以前の歯科医院(南区長住)での治療。

というとなぜ私が南区長住?と思われるだろう。

そう私はかつて、南区長住で歯科診療をしていたのだ。

私の黒歴史の一つだ。

2019.3に倒れて、マイクロスコープは持っていかれ、ユニットも解体・廃棄され、パソコンも取り上げられた。

私にはもう何も残っていない。

残っているのは、とにかくタクシーが捕まらないという苦い思い出だけである。

患者さんも確かにほぼ来なかった。

紹介はまずない。

なんでこんなところでやっているんですか?と同業者からよく聞かれた。

というのも、私は島根県の出身で福岡には縁もゆかりもない。

留学時にGPで開業していた場所が、たまたま福岡市内だったので福岡市内に戻ってきたのだ。

またこんな与太話もある。

あれは倒れる前に、米国歯科大学院同窓会@福岡支部?の打ち合わせで天神の歯周病専門医の船越先生とお会いしたときだ。

彼は私にこういった。

『お前、昔、南区の免許センターの近くで開業していただろ?あそこは止めて正解だ。福岡で患者を紹介しようと思ったら、博多か天神以外無理だから。お前の選択は正しいよ。』

しかしこの時代でも紹介してくれる歯科医師の先生は少ないながらいたので、その時の話を今日はしようと思う。

患者さんは40代女性。

他県からの来院である。

したがって、初診と治療が同時に行われた。

主訴はないが、紹介医の父親が根管治療したがうまく行かなかったので修正してほしいという要求であった。

歯内療法学的検査は以下のようになる。

#13 Cold+3/8, Perc.(-), Palp.(-), BT(-), Perio pocket(WNL), Mobility(WNL)

#14 Cold NR/20, Perc.(+), Palp.(++), BT(+), Perio pocket(WNL), Mobility(WNL), Sinus tract(+)

PAは以下になる。

#15はImplantなので検査は行っていない。

生活歯髄に補綴を行っている#13と歯内療法が途中で終了している#14に関して検査を行った。

歯内療法学的病名は以下になる。

Pulp Dx: Previously treated

Periapical Dx: Chronic apical abscess

Sinus tractがあるが、そこを押すと痛みがかなりある。

隣の歯もインプラントだし私は治るのか?と随分心配されていた。

さて、このレッジ形成された部分だが修正して根管治療を完結することができるだろうか?

あなたはその修正方法を知っているだろうか?

ここまでファイルを入れても必ずこの引っ掛かりでストップしてしまう。

なぜか?

レッジができたからだ。

どうすればこのレッジが解消できるだろうか?

Jafarzadeb 2008によれば、まずこのレッジの位置まで根管形成を行えとされている。

その後、細い番手(#10以下)をプリベンドし、Root ZXにつなぎながら回転させる。

すると、運良く正しい方向にファイルが挿入され穿通することがある。

それが以下の絵だ。

臨床的にはこの状態でペーテンシーファイルをしまくる必要がある。

すると正しい方向に通路ができるのである。

そんなことをすると根尖が破壊されるじゃないか!というあなた。

そう、破壊される。

しかしそれは仕方がない。

なぜか?

それはあなたがレッジを修正したいと望んでいるからだ。

レッジを修正したいのであれば根尖は破壊される可能性が高い。

二兎を追うもの一兎も得ずなのだ。

どちらかを取らないといけない。

しかし、レッジをどうやっても修正できない場合もある。

以下のようなケースだ。(私のUSC時代の患者)

これは私の友人の同級生が#40まで形成したがこの位置でレッジができてこれ以上根尖までファイルが行かないという。

ファカルティが手助けしても変わらなかった。

なぜか。

既に#40も形成してしまっているのである。

つまり、この下の絵で言うところの段差が非常に大きい(#40)ということになる。

ということは、レッジを解消したあとの根管形成は根管内部を大きく削ることになってしまうだろう。

またかなり湾曲する道具でないとこのレッジの修正の形成が不可能になる。

ということで、そのような場合は外科が必須だ。

以下のケースはUSC時代、同級生からもらった(交換した)ケースである。

黒人の男性(18歳)で、口唇が異常に硬かった。

このような場合はベベルがついてしまう。

口唇が硬いので大きなベベルをつけざるを得なくなってしまった。

このような場合どうすればいいか?の解決方法は先日、Advanced Course 2021 第1回で説明した。

話をもとに戻そう。

さて、この患者さんにはレッジが修正できない可能性もあることを伝えて再根管治療を同意してもらった。

すると、MBのレッジは上記の方法で問題なく解決することができたのである。

以下のような治療内容になった。

MB2はMB1と合流した。

ということで根管充填を行った。

経過観察は1年後に行った。(2018.2.7)

MB周囲の根尖病変は消失していたのである。

痛みも違和感も腫れもなく、経過観察は無事に終了した。

今この患者さんがどこで何をされているか?私にはわからない。

そして気づけばあれから4年5ヶ月も経過してしまっていた。

何の問題もなく生活を送られているだろうと言うことを祈念している。