バイト先での治療と以前の歯科医院の患者の経過観察。
臨床に役立てる比較ができたと思われる。
以前の歯科医院で70代の女性の患者の治療を行った。
以下がその治療の流れである。
2018.4.3(初診時)
根管充填されてはいるが、根尖部が開いている。永久歯の歯根が完成する前に失活して前医が歯内療法を行ったのだろう。
しかし、Sinus tractにGutta Perchaを挿入すると#29の根尖部へと進んでいった。
#30にもPARLが存在する。
両方とも根管治療が必要である。
#29の再根管治療が行われた。(2018.4.18)
根尖が拡大され開放していたため、Gutta Perchaでストップさせることは難しいのでMTAセメントで根管充填した。
#30も再根管治療が行われた。
それから時間が経過し、経過観察を行なっていたが問題なく過ごしていた。(2018.11.18)
さてこの後、私は倒れたため経過が追えなくなったがバイト先で拝見することができた。
Sinus tractが残念ながら復活していた。(2021.4.12)
外科治療の話をしたが、患者は拒絶した。
なぜか?
Sinus tractの特徴である痛みが通常ない、という症状が患者から外科治療という選択肢を消去させた。
さて、その後私はバイト先で似たような患者の治療を行った。
30代の女性である。
根尖部が開いた#13に根尖性歯周炎ができてしまっている。
根管治療となった。(2020.10.10)
BC puttyで根管充填している。
さてここから2ヶ月経過し、患者から歯の裏にできものができたと連絡があり経過観察をした。(2020.12.12)
さて以前の私であれば即外科であるが、このようにSinus tractができても待てば消失した例を知っていた私はもう少し様子を見ていただくように患者さんに伝えた。
それから4ヶ月、治療してから半年が経過してから再度リコールを行なった。(2021.4.10)
すると、Sinus tractは消失していた。
患者に不快感も痛みもないという。
PAを撮影した。
根尖病変も小さくなっているように見える。
ということでSinus tractが形成されても待てば消失するという例を私は再び体験した。
では、この2つのケースの違いは何だろうか?
それは1ケース目は再治療であるが、2ケース目は初期治療であるという違いである。
やはり解剖学的形態が破損した根尖病変を持つ再治療の症例は予後が良くないということがわかる。
これはGorni 2004の歯内療法の予後の結果に一致する。
MTAセメントは魔法の薬ではないのだ。
そして、同時にBC putty>>>MTAという結果でもない。
さてこの患者さんは次回はさらに半年後、治療してから1年後の2021.10あたりにこのバイト先にリコールにいらっしゃる。
時期が来れば、またその模様をこのブログでご報告したいと思う。