紹介患者さんの治療。

主訴は、

4/23に東京で#19の根管治療した。全然麻酔が効かず、歯科医院に5時間いた。その後、痛み止めを飲んでも全く効かず、全く痛みが取れず、意識がなくなるくらい痛かった。伝達麻酔も効かず、もう何もできない…と言われた。友人がかかりつけ医にいるので見てもらってここを紹介された…

であった。

歯科医院で5時間拘束…

まさにホラーだ。。。

歯内療法学的検査(2024.5.20)

#19 Cold N/A, Perc.(+), Palp.(-), BT(+), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

#20 Cold+3/2, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio Probe(WNL), Mobility(WNL)

患歯は解放されている#19であろう。

PA(2024.5.20)

フィルムが口腔底に当たって痛い!という。

それでは撮影がうまくいかない。

うまくいかない時は、

下顎孔伝達麻酔+頬神経ブロックを行ってからPAを撮影することを推奨する。

理由はそれにより口腔底がブロックできるからだ。

それなら痛みをコントロールしてPAを撮影できる。

CBCT(2024.5.20)

MB

MBもMLもそれほど湾曲が強くない。

どちらを主根管にしても良さそうだ。

私は通法通り、MLを主根管にしてMBはそこに合流するという形を取ることにした。

ML

MLの長さは16.5mm程度である。

治療の際の参考になる可能性がある。

D

Dには病変はほぼない。

ここはパフが期待できない可能性が高いだろう。

また前医(紹介先ではない。その前の歯科医院だ。)は、

根管口が明示できなくてそのまま辞めたようだ。

と言うよりも天蓋を除去できていない。

これで歯科医師によくなれたものだ…

抜去歯牙で練習することを強く推奨したい。

しかも、これでは、Perが急発しかねない。

それが急発すると、かなりまずいことになる。

歯内療法学的診断(2024.5.20)

Pulp Dx: Previously initiated therapy

Periapical Dx: Symptomatic apical periodontitis

Recommended Tx: RCT

ということで、Dangerousな可能性が高いPreviously inititated therapyの根管治療である。

別日の治療となった。

が、である。

その2日後(2024.5.22)に電話があった。


昨日の夜あたりから歯が痛み出して、ロキソニンを飲んでも痛くて口が閉じれない。よだれが口からダラダラ出る。ロキソニンは効く時もあるが、効かない時もある。


ということで、この日にEmergencyの処置となった。

が、何をすればいいだろうか?

投薬はほぼ意味がない。

こういうときに有利になるのが、

歯牙の固定(T-Fix)

だ。

Per急発を抑える方法とは?

#19 T-Fix(2024.5.22)

Super Bondが固まる7分を待つ。

この日は見学の先生が二人来ていたが、セメントが硬化すると…

痛み(自発痛)が消失した。

患者、見学者ともに驚愕していたが、

ここから何が予測できるか?だが、おそらくPer急発の際に痛いのは歯根膜炎が生じているからだろう。

それをSuper BondでT-Fixしてあげると歯根膜炎が緩和される。

すると痛みが取れるのである。

まさに…生活の知恵だ。

ということで、最大限投薬し、次回の治療となった。


#19 RCT(2024.5.31)

全く天蓋が除去できていないことがわかる。

どうやらこの歯の治療した歯科医師は素人だったのだろう。

患者さん曰く、若い歯科医師だったそうだ。

若い=経験がないとは言わないが、この国の未来を案じてしまう。

何度も言うが、

もはや保険診療で根管治療はできない

と言う法則がここでも発動している。

SXでDの根管口部を拡大していたら、患者さんが痛みを感じると手を挙げた。

この時、あなたはどう対応するだろうか?

以下の動画が答えである。

はっ?

痛いのはD根だけなのに何で、MBやMLにも

Intra pulpalするんだよ!

と言う抗議の声?が上がりそうだが、その理由がわかるだろうか?

答えは、

Advanced Course 2024 第3回

でお話しします。

その後、SXで根管口部を拡大した。

ただし、MBは拡大していない。

理由はMLとMBが合流しているからだ。

であれば、手根管だけまずは形成して合流地点を明らかにしたほうがいいだろう。

つまりこの時点で以下のような形になった。

そしてMBとMLの合流を確認する。

すると、MBの長さは15.0mmでMLと合流しているということがわかるだろう。

ということで、作業内容は以下になった。

ということでBC sealerを用いて、Single Pointで根管充填した。

PA, CBCTを撮影した。

MB

ML

D

支台築造は依頼されていなかったので、水酸化カルシウムを窩底において、キャビトンで仮封して終了した。

患者さんは、海外に留学するので次回は1年後である。

東京で#19の根管治療した。全然麻酔が効かず、歯科医院に5時間いた。

のに、

うちでは、

30分で1回で終了

した。

この差は何だろうか?といえば、

これが米国歯内療法専門医=Endodontistと日本のGPの違いだろう。

その差は埋まるものではない。

よく覚えておいたほうがいいだろう。

ということで、また詳細をお伝えしたい。