紹介患者さんの治療

主訴は

右上奥歯が腫れて出来物ができた。治したい。

であった。

9年前に(2014.7)他院で、ラバーダムを装着して治療したと言う。

それでも治療がうまくいかなかった。

その理由は何だろうか?

歯内療法学的検査(2023.2.9)

#2 Cold+2/4, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3 Cold NR/20, Perc.(-), Palp.(+), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

#4 Cold+8/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#3にはSinus tractがある。

患者さんによればそれができたのは、最近のことだったらしい。

であれば、外科治療へ移行するリスクはあまりないかもしれない。

もちろん、

”根管形成が適切にできれば”

であるが。

PA(2023.2.9)

MB1, MB2は適切に根管形成+根管充填がなされている。

が、DB根とP根には根尖病変と思しきものが見える。

そこには問題があるのかもしれない。

CBCT(2023.2.9)

B側

MB根には病変は見えない。

DB根には大きな根尖病変が見える。

MB

MB根には根尖病変はやはりない。

DB

DB根には大きな根尖病変がある。

頬側の歯槽骨も破壊されている。

Palpation(+), Sinus tract(+)の原因はこれである。

つまり…

この根管を穿通させることができれば勝負に勝てるかもしれない。

が、Sinus tract(+)ということは以下のような問題もある。

#20 穿孔が存在していた歯の根管治療とその後の状況 その①

外科に移行するかもしれない。

最後に、P根を見てみよう。

P

P根の根尖部遠心部分には根尖病変が見える。

そして既根管充填材はポスト孔から遠心にズレて充填されている。

そしてレジンは根尖付近まで充填されている。

探索は時間がかかるかもしれない。

歯内療法学的診断(2023.2.9)

#3

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Recommended Tx: Re-RCT

推奨される治療は再根管治療である。

理由は

以前の治療でDB, Pが十分な形成ができていない+根尖病変がある

からだ。

うまく(穿通して根尖部まで十分に形成ができれば)行けば、90%の可能性で治癒が図れる。

下の表の通りである。

ということで初診と同日に治療に移行した。


☆臨床画像/動画が出てきますので気分を害する方は試聴をSkipしてください。


#3 Re-RCT(2023.2.9)

DBは穿通させれば、Pはトランスポーテーション的に形成・根充されたGutta Percha Pointを除去して穿通できれば、この治療はうまくいくだろうという治療方針のもと治療が開始された。

まずP根の攻略から。

P根

P根のレジンコアの口蓋側に本来の根管がある。

つまり掘ったレジンの口蓋側に本来の根管があるのである。

P根のレジンコアを除去すると以下のような形態であった。

DBも穿通させた。

どのようなテクニックを用いるのか?に関しては以下の過去の記事を参考にしてもらいたい。

メカニカルグライドパス?〜#19 開かない根管(近心根)の根管形成+根管充填方法

穿通するか?しないか?RaCe EVO #10.02, #10.04によるメカニカルグライドパス〜#11 Re-RCT+Core build up

Gutta Percha+BC sealerで根管充填した。

根管充填後PA(2023.2.9)

DB根とP根からシーラーがパフしている。

問題ないと判断し終了した。

次回は半年後である。そこで問題がなければ最終補綴が装着される。

半年の時間経過をまたお送りするので少々お待ちください。


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