intentional Replantation④ Retroprep(2022.10.21)


そして最後に逆根管充填した。

#31 Intentional Replantation⑤ Retrofill(2022.10.21)


PAを撮影し、逆根充の状況を確認した。

問題ないと判断し、再植した。

#31 Intentional Replantation⑥ Replantation(2022.10.21)


最後にPAを撮影した。

ということでEmergency治療は終了した。

次回は1ヶ月後に経過を見せにきてもらう予定である。

その際に再度ご報告する。

少々お待ちください。